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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第二章『水の掟』
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第二章『水の掟』・第一話『太陽の果て・水源の国』Part3

『お前には、もう王たる資格は無い』大切な人を次々に失くした少年王から、残ったその王権までもが奪われ、新たな王家が立って早二十年。未だに、新王家は旧王家の支配を受け続けていた。その国の守護神・テイムは、綾乃達を大いに巻き込んだ復讐計画を立てていて・・・・・・!?






「あ。おはようございます、綾乃さん」

 少し早く起きて朝食の用意をしていた綾乃の元へ、近くにあったらしい小川か何かで顔を洗ったレウィンがやって来た。

 昨日、水星国に入った頃にはもう暗くなっていて、そこら辺りの木の根元で、三人は毛布を身体に巻付けるようにして眠りに就いた。

 綾乃がタオルを渡してやり、レウィンは笑顔で受け取って顔を拭いた。

「おはよう」

「何だか、凄く寝ちゃった気がしますねー」

「そうね。昨日は初日で疲れてたし、ランプを持ってくるのを忘れちゃったから、早く寝るしかなかったし。城にアルコールランプがあったけど、どうにかなるとか思って持って来なかったのは誤算だった」

「荷物になる、とも思ったでしょう?綾乃さんなら」

 言われて、そうねえ。それに油が漏れても困るし、と空を見上げた。

 入国してすぐに寝た(水星入りました→暗いです→では寝ますか、となった。)ために、あまり太陽国と比べたりはしなかったが―――こうしてみると、水の都だけあって大規模の湖が転々とあって、植物や鳥類も多く存在しているようだった。

 気候も穏やかで、梅雨みたいに一気に雨が降る月があるが、それを除けば常春の国だ。

 太陽国は常夏だから、夏から春に戻った感じがした。

「それに、暗くなったら必要以上は無理に動かない方がいいものです。自然は危ないって言いますから」

「なるほど・・・・じゃ、日々早めに就寝ってことで」

「それがいいと思います。ところで、太陽国―水星国間の国境から、次の目的地となる金星国―水星国の国境までは少なくとも二週間はかかりますから、そのつもりでお願いします」

「二週間・・・・・じゃ、ここから水星国の城までは?」

「今の現在地・僕の立っている方向―――太陽国を背にしている状態で、太陽国を北として金星やら他の国々のある方角を南とします」

 コクリ、と頷いた。

「城は東です」

「それって・・・・・どっち?」

「・・・・・・・。あっちです」

 若干現実逃避しかけている綾乃に、レウィンは指差して方角を示した。

 つまりは、城経由で行くと三週間近くかかるということだ。

 明らかな遠回りに、二人の間に沈黙が落ちる。

《お前ら何話してんの?メシは?》

 寝坊して起きてきた湊生の前では、どんよりした雰囲気が漂っていた。

「そ、そうね!取り敢えず朝ご飯食べよう?」

「・・・・・はい」

 朝食を食べ、毛布を片付けて一行は移動を開始した。






《なあ、ずっと聞きたかったんだけどさ、お二人さん》

「何?」「何ですか?」

 声を掛けられ二人は足を止め、綾乃は隣を歩くレウィンの頭の上を、レウィンは顔を上げた。

 レウィンの頭の上に、現在湊生は寝そべっている状態だ。

 水星国は殆ど小島で成り立っており、いくつもの島を無数の橋がそれを繋ぐ形をとっている。

 今彼らは、その橋の一つを渡っているところである。

《どうして・・・・・徒歩な訳?》

「あー!!それ、私も気になってた!!何で!?」

 綾乃も思い出したように過剰反応し、レウィンを見た。

「えーと。そうですね。説明します。移動手段はあるんですけど、敵国の上空を通らなくちゃいけなくて。その際に動向を読まれてしまわないように、とのことです」

《ちぇー》と、不機嫌そうにごろりとレウィンの頭の上で寝返りを打つ。

「徒歩で国境超える人、少ないんじゃない?」

「まあ・・・・・そう、少ないですね」

《意味ないっていうか、余計に変なんじゃね?》

 短いヒレで頬杖をついた湊生の目は、完全に据わってしまっている。

「要するに、無駄苦労・・・・・?」

「いや、無駄じゃないですって。こっちの方がばれにくいです・・・・・少しは」

「・・・・・・。」《・・・・・・。》

 あくまで少しなんだ、と二人は思った。

 バレる可能性があるならまだ徒歩の方が・・・・となるのは正しい考えだと分かってはいるのだけれど、これからの遠い道のりを思えばどうしても楽な道が欲しかった。

 如何に長い旅になるかは、しっかり太陽城で勉強したから。

 ともかく、城まで約三日かかる。だからこの日は、城までの距離で三分の一の地点にある水星国最大の湖まで辿り着くことが目標だった。

 初日同様何かしら話したがった綾乃に、レウィンは宮女・クィルが教え切れなかった知識と技術を教えることにした・・・・のだが。

「湊生さん、魔法・・・・・・使えます?」

《んー?・・・・・わかんねェ》

「お兄ちゃん、太陽大命神でしょ!?魔法使えるんじゃないの」

 綾乃はクィルから教えられたことを思い出す。

『魔力を持つ者・守護神には属性と特殊能力がありますね。例えばこの太陽国の守護神・・・・それを太陽大命神というんですが、その場合は、属性は光、特殊能力は制御、時間を司ります』

 言われた通りなら、光属性魔法が使える・・・・・筈。

 期待に胸を膨らます二人に、頭をポリポリ掻いて、ケロッとした顔をして湊生は言い放った。

《わかんねェけど、多分無理》

「そう、ですか・・・・」

《少なくとも、この姿じゃあな》

「え・・・・・ということは?」

 しょんぼりしかけていた二人が、目を見開いた。

「まさか、使えるかもしれないんですか!?」

《ああ。綾乃の体借りてならな》

「私の体を・・・・・それはヤダ」と、綾乃は即答。

 そんな綾乃に、レウィンは苦笑した。

「あ、綾乃さん・・・・」

《ほーらな。だから出来ないって言ったんだよ。綾乃の体を借りたら、十中八九出来る。でも、練習とかしたことないし、失敗とか力が弱かったりとか、コントロール不能の暴走の可能性が付き纏うけどな》

 言いながら、自分の下にいるレウィンの頭をポンポンと弱く叩く。

 乗っかられているレウィンはというと、魚のぬいぐるみは比較的軽く、最初は気にしていなかったようだが――――、歩き始めて三時間半も経てば負担に感じ始めたようで痛む首に手を当てている。

 いい加減気の毒になってきた綾乃は、そんな兄をレウィンの頭から叩き落とした。

《うおっ!あっぶねーな。何すんだよ、アヤ!》

「エスティ君が重いでしょ。自分で飛んで」

 綾乃は、幼い頃湊生に”アヤ”と呼ばれていた。

 生前、彼は大きくなって綾乃とよばれるようになっても、たまにアヤと呼ぶことがあった。

 それを思い出して、綾乃は若干の懐かしさを覚える。

《むー》

「って、魚って、飛んじゃっていいの?」

 徒歩の理由に次いで、今度は綾乃からの質問。

《フライングフィッシュ―!》

「魚ですか?飛びますよ。あれ?表世界では飛ばないんですか?」

 本気で驚いたようだった。

 言われてみれば、さっきから視界の隅を何かが浮遊している気がする。

 それは・・・・・魚だったのか。

 信じたくなくて見なかったことにしていたのかのか、ただ気付かなかったのかはいいとして、現実はそれだった。

「飛ばないよー!!」

《魚は、食べるんだろうな?》

「あ、それは分かる!食べるよ。お城のお料理に出て来た!ムニエルっぽいヤツ」

「はい。その通りです」

 美味しかった・・・・と回想モードに入る綾乃。

 レウィンも過去何度も晩餐に呼ばれたことがあるので、ああもう一度食べたいと思った。

《ならさー、捕まえるの楽じゃね?水の中以外もうろついてるならさ》

「それが・・・・そうでもないんですよね。」

 橋を跨ぐように魚が湖から湖へ移動しようと飛び上がった。

目の前の出来事だったため、反射的に手を伸ばした綾乃だったが、つるっと通り抜けてしまった。

「速いし・・・・・なんかぬるぬるした」

「と、いう訳なんです」

《ほー。》

 湊生が魚が消えた水面を覗き込む。

 澄んだ水だから、底まで見える。

 そこには、たくさんの魚が泳いでいた。

「ところで、今日の昼食なんですが」

「それって・・・・・もしかしてもしかする?」

《魚?》

 はい、と言って渡されたのは釣竿。

 黙って受け取り、レウィンの次の行動を見ていると、朝食に食べた果物の余りを取り出していた。

 その林檎に似た物を含む多種多様な果物は、水が豊富な水星国では至る所で手に入る。

 しかも、所有者がいないため、タダで。

「ここの魚は、果物で釣れます」

「これ・・・・・・で?」

 水星国の―――もとい、裏世界では、魚は果物を食べるらしい。

 綾乃も湊生も異常に感じる生態系を前に、唖然としていた。

「ほら、綾乃さん!湊生さん!夕食の分まで調達しますよ!目的地に到達するころには夜になってると思うので、今のうちに釣っておかないといけません」

 レウィンはやる気十分といった感じに、袖を腕捲りして釣竿を振るった。

 現在午後三時。

 水星城に着くのは、あと二日と少し。








活動計画に、今後の章の流れを書いてます。

(各話サブタイトルも少し公開!!)


是非ご覧下さい!(コメントを頂けると幸いです)

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