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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第二章『水の掟』
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第二章『水の掟』・第一話『太陽の果て・水源の国』Part2

『お前には、もう王たる資格は無い』大切な人を次々に失くした少年王から、残ったその王権までもが奪われ、新たな王家が立って早二十年。未だに、新王家は旧王家の支配を受け続けていた。その国の守護神・テイムは、綾乃達を大いに巻き込んだ復讐計画を立てていて・・・・・・!?






「服何でも貸したげるって言ったのは私だけどさ・・・・・」

 出発一時間前。

 綾乃はレウィンが選んで着てきた服一式を見て、絶句した。

 アレン用にと、城には少年物の服はたくさん用意されていた。

 それらとレウィンはサイズが同じだった上、アレンは今事実上存在していないし(魚だし)、彼の持つ服が一種類しかないということで・・・・・服をあげることにしたのだが。

「・・・ん?もしかして、似合っていませんか?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど・・・・・。寧ろ、よく似合ってると思うんだけど、あんまりにも庶民的かなって」

 彼が選んだのは、深めの緑のバンダナ、同色のタートルネックのシンプルな長袖に短パン、少し装飾のあるブーツにペンダントだった。

 やはりバンダナを深めにして、目から上が見えないようになっている。

 どうしてそうしているのか、聞いてはいけない気がして未だ尋ねたことの無い綾乃である。

「僕元々庶民ですし、この旅、秘密裏のもので、目立たない方がいいですし。それなら尚更です」

《そーだぜ、やっぱ身分通りの格好が一番だよな》

 そう言う湊生の頭には、王冠が乗っかっている。更には、尻尾に黄金の輪っかが付いていた。

「アンタ・・・・さっきのエスティ君の話、ちゃんと聞いてた?」

《実の兄をアンタ呼ばわりって・・・・》

「目立たない方がいいって言ってんの。エスティ君のはもうちょっとお洒落してもいいとは思うけど、目立たない方がいいっていう考えには賛成。・・・・・それに、身分通りの格好って、魚の分際で偉そうに。お兄ちゃんの中じゃ、魚は元来王冠してるもんなの?」

《してる!!》

 そう言い放ったぬいぐるみを殴り、王冠を奪った。

 レウィンは、二人の遣り取りをいつものことだと言わんばかりに微笑んでいる。

 王冠(勿論、湊生サイズの小さいもの)を小脇に抱えて、

「いったいこんな小さな王冠、どうしたの」と聞くと、

《他の人形から貰った》

 どうやら、クローゼット内の人形から奪ったらしい。

「あらそう。・・・・・この金属のリング、取れないんだけど!!」

 尻尾の輪っかはいくら引っ張っても抜ける兆しを見せない。

《痛い!!》

「あら、入れ物の身体で・・・・・・しかも尻尾の方まで神経通ってたのね」

 わざと言って、無理矢理引っ張り続ける。

《尻尾取れる!!・・・・これは、サフィール王から直々に貰ったものなんだぞ!!》

 言われた途端綾乃がパッと手を離して、心構えが無かった湊生は地面に落ちた。

「先に言ってくれればいいのに」

 何も無かったかのようにレウィンと話し始めた綾乃の足元で、湊生はしばらく痛がっていた。






「案は通ったらしいな」

 二十歳程度の青年が、ソファに腰を下ろした。

「はい。彼らは・・・・旅に出る、とのことでございます」

「ならいい。利用させてもらわなければならないから、協力求めに来てもらわないと困るんだよな。オレだけでは達成など出来ないし。」

 自らの指にはまった厚めの指輪を見て、言った。

「奴らの動きはどうだ?また裏で密約を交わしていたりしないだろうな?」

「そのようなことが最近では二度ほどありましたが、全て破談になるよう取り計らっておきましたので、心配なさらなくてもよろしいかと」

「これからも頼む、ワーム秘書」






「綾乃様、行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃいませ」

 城の衛兵、小間使い達が次々に声を掛ける。

「はーいっ!!行ってきます!」

 綾乃は、その後ろに湊生を抱えたレウィンを連れて、城門まで来た。

 出発は三十分早くする筈だったが、行く先々で小間使いから餞別にお菓子やらパンなど、王からは裏世界共通貨幣を渡されたため、初め持って行こうと思っていた荷物の二倍以上になった。それらを除くと、野宿に対応して薄くて軽い毛布、服数着、火熾し用のマッチ、マントっぽいコート、薬、縄・・・取り敢えず、二人で分けて持てる程度にしていた。

 これから行くのは、水星・金星・木星・海王星の四国だが、徒歩で行くためにその間の国も通る。それぞれで気候が異なるため、服も夏服・合服・冬服と、全て用意しなければならなかった。

 しばらく歩いたところで、不意に綾乃が切り出した。

「・・・・・・・ねえ」

《んあ?》

「何ですか?」

 後ろを歩くレウィンと、彼のバッグの上で平泳ぎの真似をしていた魚の方を振り返って、

「・・・・・・・・・・・ヒマ」

「・・・・・・・・・。」

《・・・・・・・。》

 沈黙が逆に落ちた。






「仕方ないですね。じゃあ、これから行く水星国について話しておきましょうか。大まかな世界史については教えましたが、各国についてはあまり触れていないですからね」

「静かよりはいいけど、こんなトコに着てまで勉強かぁ・・・・」

《イシシシシ・・・・・》

 湊生がニヤッと綾乃を笑った。

「湊生さんも聞いて下さいよ」

《・・・・・・はい》

 それからレウィンは自分の知識を頭の奥の方から引っ張り出すように、訥々と語り出した。

 水星は、至る所に湖を持つ“水の都”と呼ばれる国。

 二十数年前、王権が移行し、現在はリコレット家が王家となっていて、世界で使用されている水の半分を賄っている国だ。

 その国には、今現在レウィンが危険視しているというある問題があった。

「・・・・・・・王権交代問題、です」

《・・・・・・なんだそりゃ?》

「すっごく分かり易くかつ簡潔に言うと、ある王が新しく王位に着いて間の無い頃に、すぐある理由で王権交代が起こったため、退位を余儀なくされた。それで怒ってる、といったところですかね。・・・・・・・・・僕、ずっと気になっていたんですけど、王から聞くと“旅をして協力を求めに来い”って言い出したのは水星なんだそうです。それって、湊生さん、もといアレンさんという表世界から来た新たな太陽大命神に、その問題を解決してもらおうって言うんじゃないんでしょうか」

《可能性は高いな》

「そうね。・・・・・・・でも、解決ってどうやって?」

「魔力を以って、でしょうか」

《お、レウィン鋭い!!オレも戦う気がするんだよな》

 あれ、と綾乃が魚を見た。

「お兄ちゃん、今更だけど・・・・・本人に会うまで、エスティ君って呼んでなかったっけ?」

《昨日男同士で語り合った。うん、会い通じるものがあったな。そこで、もっと親密になりましょう的な感じで、呼び方変えた。・・・・・でも、レウィンの方は俺が仮にも守護神様だから“さん”以下の敬称はいけないってさ。寧ろ本来は“さま”であるべきなんだって言い張って》

「一般庶民と王族・・・・しかもそのトップである守護神では、身分違いにもほどがあるんですよ。湊生さんって呼ぶのもやっぱり恐れ多いっていうか」

 レウィンは、呼び方は確かに湊生に対しても、綾乃に対しても“さん”で統一しているが、扱いだけは神に対するもののそれだった。

 分解され、今は湊生と綾乃でも、二人共を守護神と考えているのである。

 綾乃も、一応太陽大命神・アレンと魂を共有する者だから、間違ってはいないし。

「・・・・・・・・・さて、もうあと十分強くらい歩いたら、国境ですよ」

「国境!?」

「はい。表世界から来たお二人には、面白いものかもしれませんね」

《面白い・・・・・もの?》

 太陽国はもう夕暮れ時になり始めた頃。

 二人と一匹は見晴らしが良い丘までやってきた。

 そこからは太陽国が一望出来て、見納めな感じに、太陽城とその城下町を一通り見渡した。

《オレンジ色に染まった王国・・・・太陽国っぽい景色じゃないか?》

「そうですね・・・・」もはやレウィンは感無量でそれ以上言葉が続かない。

 見たことがそもそもないのか、寧ろ見たことがあって何か感じるところがあるのか――――それは不明だが、彼は半泣きだった。

 とはいえ、同じ風景を見たのは見たけれど、夕暮れの中のものは格別だと綾乃も思う。

 レウィンによると、この裏世界も勿論惑星なのだが、表世界と違って、あくまで太陽国や水星国といった国の集合体で一つの星(分かり易く言うと、アメリカ合衆国や日本、イギリスなどは全て地球という星の上にある、みたいなイメージ。)になっていて、表世界の太陽とはまた異なってはいるけれど、果てしなく類似した光源の星があるらしい。

 要するに、表世界の惑星の名を持ち、その惑星を守護しているだけで、同じ惑星として各国が裏世界に存在しているという訳ではないのだ。

 綾乃は、レウィンと、その頭の上で垂れている湊生の隣に立った。

「ありがとう、ございます」

「急に何っ?」綾乃が過剰なまでに頬を赤く染めた。湊生がそれに気付いて、《ほおぉぉ》とニヤニヤしながら言う。

「綾乃さんと旅に出ることになったからこそ、今こうして僕はここにいられるんです。日々多忙で同じことの繰り返しだった僕は、このようなところに来ることはありませんでした」

 照れたようにレウィンは笑って、「さ、行きましょうか。“面白いもの”は国境にあります」と先を促した。






「な、何これ!!」

 国境線のそのラインを隔てて、太陽と水星で全く違っていた。

 例えば地面。赤っぽい土が一面に広がった道を歩いていたのだが、きっちりその境界線を境にして草原になっていた。

 空間が切れて、また異なった空間と接合されているみたいだというのが綾乃の率直な感想だった。

《面白いな。俺、裏世界にいた間はずっと太陽城ん中にいたからよー、サフィール王については詳しいけどそれ以外、外のことなんかはさっぱりだったんだよな》

「じゃあ、お兄ちゃん、エスティ君、国境越えるよ!この旅で初めて国境を越えるんだから、せっかくだから同時に一歩踏み出さない?」

「いいですね」

《あのー、綾乃さんや。》

「何、お兄さんや」

《踏み出す足を持ってない奴はどうすればいいんでしょう?》

「・・・・・・・・踏み出すの止めて、ジャンプで身体全体で入る」

《了解》「わかりました」

 三人は一列に並んで、身構えた。

「行くよ!!3,2,1・・・・0!!」

 とりゃ、と誰かが声を上げて飛び込んだ。

 水星国領土に到達!








二日で一気に四話投稿とは・・・・・(苦笑)


まあ、ここの辺は前書いたのいじった感じだから早いんです。



少しずつ活動報告更新してます!是非読んで下さい。

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