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第16話 訓練

「いいかここは、三百数える間に制覇しなければならない」

 ルークは、さらりと述べた。

「教官、それは……」

 彼らの前には、明らかに到達が無理そうな障害物が並んでいた。

「決め手はテクニックと上半身の筋力だ。力だけで無理やりこなそうとしても、途中で力尽きてしまうぞ。さあ、頑張ろうか」

 ルークはにやりと笑いながら悪魔の宣告のごとく語りかけた。

 各地から集められた先鋭は、黙々とメニューをこなしていった。

 ネットを彼らは前方から視線をそらさないようにして登っていた。

「おーい、ネットの真ん中は登るな。中央部分はたるみやすいが、外側は張りが強くて登りやすいぞ」

 呼びかけられた者の下には、もう一人が迫ってくる。その次にはと、猛烈な競争が繰り広げられていた。

 ネットは人の六倍ほどの高さがあり、下からだと見上げないと頂上を見ることはできない。

 一番上まで到達すると、今度はそれを下りていく。

 また別の障害物は、二つの梯子はしごを屋根のように互いにもたれかけさせたような作りになっていて、この梯子の表と裏を移動しなければならない。

 最後に待っていたのは巨大なレンガの壁ができている。登るとロープで降りる。

「教官、ここは無理です。登れません」

「だめだ、ガッカリさせないでくれ。やってみてから泣言は言え」

 あきらめかけた兵は、そびえ立つ壁の上部を見て息を呑む。

「さあ、いけ」

「はい」

 彼は、しぶしぶ、少しづつ登っていく。

 一段こなすたびに、ルークは声をかけて励ましていた。そしてとうとう、頂上へ着いた。

「よし、ロープをつたって下りるんだ」

 片手を上にしてロープをつかみ、彼はゆっくりと体を下ろしていった。


 昼食後基礎トレーニングを終え、剣術の訓練をしていた。

「一つ手合わせをお願いできませんか」

 フェリスがルークに近づいてきて、頼んだ。

「いいよ、やろうか」

「ありがとうございます」

「では」

 二人は模擬剣を構えた。

 数合打ち合うと、フェリスが手を強く打ち込まれ剣を手放す。

「なかなかうまくいきませんね。もう一度お願いします」

 手をさすりながらフェリスは再び剣を構えた。

「では」

 ルークも剣を構える。

 二人は何回か繰り返した。

「これくらいにしておくか」

 ルークが剣を納める。

「はい」

 フェリスも一礼して、納めた。

「あのう、ルーク様の剣筋は、東国のものですね。もしかして、剣聖と言われたバーキン様の流派では」

「ほー、よく分かったな」

「以前弟子の方と打ち合ったことがございまして」

「その方は、今どこに」

 ルークは急に身を乗り出して問いかけた。

「さあ、なにぶん高齢の方でしたので。ただ、その時は王都に居りましたのでもしかしたら」

「そうか……」

あけまして、おめでとうございます。

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