第十一章『光の掟』・第六話『断絶せし心・踏み躙られる関係』Part2
本邦初公開、リフィアのイラストを最後に載せてます。
覚醒モードで、翼を隠してます。
(覚醒してない時は栗毛・茶目です)
是非ご覧下さい。
「そうか・・・・・・負けたか。まあ、予想通りだな」
巨大な鏡を少し離れたところにある椅子に座って眺めながら、男は苦笑した。
その傍らには、半透明の少女―――冥王星国守護神、リフィアが立っている。
「まだ奴らに賭ける気か。いい加減諦めたらどうだ、我が姪よ」
「いいえ、諦めません。私はあの方々を信じています。最悪の展開にだけはさせません」
ずっと、待っていた。
この時を。
「それはそれは。だがお前も私の手駒なのだよ、リフィア。どう動こうと、私は動じぬ。それに、そんな姿のお前に何が出来る?せいぜい、あの失敗作を洗脳するくらいだろう?」
洗脳という言葉に、リフィアは唇をくっと噛み締めた。
男が言っているのはフォリビアのことだ。
先日反逆者であると確定され、アレンの目の前で冥王星国に強制送還された魂。
そしてどうして今のリフィアが守護神ながら抵抗する力を持たぬかというと、己の身体に流れる“血”に魔力が籠る以上、霊体状態では魔力は無いからだ。
それなのに何故アレンが綾乃と一体化したら魔法が使えるのかというと、実は死した表世界の篠原湊生としての身体に流れる血には魔力が籠ってはいない。
アレンは太陽大命神の“適合者”であって、魔力を持つのは綾乃の身体だ。
つまり、行使者はアレンで、綾乃はその依代、もしくはアレンの“魔力の器”的存在なのである。
だから血に魔力があったとしても綾乃は使えない。
器となりえたのは、彼女がアレンと同じ魂を持ち、表裏一体であって・・・・・それなのに、同じ表世界に存在していたことにある。
そこでじゃあどうしてフォリビアは綾乃と違って他人ながら魔法が使えるのか、という事になるが、フォリビアはリフィアの魂の“コピー体”のβ版の内の一体なので、殆どリフィア自身と同じなのである。
幼体からリフィア程の年齢に仕立て上げる間の教育の為に、性格が大きく違うのだが。
それもこれも、冥王星王が自身に従わせる目的で行ったこと。
「伯父様、フォリビアは・・・・・・」
「あ?ああ、既に処分済みだ。もう新しい魂を入れたさ」
「やはり・・・・・・・・」
「洗脳は無駄だったろう?私の指示にお前も従えばいいものを・・・・・・」
従う意思など、リフィアはどこにも持ち合わせていなかった。
可哀相な人。
どうしてそこまで、世界を憎むの?
「どうして、最初から敵意識を持つ私を生かしておくのです」
「身内に手を掛けるほど私は残虐な人間ではない」
・・・・・・・嘘つき。
貴方は妻と、実の息子・・・・・・そして、私の両親を裏から手を使って殺したじゃない・・・・。
嘘つき、嘘つき・・・・・!!
リフィアは男を睨み付けながら、その姿を消した。
「アレンお兄ちゃん?レイト王子見てない?」
綾乃の旅支度が終わり室を出たところで、同じく母国金星国に一旦戻って荷物を纏めて来たサラが駆け寄ってきた。
確か、レイトは一番早く太陽国に戻ってきて、綾乃の部屋で途中まで一緒にいた筈だった。
なのに、いつの間にかいなくなっていたのである。
ドアを閉める音にも気付かなかった為、綾乃とアレンは瞬間移動かと疑っていたくらいだ。
「さっきまで一緒にいたんだけど・・・・・・城のどこかにはいるんじゃないか?」
「僕ならここに居ますよ」
その声に、皆一斉に振り返った。
どうも、とはにかむレイトが三人から少し離れたところに立っていた。
ぷくっと頬を膨らませ、腰に手を当てたサラが詰め寄っていく。
「どうしたの?エスカレーターのところに迎えに来てくれるって言ってたのに、来てくれてなかったでしょう。何かあったの?」
「すみません、姫様。少し野暮用が出来てしまったのです。お許し下さい」
天然タラシモードONのレイトがサラの手を取って捨てられた子犬のような表情を浮かべて許しを請えば、一気にサラの頬が赤く染まっていく。
レイトはコクリと頷く彼女に微笑んだ。
そんな二人に蚊帳の外へ追い遣られた綾乃とアレンは、その場をさっさと立ち去ろうと踵を返す。
「あ、待って!!」
恥ずかしくて居た堪れなくなったサラは即座に二人を見つけ、レイトから離れて走り出した。
レイトは一人取り残されて立ち尽くしたまま、じっと三人を観察する。
階を下りた為に見えなくなって、俯いた彼の口元は怪しげな笑みが浮かんでいた。
「バレる訳がない・・・・・・・“レイト”の行動パターンは把握済みだ。あの娘、“レイト”とただの恋人関係なだけならまだしも幼馴染みであり、更には婚約者でもありながら気付かぬとは何と愚かな。それまでの娘だったという事だろう、なあ、そうだろう、“レイト”?・・・・・・しかも、太陽大命神ながらオレの邪気すら感じていない。モノの本質を見抜けない太陽系の王など、不要の一言に尽きる・・・・・」
「・・・・・・フッ。面白い。オレが成り代わってやろう」