第10話 神の代理戦争、開幕
空が再び裂けた。
白金の雷が王都の上空を貫き、天から巨像のような影が降りてくる。
〈第二試練――戦によって、己の“間違い”を証明せよ〉
神の声が響いた瞬間、世界が裏返る。
大地が海に、海が空に変わり、
浮遊する戦場――“神界の盤上”が姿を現した。
アビスが唸る。
「主殿、これは……次元戦です」
「つまり、勝てば話が早いってことか」
俺は剣を抜いた。
「なら――間違えて勝つ」
盤上の対岸に、光の軍勢が出現する。
その先頭には、白い鎧をまとう天使が立っていた。
「レオ・クロード。あなたの存在は秩序への反逆です」
「知ってるよ。だから面白いんだ」
アビスが黒い炎を放つ。
光と闇が衝突し、世界が歪んだ。
だがその中心で、俺はひとつの“命令”を放った。
「――戦うな。生きろ」
次の瞬間、魔獣たちは光の軍勢を包み込み、
互いの力を共有しはじめる。
戦場が、調和に変わっていった。
神々の声がざわめく。
〈……戦わずして、戦を制す?〉
「間違いの使い方は、無限だ」
そして――
天空の玉座で、主神が静かに立ち上がった。
「面白い。ならば、我が直々に“最終試練”を与えよう」
雷鳴とともに、空に巨大な剣が出現する。
〈最終試練――“神殺し”を恐れぬ心〉
俺は笑って、剣を構えた。
「ようやく話が早い。
神でも、間違いながら生きるんなら、仲良くできるだろ」
アビスが静かに笑う。
「主殿、あなたの“間違い”はもはや哲学です」
「哲学でも戦うさ――それが俺だ」