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太陽系の王様 THE KING OF SOLAR SYSTEM  作者: Novel Factory♪
第十一章『光の掟』
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番外編の掟Ⅰ『アニマル・パニック』






「はーい。それでは、守護神の定例会を始めるぞー」

 よっこいしょ、と円形のテーブルに綾乃と一体化している湊生が座った。

 既に、サラ、テイム、ステアの三人は着席している。

 レイトだけが、まだだ。

 テイムやステアは時々ワールドコネクトベルトで来る程度だが、二週間前から式典の為にレイトとサラは太陽国に滞在している。

 だがレイトはいろいろと忙しいようで、式典の手伝いもしてくれているが、どこかへちょくちょく外出していた。

 定例会長は“麒麟”である湊生―――アレン。

 そして副会長(書記を兼ねる)は白翼Sランクのレイトである。

 因みに、今綾乃は定例会に参加出来ないので自室のベッドで寝ている。

「ではまず、水星。テイム、国の様子は?」

「んー。もう水の心配はないから環境面には異常はない」

 拳を口元に当て、少し考えてからテイムが述べた。

「サラの方は?」と今度はサラに問うと、「何もありません」という返事が返ってきた。

 本来水に困るのは砂漠の国である金星なのだが、海王星の援助により常に水量は120%である。

「ステア、報告を」

「木星ですか?そうですね・・・特には、ありませんね」

 と、ステアが報告し終えた時、ギィと鈍い音を立ててドアが開いた。

 現れたのは、副会長のレイトである。

「遅れ、ました・・・」

 息が切れている――――どうやら、走って来たようだ。

「いやいや、大して遅れてないよ」

「そうよ、さっき始まったばかりよ」

 などと、労いの言葉が飛び交う。

「今、何をしているところですか?」

「各国の現状報告」

「あ、そうですか。・・・海王星、変わりありません」

 言いながら、レイトは自分の椅子に腰掛けた。

 毎回、レイトは平日の定例会時だけ遅れてくる。

 レイトは、一体何を・・・?

 見ると、サラも不思議そうな顔をしている。

「レイト、普段何してんの?」と、湊生が振れば、レイトは明らかに困った顔をした。

「・・・・えっと・・・それは、その・・・」

「レイト王子は、私にも教えてはくれないの・・・」

「姫様・・・」

 傍目から見て明らかに落ち込んだサラに、レイトは目をやった。

 テイムがレイトにヘッドロックを食らわせる。

「ほぉら、オマエのお姫様しょんぼりしてるぞォ」

「か、からかわないで下さい、テイムさん!!」

 レイトが真っ赤になっている。

 魔力がFランクからSランクになった今、多分・・・・・というか絶対、天才少年の唯一の弱みはサラだ。

「本当にあまり言いたくないんですが・・・」

「ほらほら、言っちゃえ!」

「教師、してます・・・」

「へえ。レイトらしいじゃん。隠すことないんじゃ?」と、湊生は尊敬の目を向ける。

「フェン様、背負って」

「・・・・・・。」

 湊生が、サラが、テイムが、ステアが・・・とにかく全員固まった。

 何だそれは。

 最初に沈黙を破ったのは、意外にも・・・いや、予想通り?テイムだった。

「ぶわははははははっ!!オンブ!!フェンを!?」

「・・・・はい」

 レイトは顔を赤らめたままテイムを睨み付けた。

 そこまで笑うことはないだろう。

 ああ、とサラが何かを思い出したように手を打った。

「お母様が、確かいいベビーシッター見つけた・・・とかって・・・」

「・・・・・僕」

「う、っくく、何で・・・ぷぷ、レイトなんだ・・・ろ?」

 湊生が笑いを堪えながら問いかける。

 だがはっきり言って、堪え切れてない。

「笑うか尋ねるかどっちかにして下さいよ。・・・・シャネッタ様が、天才に育てたいから、僕の講義聞かせるのがいい、などと仰って」

「なるほど」

 レイトは、少し前から各国にある“学習院”の教師をしていたらしい。

 海王星の方の学習院設立にも関わっており、臨時院長を務めていたりすることもある。

 それで、平日はあちこちの国を飛び回っていて遅れるのだ。

 突然、レイトがドアに向かって歩いて行き、一度出て行ってまた戻ってきた。

 その腕の中には、太陽城の使用人に預けていたフェンがいた。

 ぐっすりと眠っている。

「お、お兄様・・・」

 サラが声を漏らした。

 レイトによって“フェイン”と名付けられたフェリシェントは、やっぱり今でも“フェン”と呼ばれている。

 レイトが言うには、“フェン”という愛称を残し、なおかつ父親のジェインの名に近付けたかった、ということだ。

「今度は私が姉になるのね・・・実感沸かないわ。変な感じ」

「それは僕だって同じです。もうすぐ兄だなんて、どんな感じだか・・・・・よいしょっと」

 言いながら、レイトはフェンをオンブ紐で自分の体に括りつけた。

「・・・・・・!?どうしたんですかそれ!!」

 フェンを背負い終えて顔を上げると、レイトが目を見開いた。

 皆訳が分からず、あんぐりとする。

「皆さん・・・その」

「何だ!早く言え!」

「ご自分の頭・・・触ってみて下さい」

 おのおの自らの頭に手をやった。

 そしてしばらくフリーズ。

「な、何だコレは!」

 ふさふさしたものが、そこにあった。

 そして、焦って一同は部屋を飛び出した。

 定例会室から少し離れたところにある鏡まで自分の姿を見に行った四人は、それぞれの頭に耳らしきものや、他にも体の至る所に動物の一部があるのを知った。

 湊生はワニ、サラはリス、テイムはイノシシ。ステアはツル。

 現状では、湊生はザラザラな緑の部分が頭にあって、サラとテイムは耳に尻尾、ステアに至っては腕が翼に変形しつつある、そんな感じだった。

 湊生は、その原因が定例会が始まってすぐに飲んだ紅茶にあることに気付いた。

 レイトに静止しようとしたが既に遅く、四人が鏡のところから帰ってきた時、ちょうど飲み干したところだった。

「ああ・・・遅かった・・・。レイトも動物化決定」

「は、え!?どういうことですか?」

「レイトはどんな動物なんだろね」

 などと余裕そうに言う湊生とテイムは、振り返るとサラとステアがいないことに気付く。

 鏡のところまで戻っても、やはりいなかった。





「はい、どうぞ。乗って下さい」

 背後でレイトの声がして見ると、隅っこで壁に手をついていたシマリスに手を差し伸べているところだった。それに従って、シマリスはレイトの肩まで伝って行ってちょっこり座り込んだ。

「この子、サラでしょ?」

 笑顔で言うレイトに二人は二重の意味で驚く。

 確か、レイトが異変に気付いた時点では、何の動物かは分からなかったはずだ。

 それを見分けるなんて・・・というか、ステアでなくサラだと判断したのは流石である。

 さらには、サラが完全に動物になってしまっていたことだ。体の一部だけだったのだが、サイズまで実物大だ。

 よく見れば、レイトの近くに鶴もいる。ステアだ。

「ちょっ、テイム・・・!?」

 テイムがいたところに、イノシシが一頭。

 湊生も危機を感じて鏡を覗き込むと、頭だけがワニだった。どうも、それ以上の変化はないようだ。

「あああああー!!俺、紅茶少し口に入れた時点で咽たからだ~!何コレ中途半端ぁ!!しかも俺だけ爬虫類!哺乳類のほうがいいー!!鳥類とか、守護神の翼のこと考えたら普段と何ら変わりないじゃん!頭ワニで玉座座るのはイヤー!!」

 湊生は完全にパニック状態だ。

 鶴のステアが、普段と変わらないですって!?変わるに決まってんじゃないのよ!などと言いたげに翼をばたつかせる。

 レイトも変化するようなので、背負っていたフェンをソファに寝かせた。

「にしても、どうやったら戻るんでしょうね?」

「答えは一つ」

「何ですか?」

 完全変形したら話せなくなるようなので、湊生とレイトのみの会話が続く。

「うちの王様」

「伯父様、ですか!?・・・・あー。やりそうですねー」

 初めてサフィール王と対面した時は気難しく真面目な人だと思っていたが、彼は結構茶目っ気があった。

 こういうことをしても、何ら不思議でないし、そもそもアレンは不審に思っていた。

 なぜなら、王が自ら定例会が始まる前に差し入れとか何とか言ってお茶菓子と共に持ってきたからだ。 普段なら城の使用人がする。

 そこから五人(正しくは、二人と一匹と一羽と一頭)は王の捜索に出た。

 基本バラバラなのだが、サラにおいてはあまりに小さいのでレイトの肩に乗ったまま、ということになった。





 王発見・・・!!

 そう心の中で叫んだのは、湊生のワニ、じゃなくってワニの湊生だった。

 だが最悪なことに、その近くにリフィアがいる。仲良く談笑中だった。

(あー。早くよけろ!早く、今すぐ、即刻立ち去れー!!)

 湊生の心とは裏腹に、二人は冗談などを言っては笑い、美味しそうに差し入れに持ってきた残りらしい茶菓子を食べている。

 どうやら、綾乃が寝てしまっているので仕方なく一人寂しく菓子を食べていた王の元をたまたまリフィアが通りかかり、誘われた、そんな感じらしい。

 ・・・・・・いや。そんな過程はどうでもいい。早くよけろー!!

 だからといって、王やリフィアにこの姿を曝すのは屈辱的だ。

 湊生は意を決してシーツを被って二人に近寄った。

「・・・・・・・・サフィール王」

「お?湊生ではないか。どうした?」

「おう、湊生。・・・・・・何でシーツ・・・・・?」

「王、即刻治す薬下さい」

 言っている内容を知って、王は薬のビンを湊生の前にフラ付かせた。

「・・・それっ!」

「ん。例の品。効果打消し剤」若干語尾が震えている。

「下さい!!」

「顔を見せてくれたら」

 リフィアが不思議そうな顔をして王を見た。

「顔が、どうかしたんですか?」

「それが、先程―――」

「わあああああ」

 湊生が王の口を塞ぐ。

 その途端、王が湊生の口にビンの液体を突っ込んだ。

 抵抗も出来ぬまま、ごくりと飲み込んでしまう。

 だが、顔のワニが治るのではなく、寧ろ―――!!

「・・・・・!!」

 湊生は、完璧なワニになっていた。

「きゃああああっ!!ワニぃっ!!」

「おお。効果抜群だな。湊生はワニになったか」

(何がおお、だ!!嘘つき!しかも原液じゃないか!!)

 王はリフィアの方を振り返って、

「コレはな、先程定例会に差し入れた紅茶に入れた薬だ。研究所の方から、開発がこの間成功したという報告と、このビンが送られてきてな。実験」

「実験、て・・・・・戻らなかったらどうするんですか」

「ん?時間が経てば戻るが?」

「いえ・・・・失敗、とか・・・・・」

「あ・・・・・その時はその時」

 ビンのラベルには、“アニマルメディスン”と書かれている。説明書きには、その人が最も近い(性格・行動・外見から総合判断)動物に変化してしまうようで、湊生は本来薄めて飲む(紅茶などに入れて)その薬を、濃いまま飲まされたため、即効で変化したようだ。

 気になるのは、普段魚の湊生か何故ワニなのかなのだが。

 見れば、向こうの方から元に戻ったサラ、テイム、ステアが歩いて来ている。

 サラが抱いている、うさぎ・・・・それがレイトであるのは、一目瞭然だった。

 ほんっと人騒がせな薬だ。

 おかげで人面魚ならぬ、“鰐頭人”姿を皆に見られることとなってしまったではないか。

 全く傍迷惑な珍体験。

 更には、今回する予定であった定例会の内容が半分も終わらず、また集まるか次回繰り越しになってしかったではないか。

「さて。レイト王子、戻りましょう」

 背中にフェン、腕にうさぎのサラは、若干可哀相に見えたが、何だか顔は嬉しそうだった。

 彼女はそのまま太陽城に用意された客人用の部屋へ戻って行き、他のメンバーも解散、という形になった。

(王には隙を見せないようにしよう・・・)

 湊生がそれを改めて学んだのは言うまでも無い。

 夜、元に戻った綾乃が疲労困憊した魚のぬいぐるみに尋問を掛けたが、湊生は一切口を割らなかったという。


挿絵(By みてみん)


 綾乃だったら、恐らく鳥?と思って書いたブレーメンの音楽隊風(既に一度画廊に掲載)。

 下からレイト、サラ、綾乃。



ペンタブ買いました・・・・・ずっと欲しかったんですが、着色が下手で買う決心がつかなかったといいますか。


暫くしたらカラー(今まで画廊に載せたヤツ)を載せます。

あー、こんな色だったんだーって思って下さい。(守護神達は覚醒時の髪色が多いと思います)

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