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あの夜、僕は“普通”を失った。ヘブンズ・ウェイ!  作者: SodaKun


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19/30

ヘブンズ・ウェイ

桜散り

古き寺には

鐘ひびく

千年の夢

心に宿る

~ゆうき視点~



アレクサンドロヴナは、そっと俺の肩を叩いた。


「そんなに心配することはないわ。あなたはまだ子供よ」

「彼女の言う通りです、坂本くん! あんな連中を恐れる必要はありません」


俺は彼を見上げた。

頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。

自分が無力だったせいで、誰かに助けられるのはこれで二度目だ。最初はレイカ、そして今はこの二人。


「俺は……弱い」

「は?」

「俺は何をすればいいのか分からない。人生の流れに、ただ流されているだけだ。俺は弱い! 大切な人を守れなかった! みんな失ったんだ」


涙がこぼれ落ちる。

かすみとあゆみ。俺は兄として失格だった。息子としても失格だった。愛していた人たちを守れなかった。母さん。あゆみ。かすみ。


「俺は……失敗作だ」


正宗は微笑んだ。


「違いますよ。失敗なんて、この世界には存在しません」

「え?」

「誰もが勝者になれるわけではない。だが、誰もが敗者でもない。敗者がいなければ、勝者も存在しないのです」


その時、アレクサンドロヴナが正宗のそばに寄り、彼の手を握った。……胸に直撃だ。俺は独り身なのに。彼女は俺を見て、静かに言った。


「薔薇より美しく、百合より純粋でありなさい」


その言葉を残し、二人の姿は消えた。


「……帰るか」


俺は小さく呟いた。

どうして俺は、こんな状況でもこんなに落ち着いていられるんだろう。短時間で、二度も死にかけたのに。

理解できない。

子供の頃から霊を見る力はあったが、こんな厄介事に巻き込まれたことは一度もなかった。俺は家へ向かって歩き始めた。どこかに身を隠した方がいいかもしれない。


「かすみ……」


答えは、まだ闇の中だ。かすみの霊はどうなったのか。

俺に取り憑いていた怨霊はどうなったのか。レイカは説明すると言っていたが、むしろ謎は増えるばかりだ。俺は疑問ばかり思いつく。

だが、答えは一つもない。そもそも、この世界で何が起きているのかすら分からない。それに、なぜ俺は狙われている?なぜ正宗は、俺の名前が陰陽師の家系では誰もが知っていると言ったんだ?俺は特別なのか?それとも……俺の"名前"が特別なのか?


「考えすぎだな。レイカが全部説明してくれるって言ったじゃないか。なんで俺がこんなに焦ってるんだ?」


気づけば、家に着いていた。

ドアを開ける。


「ただいま――」


言葉が途中で止まった。……なんで俺はこんなことを言ったんだ?家で待っている人なんて、もう誰もいないのに。


「なんて残酷な運命だ。仏もずいぶん意地が悪い」

「おかえりなさい」


冷たくて、柔らかい声が耳に響いた。

その声は、俺が聞いた中で一番美しい声だった。

レイカが玄関に立っていた。両手を差し出している。まるで何かを受け取るつもりのように。


「渡して」

「え?」

「頼んだカリーヴルスト」

「カ……カリーヴルスト?!」


俺は目を見開いた。

自分の手を見る。

……ない。カリーヴルストが、ない。


「どこ?」


レイカが問い詰める。思い出した。正宗から受け取るのを忘れていた。


「あっ……やばい! 忘れた!」

「は? じゃあ何してたの? チンピラみたいに街をぶらついてたの?」

「違う! それどころじゃなかったんだ! 俺、指名手配されてるんだぞ! 賞金までかけられてる!」

「賞金? 指名手配?」


彼女の表情が変わった。


「賞金稼ぎ?」

「たぶん。ハゲの男が俺を殺そうとしてきた」


レイカの顔が険しくなる。


「……それで、どうして生きてるの? 私は他の陰陽師の気配を感じなかった」

「えっと……レストランの店主と、そのロシア人の彼女が助けてくれた」


レイカの目が大きく見開かれる。


「逃げないといけないわ、坂本ゆうき。ここにいるのは危険よ。一秒一秒が命取りになる」


レイカが焦っているのを見るのは初めてだ。


「必要な物を全部持ってきて。貴重品も」

「ちょっと待てよ。何が起きてるんだ? 正宗なら敵を倒せるだろ? 彼に助けてもらえば――」


レイカの体が、ぴたりと止まった。

まるで人形のように。


「……何て言った?」

「名前?」

「そう。その男の名前」

「正宗」


レイカは深く息を吸った。

そして目が、いつもの冷たい目に戻った。


「……もう時間がないわ。手を見せて」


俺は手を差し出した。

彼女はすぐに袖をまくり上げた。

「なっ……!?」

「そんな……!」

俺の右腕に、文字が書かれていた。見たことのない言語だ。открыть телевизор


「何だこれ?」

「ロシア語よ。私たちへの言付け」


彼女は俺の手を離した。


「テレビはどこ?」

「リビング」


玄関から少し進んで、左側だ。俺たちはリビングへ向かった。

レイカはすぐにテレビをつける。便りが流れていた。


「何だ? 総理大臣の会見?」


画面には、日本の総理大臣――高市早苗が映っていた。日本史上、初の女性総理だ。


天道(ヘブンズ・ウェイ)


記者たちが一斉に写真を撮る。一人の記者が手を挙げた。


「高市総理。日本史上初の女性総理として、『天道(ヘブンズ・ウェイ)』についてもう一度説明していただけますか? 党に影響はないのでしょうか?」


高市は答えた。


「『天道(ヘブンズ・ウェイ)』とは、我々の党が提案した新しい制度です。若い世代に平等な機会を与え、日本の若者の自殺率を下げるためのものです」


会場から拍手が起こる。日本では自殺が深刻な問題だからだ。

「新しい世代に機会を与えます。お金を稼ぐ機会を」


彼女は続けた。


「『天道(ヘブンズ・ウェイ)』とは――競争です。日本全国を旅し、本当の日本文化を学ぶ大会です」

私の作品を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。皆様に楽しんでいただければ幸いです。初めてですが!SodaKun Out!◇

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