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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十二章『氷の掟』
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第十二章『氷の掟』・第二話『目覚めたココロ・永久の別れ』Part2






「・・・・・・・・死ね」





 その魔法球が放たれようとしたその刹那、レイトは身体が動かなくなるのを感じた。

 全身が麻痺したように微動だに出来なくなり、まるで石像のように固まってしまう。

「あ・・・・・・う、あ・・・・・」

 声も途切れ途切れとなり、サラに向けられた手で喉元を押さえる。

『やめろ』

「レイトか・・・・!!」

『姫様から手を引け・・・・!!』

 脳内に、レイトの声が響く。

 “魔”は苦虫を噛み潰したような顔をして、目の前の、今まさに殺そうとしていた少女を見た。

 本当にこの娘が好きなんだな・・・・・でも。

 バカだな。

 シンクロ状態で無理矢理意識を目覚めさせ、身体をコントロールするなど、寿命が縮むことを・・・・・・。

『手を、引け・・・・・・!!』

 再度レイトが引き留めようと言葉を発した時、近くで何かが動く気配を感じた。

「ん・・・・・レイト王子・・・・?」

 むくりと起き上がったサラは、レイトをぼんやりと見た。

「レイト王子が、二人・・・・・・?」

 シンクロ状態を他の守護神が見れば、本体の他に精神体が見える。

 今精神体となっているのは本物のレイトの方。

『姫様っ!!・・・・・・・うわっ』

 どん、と押される形で強制的にレイトは眠りにつかされ、安定を取り戻す。

「消えたくなければ、大人しくしておけばいいものを・・・・・!!」

 木から出ていこうとするレイトの後を、だんだんと覚醒してきたサラは慌てて追いかけた。

 着いたのは木の近くにある湖。

 サラは事態が飲み込めなくて、レイトの後ろ姿をじっと見ていた。

「ついてきたか・・・・・・」

「さっき・・・・・何をしようとしていたの・・・・・・?」

 レイトは振り向き、嘲笑して、

「お前を、殺そうとしていた」と、何ともあっさり真実を打ち明けた。

 その衝撃にサラは呆然としてしまう。

 サラはまさかそこに立っている人がレイトではないなんて思わないから、婚約者がどうして自分を殺そうだなんて考えるのかが分からなかった。

「何で・・・・・・私が、嫌いになったの?」

 がくがくと震える唇から一生懸命紡がれた、否と言って欲しいという気持ちの籠った少女の言葉で、レイトを演じていた“魔”の中の何かがぷつりと切れた。

「初めから、お前を好きでいたつもりはない。近寄るな、鬱陶しい」

「え・・・・・・」

 平素では考えられないレイトの言葉に、サラは驚愕した。

 “魔”の演技力はレイトの一部であっただけあって凄いものであり、サラでさえ疑うことが出来なかった。

 気付くことが出来なかった。

 逆に、サラだから余計に疑うなんて出来なかったのかもしれないけれど。

 サラは慌てて駆け寄って、その腕を掴んだ。

「ね、どうしちゃったの!?そんな、そんな事・・・・・・・あっ」

 振り払われ、サラはその勢いで尻餅をついた。

「そんな事言う訳ない、か?甘いな、お前は。もう一度言ってやろうか、愚かな姫。オレは、お前の事が嫌いだ。好きだなんてとんでもない」

 レイトはサラの首に手を掛けた。

 “嫌い”という言葉に涙を浮かべて頭を振るサラは、その絞められていく手から逃れようとするが、腕力の差は大きくどうにも出来ない。

 この時守護の力を働かせれば良かったのだろうが、力は何故か使えなかった。

「や・・・・・・く・・・・るしい・・・・やめ、て・・・うっ」




「手を離せ」




 アレンが姿を現して、サラを絞める手は緩んだ。

 途端に俯いて咳をするサラに、ギリギリセーフだったな、とアレンは後ろを向いて言った。

 木の陰から、ステア以外の一行全員が出て来た。

「はなから疑われていた訳か・・・・・・・いつ気付いた?」

 綾乃と一体化しており、いつでも攻撃出来ますよと言わんばかりに踏ん反り返っているアレンに、“魔”は自嘲した。

「リフィアが最初から知っていたんだ」

 “魔”は納得したようだった。

 そうか、冥王星の姫が・・・・・・。

「盲点だったよ、まさか一番にサラを狙うなんて」

「そうか。で、殺すか?このオレを。レイトも死ぬぞ」

「それはっ・・・・・」

 アレンが戸惑っている内に、“魔”は行動を起こした。

 気付いたリフィアが息を飲む気配がしたが、誰もそれの意味が分からなかった。

 “魔”が一時的にレイトの中に沈み込んで、レイトの意識が浮上したのだ。

 最悪の(シナリオ)に・・・・・。

 突如がくっと膝をついたレイトに、皆どうしたのか心配し、それと同時に警戒した。

 口調も、目付きも変わっていたレイトが、元のレイトに戻っていた。

「あ・・・・・アレンさん・・・・・」

「レイト、元に戻ったか?」

「ぼ、僕は・・・・!!」

 突然走って森の奥に入っていくレイトを追って、アレンも走り出した。

 アレンはリフィアだけ連れ、残りのメンバーにはサラの傍に居て放心状態のサラを落ち着かせるように頼んだ。

 5分程走ったところで、レイトはようやく足を止めた。

「レイト」

 名が呼ばれると、レイトは明らかにビクついた。

「一人にして下さい、アレンさん」

 逆に一人に出来るか。

 そんな状態のお前を。

「僕は、これから別行動を取ります。今、“魔”は眠っています。でも、もし目覚めて、僕の身体を制御しようとしたら僕には止める術がありません・・・・・だから」

「いいのか、それで。お前は後悔しないのか?」

「僕は・・・・・・」

 レイトは血が滲むほど唇を噛み締めて言った。

「僕は、サラを殺そうとした!!この手で!!」

 レイトは、震えていた。

 完全に怯えきっていて。

「また“魔”が目覚めたら、誰かを殺してしまうかもしれないんです。そんなのは嫌なんです。別行動の許可を下さい。そして、僕がいなくなってから住む木を変え、僕にも“魔”にも分からないようにして下さい。お願いします」

 切羽詰まった感じのレイトに、アレンは気圧されて頷いた。

 焦っているのは、レイト自身、タイムリミットが近いというのが分かっているから。

「ありがとうございます」

 言ってレイトは覚醒モードになり、辛そうな顔をしつつも、でもアレンに理解してもらえたことが嬉しかったのか僅かに笑顔になってそのまま飛び立っていった。






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