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いつか、生きる日のために

「ぜーんぶ喋ってるし。」


ジェニーは、檻のある部屋をモニターで監視しながらため息をついていた。

可能な限り、知られずに話したい。

きっと彼女(あいうえ)は優しいだろうから、気を遣われながら会話はしたくない。

なんなら、あの過去を無かったことに……


…と、そこまで考えてそれは出来ないと結論を出し直す。

ここまできて、やっぱり何も無かったです。とはいかない。


「とりあえず、やることやらなきゃ」


独り呟きながら、ジェニーはモニターの電源を落とす。


「今度こそ…今回こそ、失敗しないからね……」


部屋の奥にある棺に語りかけながら、ジェニーは暗い闇の中に消えていった。




そうしている間も、愛上と檻の中の人々との悶着は続いている。


「どうしてそんなに自分勝手で生きていけますの!? もう少し周りを鑑みたら如何かと!」


「周りを鑑みろってんならアイツだってそうだろうが!!俺らを閉じ込めて生き地獄にすることの何処に肯定できる要素があるんだよ!?」


「そうだそうだ!!これは一方的な復讐であって大義も正義もないじゃないか!」


「俺たちがここに閉じ込められることに理由があるなら述べてみろー!!」


檻の中の人々は口々に騒ぎ出す。

実際、この状況を正当であるかと言われたらそれは違うだろうと愛上も思っている。

無限にも思える命を授け、ただ『生き続ける』というだけの生活を強要する。

これが相応しい罰なのかと言われたらNOだろう。

とはいえ、それを愛上(じぶん)が解放してしまうのも違う。

何をするにも『こうではない』という意見が生まれてしまう、八方塞がりに近い状況を感じていた。

だが、ここで愛上の頭の中に単純な疑問が浮かぶ。


「……というか。」


「ん?なんだよ」


「貴方達、こうして閉じ込められてるのっておかしくありませんこと?」


愛上の想像を超える頭脳を持つであろうここの人材が、『ただ捕まり続ける』なんてことがあるだろうか。

抵抗する体力は無いのかもしれない。しかし、頭脳と知識は人一倍あるはず。人員もある。

何もしていない、というのは不自然に感じ始めた。


「貴方達が天才であることは間違いないでしょう。そしてジェニーもそれを認めているはず。それなのにこんなふうに会話できる状態で野放しにしておくなんて…普通は個室で隔離するものではありませんこと?」


「……嬢ちゃん、無駄に勘がいいな」


嘉数が檻の中から手を出してくる。


「ひっ!?」


その手は檻を出ると共にぐっ、とこちらに向かって伸びてくる。

ゴムか何かのように気色悪い伸び方だ。


「いいからこれを耳につけろ。さっさとしろ」


嘉数の手の中にあるのはおよそ檻の中で許可されないであろう科学製品の数々。

『これ』、と指し示されたのはイヤホンだった。


「俺たちはこれで会話してる。嬢ちゃんも知ったからには共犯だからな」


「……何する気ですの?」


「何も。俺たちはこの世界を続けていくしかないんだからな。」


嘉数をはじめ、騒いでいた人たちもさっきまでと明らかに人が違っている。


「「「俺たちは、永遠の贖罪に身を置くと決めたんだ」」」


イヤホンから聞こえる声は多重奏のように重なりながら、不協和音を愛上の耳に届けた。


「何を言ってますの?さっきまでと話が違いすぎますわ!」


「あの話は本当だ。あくまで『この世界では』だけどな。」


「もっと正確に言うと『この周期のこの世界では』かな。」


「さらに言うと『元々とは歴史が違うから世界の作りが異なっていく』んだよね」


各々が別々の事を並び立てるせいで愛上の脳に情報が入ってこない。


人が喋っているようでそうでないようにも聞こえてくる、気持ちの悪い響き。

手が伸びてきたことといい、ここの人間たちは何かおかしい。

ここまで異様な光景を見せつけられているにも関わらず、一切騒ぎ立てないこの世界の原住民たちもどこか外れた価値観を持っているように感じられる。


「何が言いたいのか、一人に絞って話してくれませんこと?わたくしはまだ、聖徳太子になるには少々経験不足のようですの。」


「じゃあここは俺だろ」


そう言って嘉数が語りだす。


「おおかた予想はついてると思うが、この世界は普通の世界じゃない。俺たちが、そしてジェニーが好き勝手に弄りまくった結果、もう取り返しがつかなくなってる。そもそもこの世界は元々ただの大自然の広がる世界。文明を手にする以前の人類が発生したくらいの時代のはずだったんだ。」


愛上は大変困っていた。もう、この前提の時点で頭が痛くなりそうだったのだ。


「ジェニーがここに来た理由は『誰とも会わないため』だった。俺たちはそれを追ってここまで来たってわけ。誰にも会わずにただ一人こんな世界で死のうとしてたんだぞ?あんまりじゃないか、つってな。」


嘉数の話は愛上に待ったをかける暇も与えずに進んでいく。


「あいつが一人で死のうとしている。それを誰よりも望まないのはイライザだったろう。そんなことが分からないあいつじゃないはずなんだが。まあ、俺たちはそんなあいつの生きる意味を作らなきゃならなかった。」


「生きる意味を、作る?」


「ああ。おこがましいことだとわかってる。それでも、どんな理由でもいい。まずは生きてなきゃ話にならないんだ。最初は『俺たちに協力してくれ』みたいな感じで言ったんだよ。また一緒に研究しよう、この世界には分からないことも、その答えもたくさんある。ってな」


話の急展開ぶりに愛上は置いて行かれそうになりながら、懸命に頭を回す。


「研究は驚くほどスムーズに進んだ。ジェニーは本当に、天才だったんだ。こんな世界にもいち早く適応して、どんどん研究を前に進めていった。」


そう語りながら、嘉数はおもむろに服を脱ぐ。


「なにしてるんです…の……」


悲鳴を上げそうになった愛上の声は息をのむ音に取って代わる。


「貴方、それは………」


はだけた服の内側には、丁度心臓部分に穴が空いた身体があった。


「心臓が止まることを『死』と定義するのであれば。それを起こさない体になればそれは不死といえるのではないか。というのがジェニーの出した俺たちへの回答だった。」

 

「なんですの、その結論は……」


左胸に空いた穴はその向こう側を覗けるほどに大きく、普通ならばとっくに絶命してしまっているであろうことは想像に難くない。

この大きな穴がありながら、一滴の血も滴っていないことが異常性の何よりの証拠だった。


「現代の汚染された空気が原因だったのか、この時代の何かが原因なのかは定かではないが、この時代においては当たり前のように不死の研究は成功した。そして、俺たちは全員こうなっている。」


「『なぜそうなるか』すら分からないその手術を、全員が受けたんですの?何のために……」


「決まってる。あいつを生かすためだ。」


愛上の問いに間髪入れずに嘉数が答える。


「俺たちは、ジェニーの大事な人を救えなかった。彼女の意思まで亡くすわけにはいかないんだ。」


強い意志を感じる返事。

その場の誰もその答えに口を挟まない状況。

目の前に見せられた異常な身体。

この世界が『異世界』であることを再認識しながら、愛上は自分の成すべきことを考える。


「……わたくしは、この世界から皆様を連れ戻しに来ました。それは変わりません。ですが、それと同時に。」


ふう、と一呼吸おいて続きを話す。

下手な言葉で修飾する意味はない。明確に、一言でいい。


「共に、ジェニー(あのひと)を救いますわよ。」


こんな世界で、死を求めて生きるなんてとんでもない。

まずはこの世界を侵略する。

愛上は、そう心に決め直した。

全話から引き続き遅くなり申した。

インフルとかもあったけど結局話がまとまりきらなかったんですごめんなさい。

いやもう、キャラは勝手に動いてくれるから楽なんですけどね。それを文に起こす力が弱くなってるのを実感してます。

全話でも書いたけどその場のノリと勢いで書いてる部分が過半数なので、そういうもんだと思ってノリと勢いで楽しんでくれると嬉しいです!

伏線とか気付かれても嫌だからその場のノリで読んでくれ!バレてる伏線回収しにいくの恥ずかしいんだ!!

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