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第12話 間違いの果てで、また君と 〈前半〉

 戦いが終わって、どれほどの時が経っただろう。

 空はもう焦げついていない。

 風は柔らかく、光はどこまでも穏やかだった。


 アヴァロンの街では、人と魔物が並んで市を歩いている。

 黒狼の子供が人間の少年にじゃれつき、

 露店の老婆が精霊に針仕事を教えていた。


 その光景を眺めながら、俺は塔の上で椅子に腰かけていた。

 「……夢みたいだな」

 アビスが人の姿で立ち、いつものようにワインを注ぐ。

 「夢ではありません。あなたが“間違え続けた”結果です」

 「そう聞くと、少し救われる」


 セリアが塔の階段を上がってくる。

 薄青のドレス、風に揺れる髪。

 彼女の瞳には、もう迷いがなかった。


 「レオ。神々の光が完全に消えたわ」

 「……ああ」

 「あなたが新しい秩序を作ったのよ」

 「違う。秩序を“分けた”だけだ」


 アビスが微笑む。

 「正しさを分け合う世界。皮肉ですね」

 「皮肉も間違いの一部だ」


 セリアが俺の隣に座る。

 「ねえ、ひとつ聞いていい?」

 「なんだ」

 「これから、どこへ行くの?」

 俺は空を見上げる。

 黒と金の羽が、まだどこかで光っている気がした。


 「また、間違いに行く」

 「……また?」

 「ああ。俺の“間違い”が、まだ誰かを救うかもしれない」


 セリアは笑い、手を握った。

 「そのときは、わたしも一緒に間違うわ」

 「覚悟あるのか?」

 「あなたと出会ってから、覚悟ばかりしてるもの」


 風が吹き抜ける。

 街の鐘が鳴り、人々の笑い声が響く。

 あの戦いの跡が嘘のように、世界は静かだった。

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