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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十一章『光の掟』
110/155

番外編の掟Ⅱ『私の望むモノ』

 太陽大命神継承の儀までの三週間。

 前番外編『アニマルパニック』共に、その間の出来事をこういう形で載せます。


 本編では3週間スキップ致します。

(私の書く番外編は、もしも・・・・・というものではなく、小説中に実際に起こったという設定で書いております。その為に、本編でもここであったことは事実として扱います)





「ほんっとゴメンね。協力してくれてありがとう」

 太陽城の一室で、綾乃と湊生はリフィア、レイト、サラを巻き込んで大掃除をしていた。

 身分ゆえに、片付けが不得意・・・そもそもしたことさえないサフィール王の、コレクション部屋だった。

 彼は何かを買うだけ買ったら満足してしまい、後はその部屋に放ったらかしにする質だった。

 おかげで部屋の中は凄いことになっているのであった。

 いくらか宝石など、高価なものも見受けられる。

「暇ですから、気にしないで下さい。これも結構楽しいです」

「・・・とか言って、レイト王子は今日も午後から授業あるんでしょう?」

「まあ・・・・・そうですね」

 レイトがサラに笑いかける。

 彼は、平日のみ各国の学習院で教師をしているのだ。

 最近はその仕事量が増えて、休日も費やされるようになった。

 同時にベビーシッターとして毎朝サラの弟(本当は兄だが、諸事情で弟)であるフェインの面倒も見ている。

 同じように太陽城に居座らせてもらっていても、外出していない時は式典の手伝いや国外に居ても出来るだけの政務を熟しているレイトと会えることは少ない。

 だから、サラにとって、こうして一緒にのんびり出来るのは本当に久しぶりのことだった。

 出来れば、二人きりでいたい、なんて思うけれど。

 でもどこか、最近レイトはサラを避けているような節があった。

 その為に擦れ違いが多いのも事実であったが、自然な感じなので誰も運が悪かったという認識はあったとしても、避けているなどとは考えてはいなかった。

「少しでも仮眠取っておいた方がいいと思うの。不眠不休は体に悪いわ」

《ふ、不眠不休!?》

 サラの労いの言葉に、湊生がぎょっとして青褪めた。

「そうなの。この城で私達の世話をして下さっている人から伝え聞いたんだけど、昼間は講義、夜間は講義で使う資料作成や個人の成績処理、政務とかばかりしているらしいの」

「あ・・・・はは」

 誤魔化すようにレイトが笑うと、サラから現状を聞いたアレンが、それはいけないとばかりに眉間にシワを寄せて詰め寄る。

《・・・・・・綾乃、サラ》

「ん?ああ、はい」

「分かりましたわ」

 湊生が二人に目配せすれば、意図が掴めた二人は了解の意を告げる。

 不思議そうに突っ立っているレイトの両腕を、綾乃とサラが掴んで引っ張っていく。

「・・・わ!?」

 引っ張って、二人はそのまま近くのソファに倒れさせた。

 そのベッドも、サフィールが購入するだけして放置したものだ。

 流石に湊生は身体が魚の状態なのでレイトを引き摺って行くことが出来なくて、二人に頼んだのだ。

 湊生の後ろで、ひたすら掃除に励むリフィアも手を止めた。

《寝ろ》

「え・・・・でも掃除・・・」

《掃除はいい。今すぐに寝ろ》

「・・・・・・・はい」

 湊生に強制されてレイトが目を閉じてから、そう経たないうちにソファの方から寝息が聞こえてきた。

 やはり、相当疲れが溜まっていたようだ。

《んん~。あんまりにも睡眠を取らないようなら、睡眠薬を一服盛ってやるしかないかもな》

「そうよね・・・・・もしもの時は城の人の頼んでみる。・・・・・・たったの一刻でも寝て、疲れが取れればいいのに・・・・・・」

 言いながら、サラは目の前にあったトーテムポールに似た置物を持ち上げ、凝視する。

「って何これ・・・・・」

《国に来る行商人から買ったんだってサ。・・・・・・俺にはガラクタに見えるけど。――――――あ、リフィア、そこの書物取って―――ありがと》

 受け取った書物を、近くにあった本棚に並べた。

 その書物と湊生の身体は同じくらいの大きさで、湊生の背中にリフィアが書物を乗せたことで書物が浮いているように見えた。

「結構面白いものあるな」

「ん?リフィアお姉ちゃん、どんなのがあったの?」

「サラちゃん、これ」

「・・・・・・くく、あはははっ!」

 リフィアの持っている書物を覗き込んだサラは、腹を抱えて笑い出した。

 何だかリフィアの周りには書物類が多い。

 因みに、サラの周りは彫刻類が多く、綾乃の周りには絵画が多い。

 サラについでに言うと、湊生はリフィアを手伝っており、本棚のリフィアの手が届かない高さのところに並べなければならない書物を並べている。

《何見てんの?俺にも見せて》

「だーめっ」

「却下!」

 二人が湊生から本を遠ざけて、無邪気な笑みを見せる。

 一体何についての本だったのだろう。

 湊生が剥れるのを横目で見ながら、綾乃は苦笑した。




 ・・・・本、かぁ。




「表世界の・・・・」

 不意に綾乃が切り出した。

 寝ていたレイトが、騒がしかったのか、目を少し開けた。

 皆、それに気付いていなかったけれど。

「お兄ちゃん、表世界の私達の家の近くには、大きな図書館があったよね?」

「図書館・・・?」リフィアが聞き慣れぬ単語に思わず聞き返す。

《書物がいっぱいあるところ》

「ああ、なるほど」

《懐かしいな・・・・・・・よく学校から帰って一緒に行ったよな。覚えてるか?》

 湊生の後ろを、いつも綾乃は付いて回っていた。

 スポーツも好きだが読書も好きであった湊生はよく図書館に通っており、付いて回る綾乃も自然と図書館で本を読むことは多かった。

「うん覚えてる。でもその図書館、もう今は無いのよね」

《そう・・・・・なのか?・・・・・・・俺のいない三年の間に、いろいろと変わってしまったみたいだな・・・・》

 綾乃が、表世界に戻ってみたい?と訊けば、湊生はそうだな、と頷いた。

 そういえば、と湊生は思い出したように口を開く。

《レイトが喜びそうな本がたくさんあるんだよな。前に、ディズニーアニメについて話したら興味示してたな》

 今度はサラが、

「ディズニーアニメ?」

「表世界の空想上の物語だよ」と綾乃がサラにも分かるように説明する。

 表世界のことは裏世界の住民には分からない。

 それはそうだが、いちいち説明しなければならないのはいささか面倒だ。

 ダジャレを言っても、そのダジャレ内の単語が分からなくて、ダジャレとして成り立たない気がする。

 仮に、『布団が吹っ飛んだ』―――そう言ったら、「窓開けっ放しだったの?」って返ってくるだろう。

 『ジョニーが便所に~』だったら、「ジョニーって誰?便所ってどういう意味?」とか・・。

 ダジャレはどこに行った?

 こうなるのは・・・・・・・・明白だった。

「あーこれ邪魔。よいしょっと・・・・・・・あ?」

 綾乃が恐らく30号以上はある火山が描かれたキャンバスを持ち上げ、移動させようとした時、そこに変な扉があることに気が付いた。

《どーした綾乃?》

「扉がある」

「扉?」

 壁の隅のところに、高さ1メートルも無い扉があった。

《面白い。開けてみるぞ》

 湊生が取っ手に手を掛け、開いた途端――――再び眠りに落ちていたレイトを除くその部屋の中にいた人皆、その中に吸い込まれていった。






「アイシャル・・・・・・私の娘。この父の力が及ばずこんなチューブに入ることになって本当に・・・・・・申し訳ない」

 サラは誰かの声と、倒れているそこの床の冷たさで目を覚ました。

 そっと体を起こし、声のした方を窺う。

 研究機材を挟んで、その向こうに誰かがいた。

 長いマントを纏った青年が、何かに手をついて悔しそうに俯いている。

 円柱状の水槽みたいなものだった。

 “チューブ”と青年が口に出したものは、嘗て湊生の魂が入っていたあのチューブそっくりなもので、水で満たされている。

 その中には・・・・・・

「女の子・・・・・・?」

 思わず声が口から漏れた。

 小さな声だったのに、距離がそう離れておらず周囲が静かだった為か青年にはしっかり聞こえていたようで、サラの方を振り返る。

「誰だ」

 瞬時に身を隠したサラは何とか見つからずに済んだ。

 青年は気のせいか、と再びチューブに目をやった。

 サラも僅かに覗く。

 チューブ内の女の子は多分4,5歳。

 青年は二十代前半位。

 辺りが暗くて青年の顔はハッキリ見えないが、女の子の入っているチューブ内の水が光っているからか女の子の容姿は見て取れた。

 サラよりも長い、緑色のウェーブ髪。

 小さく丸まっていて、服は白いシンプルなモノを着ている。

「敵襲がもうすぐ襲ってくるだろう・・・・・・それは前々から知っていたことだ。それなのにお前の為にこうして力を注ぐのは国の侵略を容易にさせていることでもある・・・・・」

 ダン、と拳をチューブの壁面に打ち付ける。

「でも幼いお前は力の制御など出来はしまい・・・・・・私が力を与えねばすぐに死んでしまうだろう。それだけは駄目だ」

 青年は続けて、

 アイシャル、お前とあの子達――――フェティストとシャルティールの三人が希望の光。

 私はお前達を守るから。

 例え、その力が切れ、跳ね返ってきたとしても・・・・・・・最後まで。

 青年の呟きが終わったその途端、サラの身体は薄れて行った。

 どこかに引き寄せられていっているような。

 完全に消えた時、サラの身体はガラクタ部屋に戻っていた。






 一方、綾乃と湊生は。

《おお、ひっさしぶりだな・・・・・・》

 そこは、表世界の二人の家だった。

 何一つ変わっていない感じがした。

「入ってみる?」

《ああ》

 扉の向こうの幻想だ、何が待っているか分からない。

 二人は気を引き締めて鍵の掛かっていない玄関扉を開いた。

「あら、遅かったわね。お帰りなさ~い」

 キッチンの方からひょっこり顔を覗かせた二人の実母・明日香がフライ返しを右手に持ったまま微笑んできた。

 もう9ヵ月近く裏世界に居た為に、その姿が懐かしく思える。

 感極まった綾乃はそのまま明日香に抱き着いた。

 見れば、服装は制服になっていて、さも裏世界に行ってしまったあの日の学校帰りのようだった。

「まあまあ、甘えんぼさんね。いくつになっても変わらないわね。あなたもくる?湊生」

 ・・・・・・・え?

 綾乃は湊生の方を振り返った。

 そこに居たのは魚の湊生ではなく、生きていた頃の湊生。

 三年分の成長は見られず、あの死んだ日の姿を切り取ったような姿をしていた。

「お・・・・・俺・・・・・」

「おい、湊生。玄関に突っ立ってたら家に入れないじゃないか」

 湊生の後ろに実父・遼次が迷惑そうな顔をして立っている。

 どかっとバッグを湊生の頭の上に落とし、「ほら避けた避けた!!」と退かせて家の中に入って行く。

「あなた、今日は早いのねえ」

「仕事が早く片付いたんだよ。ほうらお土産」

「まあ。ケーキ?嬉しいわ、ありがとう」

 仲良くリビングに向かう二人を、綾乃と湊生は複雑な顔をして見送った。

「お兄ちゃん・・・・・」

「ああ、おかしい。サラやリフィアが気になる・・・・・・それにこの姿・・・・・・わっ!?」

「何!?」

 その時、サラと同じように二人の姿は霞んで、そのまま消えた。






 ・・・・・・・さん


 ・・・・・・・さん、大丈夫ですか!?一体何があったんです!!


 綾乃さん、湊生さん、リフィアさん、姫様ぁっ!!



 ぐらぐらと揺らされて、皆目を覚ました。

《戻って・・・・・・来れたんだな》

「うん・・・・・・」

 変なことを言う四人に、レイトは首を傾げる。

 皆に言われてベッドで寝ていたレイトは、目を覚まして寝ぼけ眼の状態の時に部屋に誰もいないように見えて目を擦ってもう一度見た。

 寝起きすっきりの彼が珍しく寝ぼけていたのは、やはり睡眠が足りていないからなのだろう。

 とにかく、もう一度見た時、そこには皆居た。

 様子が変だったけれど。

 最初はちょうどお昼時で眠たくなってしまって寝てしまったのかな、と思った。

 だが起き上がらせてみればぐったりとして。

 魂が無いように見えた。

 数分したある一瞬に、皆に生気が戻った。

 そこで、レイトは全員を起こしにかかったのである。

「姫様、一体何があったのです?」

「夢・・・・・・見て、た・・・・・」

 青年と、女の子の夢。

《あ!!あの扉が無い!!》

 湊生が扉のあったところを指差し、叫んだ。

「ホントだ!!無い!どこにいったんだろう?幻だったの?」

「綾乃、でも皆見てるよ」

 おろおろする一同に、またもレイトは不思議そうにした。

「扉なんて・・・・・・無かったですけど?」

「うっそ!?」

《無かっただって!?》

「・・・・・・・・はい」

 結局、何もわからず、この事件の真相は流れてしまった。

 ただ、一つ言えることは。

 彼らが見てきたもの・・・・・・それは、彼ら自身が一番望んでいたもの。

 綾乃と湊生は例え一瞬だとしても表世界の自分の家に帰ることを望み、サラは未来を案じていた。

 だからそれを・・・・・・・垣間見たのではないか。

 誰も口には出さなかったけれど、見て来た者はそう確信したのだった。







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