助けたのは誰?
こんにちは、SodaKunです。
普通の高校生が秘密を持つ話を書いてます。
読んでもらえると嬉しいです!
羽が震えている。音が強すぎて、耳が耐えられない。その音のせいで頭がくらくらする。なぜ、耳鳴りがしているんだ? 耳が……!
「な、何が起きてるんだ!?」
俺はその音から身を守るように、両手で耳を塞いだ。怪物がこちらに向かって飛んでくる。何だ、あれは!?巨大なハエ!?
……いや、違う。言葉で表せない。この感覚……。なぜ世界が揺れて、視界がぼやけるんだ?胸が締めつけられるように痛い。こいつは、この世界の存在じゃない。
怖い。恐ろしい。どうすればいい?俺に、何ができる?
足元がふらつく。
脚に力が入らない。
もう、立っていられない。
――音が、消えた。
耳鳴りすら聞こえない。
心臓の鼓動だけが速くなり、俺は地面に倒れ込む。
闇。何も感じない。見えない。聞こえない。味もしない。匂いもしない。まるで……死んだみたいだ。
「ふふ……ええタイミングで通りかかったわ」
声がする。
少しずつ聴覚が戻ってくるが、姿は見えない。
「かわいそうになぁ。わしがほんの一瞬でも遅れとったら、あいつは次の餌食になっとったやろ。助けてやったんやけん、わしに感謝せぇよ」
その声は、柔らかく、滑らかだった。冷たいが、刺すような冷たさではない。混乱する。間違いない――女の声だ。
ゆっくりと……再び耳が機能しなくなる。今度は、身体ら動かない。闇だけに包まれ、何もない。思考が途切れた。いつ、考えることをやめたのかも分からない……。
~午後8時~
……落ち着いている。心地いい。ゆっくりと目を開けようとする。眩しい光が顔に差し込んだ。
「ん……う、うん……なに……?」
目を開けようとするが、なぜか言うことを聞かない。数分間、無理やり開け続けていると、ぼやけていた視界が少しずつはっきりしてくる。倒れる前、最後に見た人物――
目の前にいるのは、大人の男だった。
背が高く、筋肉質。顔には少しだけ無精ひげ。漆黒の髪と、怒りを宿した茶色の瞳が俺を見下ろしている。
「ようやく目を覚ましたか、若造!」
「うーん……どこかで見た顔な気がするんだけど……思い出せない」
彼の顔が、ぱっと大きな笑顔に変わった。瞳の怒りが消える。
「どこでだ!? どこだ!? 俺、有名人か? 俳優に見えるか!?」
「いや……ただの視野が狭そうな人に見える」
その笑顔が一瞬で消えた。
「起きろ!! このガキ!!」
耳元で怒鳴られ、俺は反射的にベッドから飛び起きた。その瞬間、現実が容赦なく叩きつけられる。
「と、と……父さん!!」
驚きの声を上げた次の瞬間、拳が頭に落ちる。
「いてっ!!」
「黙れ!! 自分が何をしたか分かっているのか!?」
痛む頭を押さえる。
「え? 何のことだよ……?」
父は目を閉じ、心底苛立った表情を浮かべた。
「朝っぱらから道の真ん中で倒れていただと!? 近所の評判がどうなるか分かっているのか!! 今も噂になっているんだ! お前は——」
「ゆうき!!」
突然、誰かが俺に飛びついた。
「大丈夫!? ゆうき!」
「姉ちゃん!」
「本当によかった……心配したのよ」
姉の坂本あゆみだ。父よりも母に似ている。記憶の中と変わらない、優しい笑顔。
「生きているだけ感謝しなさいよ。あんたの評判は地に落ちるし、社会に“金髪の不良”だって証明したようなものね」
鋭い女性の声が突き刺さる。
かすみ。もう一人の姉だ。歩美が穏やかで優しいのに対して、霞は口が悪く、舌が鋭い。同じ双子なのに、正反対だ。
――ふと、疑問が浮かぶ。誰が、俺をここまで連れてきた?俺はあゆみの腕から離れ、立ち上がった。
「気をつけなさい、ゆうちゃん!」
俺の視線はかすみに向く。
「どういう意味だ?」
「“どういう意味”って?」
「俺を家まで運んだのは誰だ? あんたたちが、道で倒れてた俺を連れて帰ったとは思えない」
「確かに、私たちがあなたを連れてきたわけではありません。あなたをここへ連れ戻したのはある女性でした。彼女は、あなたが路上で寝ていたと私たちに話しました。最初はお酒を飲み始めたのかと思いましたが、あなたの体にも口にも酒の臭いはありませんでした」
「女の子……!? 今、女の子って言った!?」
目が見開かれる.。倒れる直前、あの巨大な虫と遭遇した時――
確かに、女の声を聞いた。あの声の主なら、答えを知っているかもしれない。
「大丈夫?」
「名前は言ってた? 何か、特徴は覚えてない?」
かすみは首を横に振った。
あゆみが立ち上がり、口を開く。
「あなたの学校の子じゃないわ。あんな子、見たことないもの。綺麗な子だった。私はあなたのクラスメイト、全員知ってるけど……見覚えがなかった」
「そっか……。大丈夫だよ、姉ちゃん」
俺は小さく微笑んで、歩美を安心させた。
「元気出してもらおうと思って、あなたの好きな料理を作ったのよ! 今から準備するわね」
「いいよ。腹減ってない」
「何だって?十時間もクマみたいに眠っていたじゃないか。お茶だけ持って家を出ただけだろう」
その言葉を無視する。
「今はいい。一人になりたい」
今度は父が怒鳴った。
「この野郎は私たちの名を汚すだろう。もしあなたの母さんがまだ生きていたら、息子が不良になったのを見てがっかりしただろう」
その言葉も無視し、俺はリビングを出て階段を上る。
――母さん。あれから、もう十年が経つ。
私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇
いつも俺のぶっ飛んだアイデアに付き合ってくれる親友・ブルートに感謝。




