第14話 お茶のひととき
「一服いただくわ」
エリザベスは正座してお茶を飲んでいた。
しかし、正座と言うには余りにも不自然に膝が開いていた。タイトミニのスカートは少したくし上がり、脚間には魅惑の布地が見えそうであった。
小姓は気になり、時折ちらちらと膝頭の奥を覗き見している。
小姓とは言っても年齢はエリック達くらいではある。
エリザベスは、ある暑い日に、ルーク達を率いて領内を散歩していた。
「ちょっと、のどが渇いたからここに寄って行こうかしら」
近くにあったさほど大きくないある寺院に立ち寄ったのであった。
対応した寺の小姓は、少しオドオドしながらもまず最初に、大ぶりの茶碗に茶を多めに入れて出してきた。
「粗茶でございますが……」
「ありがとう、突然お邪魔してごめんなさい」
エリザベス達の身なりは、ほどほど整った富裕層の服装であった。
小姓も誰だかわからないが、寄進者の一人かもしれないと遇しているようだ。
エリザベス達は、それを一気に飲み干した。
「ぬるめで一気に飲めておいしかったわ、もう一杯いただけるかしら」
「はい、少々お待ちください」
次に小姓は、やや小さめの碗に、やや熱めにした茶をだした。
「ほう、今度は少し熱めのものか。なかなか気が利くな。二杯目はお茶本来の味を楽しむためか」
ルークが感心している。
エリザベスは、ゆっくりとお茶を飲んでいる。なにゆえか、少し膝頭を先ほどより開き加減で、まるで誘っているかのようであった。
小姓は時折、視線を彼女の脚に向けていた。しかし、すぐに視線をはずして悟られないようにしていた。
エリザベスは、何事もなかったように、お茶碗を持ち上げてお茶を嗜んでいた。
彼女が気づいていないことに安心したのか、小姓は彼女の下肢に視線を固定したときであった。
「ピンクはお気に召しましたか」
エリザベスとしっかりと目が合っていた。
「あっ、いや、その……」
しどろもどろに消え入りそうな声で顔を真っ赤にしていた。
「うわ、姫さんの病気が出た」
エリックがつぶやく。
「あなたに、正式な自己紹介していなかったわね。私の名前はロートブルク・エリザベスよ」
小姓は、あまりの事に絶句した。この苗字は王国の名前と同一であった。王家の一員である証拠でる。
「あわわわ……おっ、お許しを……」
小姓は慌てふためいて、いきなり平伏した。
「あーあ、俺、知らねー」
ルークはよそ見してつぶやいた。
「代償は高くつくわよ」
エリザベスがかなり強い口調で詰問する。
彼女が勝ち誇ったように腕を組んだ。
「ところで、城に仕官する気はなくて」
「いえ、そんな気は全くござ……」
「あら、白がお好みでしたか」
男にすべて言わせずに、エリザベスが話をついだ。
「いえそんなことは、お許しください……」
「では、城に同行していただけますか」
「わっ、わかりました」
うな垂れるようにして、男は同意した。
「にいちゃん、仲良くしような」
エリックが肩を叩きながら、慰めていた。
彼は何がなんだか分からぬ間に、仕官することが決まってしまっていた。まさに狐につままれているような状態であった。
小姓が見込まれたのは、状況に応じて相手の求めるものを臨機応変に出せる心遣いに感心してのことであった。
最初エリザベス達はのどが渇いていたため、一気にのどを癒せるように、ぬるめのお茶を多めに用意した。次は落ち着いたのでお茶を楽しめるように、熱いお茶を少量出してきたのであった。なによりも相手の状況をすばやく把握したその洞察力が見込まれたのであった。
この小姓が、後に大宰相と言われる人物である。