第十四章『闇の掟』・第一話『止まった砂時計・弾けゆく泡』Part2
「時空の狭間へようこそ、海王星国守護神レイト」
時空の、狭間・・・・・・?
ああ、そうか。
だから正気を保っていた意識を失う寸前の状態でいるのか。
時を止められた、みたいに。
時空の狭間にいる以上、時間は進みもしないし、戻りもしない。
ただいつまでも同じ時を刻む。
ここにいなくて正気でいたら、きっとそろそろ死んでいたのかもしれない。
そしてこの状況を作り得ているのは、リフィアの力。
正しく言えば、作られた魂が入っていれど流れ続ける魔力の籠った血の力。
「私が誰か、分かるかい?」
詳しくは分からなくても、誰かは想像に難しくない。
傍らにリフィアが立っていて、大人しく従わせている様子など、確信材料として大きいものがある。
一人しか、いないじゃないか。
「・・・・・・・・冥王星王」
仮面越しに、男がにやりと笑う気配がした。
「お前をここに連れてきた目的。ちょっと考えればそれくらいお前なら分かるだろう?」
レイトはコクリと頷いた。
殺してその血から魔力を奪うのが目的なんだろう。
未来の娘同様に。
睨めば、男はおどけた様子を見せる。
「おおっと、そんなに睨むな。まだ力は取らないさ。ちょっと時間がいるから、今日は挨拶程度にきただけなのだよ」
「ああ、そうですか」
「ただ死ぬのはつまらないだろう。この世界の全てを知りたくはないか?私以外の誰も知らない、第三次魔法大戦をバックにして存在する、親子の話を」
その後、訥々と紡がれた世界の真理にレイトは唖然とした。
彼らが去った後も、それは頭から離れない。
加えて気になるのは目の前の映像。
冥王星王は立ち去る前、時空の狭間を全面スクリーンに置き換えたのだ。
今綾乃達やアレン達が何をしているのかがそこに写っていた。
何を話しているのかも聞こえてくるからちゃんと分かる。
そうすることで、冥王星王はレイトに分からせたかったのだ。
常に自分は監視しており、何処に居ても逃げるのは無理だと。
一行の命は、全て自分が握っているのだと。
無力な自分を思い知れと。
レイトはただ悔しさに唇を噛み締めるしかなかった。
一方、綾乃達は金星国組と地球国組に分かれることになった。
サラを連れ一刻も早く金星国に行かねばならないが、アレン達と何らかの方法を取って合流もしなければならない。
そこで、サラ、綾乃、ステアは冥王星国の兵士と共に金星国へ、テイムは単身地球国に向かうことになった。
幸運なことに、まあそのせいでサラは怪我することとなった訳だが、例のワールドコネクトベルトの件はやはり幻覚だったようだった。
対象とならない兵士達が見に行ったり実際にそこを通ってみたりしたが、何も無かったのだという。
出来るだけ襲撃を避ける為に、地球国まではテイムも一緒に行き、地球国サードポーズポイントのところで別れ、テイムを除くメンバーは金星国にそのまま向かった。