百合園
書きたいことだけ書きました
ベルナージュ家は自他共に、国からも認められている公爵家だ。多くの騎士や魔術師を輩出している名門貴族でもある。
そんなベルナージュ家に美しい双子の娘が生まれた。
白銀の髪に濡羽色の瞳を持ったアリス・エラ・ベルナージュ。珍しい複数属性魔法を操り、5歳の時点で上位魔法まで習得した少女。
漆黒の髪に月白色の瞳を持ったイリス・ベラ・ベルナージュ。風属性の魔力を持つものの、魔力放出がうまくできなかったがそれを利用し体内にて循環、活性させる身体強化魔法を5歳で確立させた少女。
アリスは魔法が得意であるものの体を動かすことは不得手、イリスは魔法が不得手ではあるものの身体能力には魔法抜きで目を見張るものがあった。お互いに苦手なものを補い合える理想の双子だった。
もちろん、双子でなければ…という声がなかったわけではないが、そんな例え話を持ち出したところで意味はない。互いに互いがいれば2人はそれでよかった。
そんな2人合わせて神童と呼ばれる2人はベルナージュの白百合と黒百合と呼ばれた────のだが
「ああああああ!!!もう!!!!本当いや!!!迷惑!!!!」
ばふん、と音を立てて白百合と呼ばれる片割れアリス・エラ・ベルナージュはベッドへと飛び込んできた。そのベッドもとい部屋の主であるイリス・ベラ・ベルナージュは「またか」と思いながら、アリスの頭を撫でた。
「その魅了魔法は本当に厄介よね。特に制御が苦手なあなたには」
「うるさーい!!!どうせ、全力ブッパが得意なだけで細かい操作はできませんよーだ!!!そういうお姉ちゃんこそ、全力ブッパできないじゃん!!倒れるじゃん!!!!やらないでよね!!!!」
「そんなこともあったわね」
魔力の放出は魔力孔と呼ばれる器官から行われる。それがイリスはあまりにも狭く小さかったため、全力で放出がまったくできない。一度しようとしたことがあるが、穴から穴から血が吹き出して妹を卒倒させた前科がある。いや、だってイラついてたんだもん。
まあ私の話はいいのだ。何故こんなにアリスが腹を立てているのか。それは彼女の魔力属性に問題がある。
基本的に人は1種類の魔法しか扱えない。稀に複数属性の魔力を持ち生まれることがあるのだが、それがアリスだ。彼女は炎属性と闇属性の魔力を併せ持つ。なんなら闇属性だって珍しいのでまさに奇跡の産物。流石だ片割れ。
そしてアリスは魔力量が多い。カップから常に溢れ続ける様な魔力を常に垂れ流すしかない状態である。制御が苦手なので適度に放出する、といったことがほぼできない。というよりもしようとしたら、大量に血を吐いて入院した。密閉空間に水をドバドバ入れすぎて内側から破裂した状態だった。
これが大前提である。魔力自体に害はないのだが、彼女の場合は闇属性の中でも扱いの難しいものが該当していた。
一瞬で誰が相手であっても惹きつける『魅了効果』である。
しかも、アリスの見目は身内贔屓無しにしたって良すぎる。そんな少女が人混みの中を歩いてたなら。もう移動どころでない。下手したら人に揉まれて圧死である。笑いどころではない。
これに関してはすでに王家や自分たちが通う学園などに伝達済み。対策は練られてはいるものの、全て不発となっている。
そんななか、双子の片割れであるイリスにはまったくの効果も現れなく、唯一アリスと話す際に平常心でいられていた。その故に、アリスがイリスに心を許し懐くのは当然の可決────なのだが、
それを面白く思わない魅了コース真っ只中の老若男女がいる。なんなら両親がそれである。これでもか、というほどにイリスとアリスを区別し差別した。イリスは「絶対物理的に殺す」と思いながら笑顔を貼り付け、アリスは「それでも親なの?!」と反抗しながら、結局は両親を身限り「これ以上、イリスと差別するならいらない」と魅了コース真っ只中の両親には致命傷な一言を突きつけた結果、平和となった。
学園でも問題が起きた。
学園の同学年に王太子である第一王子が執拗にアリスに迫ったのである。こちらも魅了コース真っ只中。公私混同とかいうレベルではなく、本当に気持ち悪いナンパ師レベルにアリスに絡み、場合によっては身分すら持ち出す。要はクソ行動により、アリスはキレた。相手の方が身分は上なことはわかっていたが、そこにセクハラ行為などが加わり、エスカレートしていったのだ。
「黒百合なんて、君のおこぼれでもらった称号だろ?アリスに比べたらあの女は道端の小石、私たちがいま踏んでいる土以下だ!」
「二度とか変わるなクソやろう」
魅了コース真っ只中の王太子からすると死刑宣告に近い言葉だった。両親の場合ならここで終わり、だったのだが王太子は違った。
王太子の魔力は炎だった。
誰もいない空き教室に無理矢理アリスを連れ込み、焼いたのである。おまえがいるからアリスは自分に振り向かないのだと。
これは大々的な事件となり、王家と公爵家内で話は進められていった。しかし、証拠不十分として片付けられかけていた。その間にも王太子はアリスに同情し近付こうとしていた。しかし、アリスは一切靡かずイリスのことばかりで王太子は墓穴を掘った。
「君が私を拒むのはイリスがいるからだろう?!でも、あの火傷じゃ嫁の貰い手もいない!!君がアレに構う必要性なんてない!!!せっかく、私が手伝ってあげたのに!!」
その言葉にアリスは自らの意思で魅了魔法を使った。王太子を屈服させ自白させたのち、罪を犯したのに裁かないという王宮に乗り込み魔法をわざと暴発させた。あとは簡単だった。
魅了漬けとなった王宮はアリスに掌握された。報復だった。
顔の右半分が焼け爛れ、右肩から指の先まで焼けて動かなくなり、歩くことすらままならなくなってしまった愛しい双子の片割れ。イリスに手を出されなければアリスは基本的に従順で愛らしい優秀な魔術師だった。
「馬鹿な人たち」
都市から追放される王族を遠巻きに見ながらアリスは呟く。既に王宮があるこの都市はアリスの手の中だった。
それからアリスはイリスと共にいるため手を尽くした。次の王も何もしない様に傀儡にして、王宮の一等良い部屋をイリスとアリスの部屋とした。まあ、定期的に魅了漬けにしなければ徐々に魅了溶けていくこともわかっていたので、定期的に外に出なければいけないのは難点ではあるのだが。
────そして今、2人は幸せに鳥籠の中で暮らしている。




