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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十一章『光の掟』
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第十一章『光の掟』・第二話『頻発する異変・少女の本性』Part1





《継承式かあ・・・・・》

 太陽城に戻ってきて三日。

 異常なほどのお祭りモードが観測される城内で、湊生は仰向けで宙を漂っていた。

 メインである湊生にとっては退屈で仕方ないだけだ。

 本人より周りの方が湊生―――アレンの、守護神継承の儀を喜んでいて、湊生は置いてきぼりな状態なのだ。

「お兄ちゃんもちょっとは喜んだら?」

 綾乃が湊生の尾びれを摘まみ、空中徐行運転が停止する。

《そうは言ったってよ~それが俺にとって喜ばしいんだかそうじゃないんだか・・・・・》

「まあ、確かにそうだけど」

《お前が代わりに式典出ろよ。っていうか、手ェ離せ》言いながら、綾乃の手から逃れようと尾を必死に振って抵抗する。

「お兄ちゃんの式でしょ。そんなこと言ってたら私の身体貸さないよ」

《イイヨーどうせ、俺が無理矢理魔法使えば意志関係なく入れるし・・・・・・っておおおおおおおお!!目が回る!!ギブアップ、ギブアップ!!》

 綾乃が湊生の尾びれを掴んだまま上下に振り回し始め、湊生が悲鳴を上げる。

 やはり魚の姿では分が悪い。

 一瞬手が緩んだ隙に、頭上のシャンデリアのあるところまで飛んで逃げた。

《綾乃!!お前、何すんだよ。一瞬三途の川とこんにちはしただろうが》

「人の体借りてる恩、忘れないの」

 チッと舌打ちして安全地帯であるシャンデリアの上に寝そべった湊生を、反目眼で暫く睨んだ後、綾乃は明日太陽国にやってくるサラとレイトに宛がわれた部屋を整えに向かった。






「綾乃さん、湊生さん、暫くぶりですね」

 サラとレイトの二人は約束した時間ちょうどに城に訪れた。

 儀式まであと三週間と少し、二人は太陽城で寝泊まりすることになる。

 ワールドコネクトベルトを使って太陽国まで来たとはいえ、疲れているだろうからとサフィール王がその日は儀式の準備を手伝わずに休むように、彼らに言った。

 今日一日は、退屈している綾乃や湊生とお茶を飲みながらゆっくりお話しようということになっていた。

 荷物を各自の部屋に持って行ってもらうように小間使いに頼んで、それが運ばれていくのを見届けてから一行はお茶とお菓子が用意されている部屋まで移動していた。

 レイトの言葉に反応して振り返った綾乃は、何かが刺さったような激痛を一瞬感じてしまう。

 綾乃は婚約のことは分かっていながらも、二人が並んで立つ姿に胸の痛みを僅かに感じつつそれに気付かぬふりをした。

「うん。レイト君、また体調崩したってテイムから聞いたけどもういいの?」

「ああ、はい。もう大丈夫です。ご心配をお掛けしました」

《今度は俺の体調が良くないんだよな・・・・・・・》

 ぬいぐるみの中に入っている期間が長くなって負担が掛かってんのかな、と湊生が言えば、レイトは不思議そうな顔をする。

「前例がありませんから、憶測になってしまいますよね。ココロを物に移すなんて・・・・・」

 普通の人間には出来ないこと。

 守護神だから、湊生は魚のぬいぐるみの中に居られる。

 表世界で死した湊生の本当の肉体は既に、焼かれてしまっているのだった。

《お前こそ、何度も倒れてるけど病名とか分かってんのか》

 視線がレイトに集中する。

「いえ・・・・・」

 急に倒れ、意識不明になってしまったり。

 時には身体が重く感じて、上半身を起こすことすら出来ないこともある。

 痛みとかも無いことも無いが。

 はっきり言って、程度は違えど湊生とその症状は限りなく近い物があった。

《何なんだろうな、結局。たまに体調崩すくらいなら日々の疲れとかかも、なんて思うんだけどさ》

 湊生は綾乃の肩の上で垂れてしまっている。

 今朝、湊生の部屋――――綾乃の部屋のクローゼットの中のぬいぐるみ置場から、うーうーという唸り声が聞こえてきて、綾乃は恐る恐る様子を見た。

 同じようなぬいぐるみだらけでなかなか湊生を発見することが出来なかったが、全てぬいぐるみを取出し、部屋の床一面にぬいぐるみが転がった状態になってやっと湊生は発見された。

 頭痛というか何と言うか、頭が重く感じるという。

 そのまま寝ておくように綾乃から勧められたが、サラとレイトが来るからということで無理をして出て来たのである。

《あー、山が来た・・・・・ううう》

「わっ!?お兄ちゃん!?」

 肩から湊生が滑り落ちてきて、咄嗟に出した手の上に乗っかる。

「休んだ方がいいんじゃなの・・・・・?」と、サラも心配して綾乃の横から顔を出して覗き込む。

「そうですよ、湊生さん。僕達はいつでもお話出来ますから。良くなるまで寝て下さい、いいですか?」

 僅かに右手を上げておう、と返し、綾乃の部屋は近いからと自力で部屋の方へ戻って行った。

 綾乃達は、折角だからということでお茶とお菓子の用意されている部屋へ向かった。







《やっぱりキツいな・・・・・・・》

 部屋まで近いと言えど、湊生は今ぬいぐるみ状態だ。

 小さな身体では、その綾乃にとっての近いは湊生にとっては遠いに変わる。

 体調が良ければひとっ飛びだが、身体が重く上手く飛べない。

 綾乃達の前では普通に飛べてた筈だ、そう見えるように頑張って飛んだのだから。

 ふらついて床に落下しそうになった体を、誰かが受け止めた。

《あ・・・・・?》

 霞む視界の中でぼんやりと映ったのは。




《リ、フィアか・・・・・・?》








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