表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/13

第12話 間違いの果てで、また君と 〈後半〉

 王都の夜。

 風が塔の鐘を鳴らし、アヴァロンの街灯が淡く揺れていた。

 戦の痕跡はほとんど消えたが、空にはまだ、あの日の光がかすかに残っている。


 「……やっと静かになったな」

 俺が呟くと、アビスが笑う。

 「静けさは嫌いですか?」

 「落ち着くけど、物足りないな」

 「主殿がそう言うと思って、これを」


 アビスが手にしたのは、黒と金に輝く羽根。

 あの神々との戦いのあと、消えたはずの“共鳴の羽”。

 「どこで……」

 「風が運んできました。まるで、まだ試練が続くと告げるように」


 俺は羽根を受け取り、夜空を見上げた。

 「そうか。――まだ終わってないのかもしれないな」

 「ええ。世界は、あなたが作った“間違い”の上に立っています」


 セリアが塔の扉を開けて出てくる。

 「二人とも、また夜更かし?」

 「たぶん、もう眠れない体質になった」

 「なら、旅の支度をしておくべきね」


 「旅?」

 「あなたの“間違い”は、この国だけじゃ終わらない。

  外の大陸でも、同じように苦しんでる人がいるはず。

  ――それを放っておける人じゃないでしょう?」


 セリアの微笑みが、夜空の光よりも柔らかかった。

 「付き合うのか?」

 「もちろん。王女としてじゃなく、仲間として」


 アビスが一歩下がって頭を下げた。

 「では、主殿。次の間違いへの準備は整いました」


 俺は羽根を指先で回し、笑った。

 「いいな、それ。次の間違いって響きが気に入った」


 遠くで朝焼けが空を染め始める。

 人々の笑い声がまた少しずつ増えていく。

 誰もがまだ不器用で、少しずつ間違えながら生きていた。


 セリアが俺の隣に立ち、手を伸ばす。

 「行こう、レオ。

  次の“間違い”が、また誰かを救うかもしれないから」


 「そうだな」

 俺は頷き、羽根を風に放った。

 黒と金の光がひとつに混ざり、空へ舞い上がる。


 ――間違いの果てにあるのは、終わりじゃない。

 また、新しい選択の始まりだ。


 アヴァロンの鐘が鳴り、朝が訪れる。

 俺たちは再び歩き出した。


(第一部・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ