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原始時代のチー牛  作者: akira
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裏切られるチー牛

第3章: 歌う山と禁断の領域


昨日の狩りで比呂保保が起こしたミスについて話すために比呂保保は狩りのリーダー、津流に呼び出された。


津流:「この原始の時代で一番の死因がなんだかわかるか? 」


比呂保保:「はい、、常識です、、」



津流「ああそうだな 猛獣に殺されることでも食べ物が手に入らないことでもない。仲間同士部族内での間引きだ。


俺たちは過酷な世界で暮らしてる。一歩間違えば死ぬ。獲物が見つからず食べ物を蓄えられなければ冬を越せない。そんな中で集団の輪を乱すやつ、空気を読めないやつ、嫌われてるやつは間引かれちまうんだ。」


比呂保保は下を向いたまま頷いた。



「お前は集団において今間引かれる対象になりかけている。俺は集団を率いる中でバランスを取らないといけない。だが簡単に人を間引くような集団はそれはそれで信頼を損なうものだ。そこでお前に試練を与えようと思う。ここから西に40キロほどのところにミポポ山がある。ここは別名歌う山と言われててな、みんな怖がって誰も近づかない。だがこの近くは薬の素材になる薬草が生えてる。なぜかここでだけ生えるんだ。一旦これを取ってみんなの役に立て。それでみんなを説得してお前のいい噂を流して溜飲を下げてやる。俺も一応お前の親には世話になったからな。」


比呂保保は黙っていた。


「当然道中で猛獣に襲われる心配もある。狩りの基本編成で三人とお前で取りに行け。それで今回はうまく流してやる。」


比呂保保は無言で頷いて、津流の部屋を出ていった。

承諾はしたものの内心では不満と恐れが渦巻いていた。


比呂保保:「なんで僕がこんなヤバいことしなきゃならないんだろ…。他にもっと向いてる奴らいるのに、何でいつも僕なんだよ。」


彼は洞窟内を歩きながら火津流の言葉を思い返し、心の中で不平をつぶやいた。


比呂保保:「僕が狩りで失敗したのも、アイツらがちゃんとサポートしてくれなかったからだ。それに、いつも僕だけがこんな危険な仕事をさせられて…。」


比呂保保の心は葛藤でいっぱいだった。彼は部族の中での自分の立場を考え、歌う山への旅に出ることをしぶしぶ決意した。


比呂保保:「しょうがないか…。行くしかないんだろうな。でも、何かあったら、絶対僕のせいじゃないからな!」


彼は不安と怒りを抱えながら、歌う山への道を歩き始めた。彼にとってこの旅は、ただの試練ではなく、自分自身と向き合う旅にもなることを、まだ彼は知らなかった。



歌う山への道は険しかった。比呂保保はいじめっ子たちに取り囲まれながら、不安定な足取りで歩き続けた。彼らは彼をからかいながら進んでいた。


いじめっ子1:「おい僕、歌う山って聞いたことあるか? そこは呪われてるんだってよ。」


比呂保保:「…聞いてないし、興味もないよ。」


いじめっ子2:「怖がってるんだろ? 僕ちゃんはいつもそうだもんな。」


比呂保保はただ黙って歩き続けた。彼の心は葛藤と恐怖でいっぱいだった。彼らは途中、奇妙な音に驚いたり、不気味な影に怯えたりしながらも山を登っていった。


いじめっ子3:「なあ、本当にここ大丈夫か? なんか変な気配がするぜ。」


比呂保保:「知らないよ。でも、ここまで来たんだから戻れないよね。」





歌う山への道中、比呂保保はいじめっ子たちとの間に緊張が走っていた。


比呂保保:「お前ら、気づいてないのかよ。なんでこんな怪しいところに僕だけじゃなくてお前らも送り出されたのか。」


いじめっ子1:「何言ってんだよ、僕。ただの草取りじゃん。」


比呂保保:「いや、そうじゃない。お前らの素行の悪さを火津流が認識してるんだよ。僕ごと危ないところに送られてるんだって。」


いじめっ子たちは顔を見合わせ、不安げになった。彼らは比呂保保の言葉の意味を理解し始めていた。


いじめっ子2:「マジかよ…。じゃあ、俺たちもピンチってことか?」


比呂保保:「そういうこと。だから、くだらないことはやめて、ちゃんと協力しろよ。」



いじめっ子1:「ははっ、何を偉そうに。お前が言うなよ。」


比呂保保の言葉にもかかわらず、いじめっ子たちは彼の提案を受け入れなかった。彼らはむしろ反発し、比呂保保をからかうことをやめなかった。


いじめっ子2:「僕ちゃんが怖がってるだけじゃん。俺たちに指図するなよ。」


比呂保保は彼らの反応に苛立ちを感じつつも、何も言い返せなかった。彼はただ静かに歩き続けるしかなかった。


道中、彼らは奇怪な音に驚いたり、暗がりに潜む不気味な影に怯えたりしながらも、お互いに協力することはなかった。いじめっ子たちは相変わらず比呂保保を小馬鹿にし、彼を先頭に立たせて自分たちは後ろで安全を確保するような態度を取った。


いじめっ子3:「おい、僕。もっと早く歩けよ。お前が遅いんだよ。」


比呂保保:「…わかったよ。」


彼は不平を言いたくても、状況を考えて我慢した。そして、彼らは不気味な雰囲気を放つ石の前にたどり着いた。石は彼らに何かを語りかけるかのようにそこに静かに立っていた。



彼らが不気味な雰囲気を放つ石の前にたどり着くと、いじめっ子たちは急いで薬草を採取しようとした。


いじめっ子1:「さっさと草をとって帰ろうぜ。こんな場所、早く離れたいんだよ。」


しかし、彼らは突然身動きが取れなくなった。まるで石が彼らを引き止めているかのようだった。石は黒ずんだ表面に奇妙な紋様を浮かび上がらせ、まるで生きているかのようにそこに立っていた。


その時だった。地の底から響くような低い声が、全員の耳に飛び込んできた。

石:「若き者たちよ…。」


全員が息を止めた。誰も口を開いていないのに、声だけがはっきりと頭の中に響いてくる。


いじめっ子3:「お、おい! 今しゃべったの…誰だ!?」

比呂保保:「……石、だよな、これ。」

いじめっ子1:「ふざけんな! 石がしゃべるわけねぇだろ!」


だが声は止まらなかった。

石:「恐れと不和を抱えたままでは、この地を越えることはできぬ。同胞よ、チー牛比呂保保よ…お前の中に眠る強さを見つけよ。」


いじめっ子2:「な、なんだよこれ…。頭がおかしくなったのか? 俺、幻聴聞いてんのか?」

いじめっ子3:「やめろ! やめてくれ! こんなの気持ち悪い!」


比呂保保も混乱していた。

(石が…僕の名前を呼んだ…? 同胞?どういうことだよ、なんで僕なんだ。)


やがて声はぷつりと途絶え、重苦しい沈黙が戻った。石はただの岩のように動かず、何も言わなくなった。


いじめっ子1:「……気味悪ぃ。こんなの誰にも言えねぇぞ。」

いじめっ子2:「ああ、絶対笑われる。狂ったって思われるに決まってる。」


恐怖と混乱で、誰も石のことをまともに理解できなかった。ただ、全員が「ここで起きたことは普通じゃない」と思い知らされていた。



四人は驚きと恐怖で慌てふためいた感じでその場をあとにした。


いじめっ子1:「……なあ、やっぱおかしくねぇか? さっきの声、比呂保保の名前呼んでたよな。」

いじめっ子2:「俺も聞いた。部族に戻ったら“呪われてる”とか言い出すに決まってる。特に年寄り連中な!あいつら呪いに敏感だからな!ハハハ!」

いじめっ子3:「だったら、ここで比呂保保を置いていった方が楽じゃね?」


比呂保保:「は!?何言ってんだ!僕だってわけがわからないんだぞ!僕は何もしてない!」



いじめっ子1がニタニタしながら一歩近づき、いきなり比呂保保の頬を平手で軽く打った。

いじめっ子1:「破邪! 破邪!」

パァン! パァン!


いじめっ子2:「おい、呪い払いかよ! アハハ!」(笑いながら足を引っかける)

いじめっ子3:「いいぞいいぞ、もっと叩け! これで呪いも落ちるんじゃね?」


比呂保保:「や、やめろってば!」


恐怖から一旦解放されていつもの調子を取り戻してきた三人は、怯えがあったのもあってテンションが上がり暴力的なノリがエスカレートしていた。




いじめっ子1:「破邪!破邪!」(パァン!パァン!)

いじめっ子2:「ハハハ! 呪い払いだ!」

いじめっ子3:「ほら、呪いから救う儀式だ!たまに洞窟の爺さんとかがやってるやつw」


比呂保保:「や、やめろってば!」


笑い混じりの暴力が続く中、森の奥から低いうなり声が響いた。

――グルルル……。


全員が動きを止めた。


いじめっ子1:「……おい、今の聞こえたか?」

いじめっ子2:「やべぇ……猛獣だ!」

いじめっ子3:「くそっ、こっちに来るぞ!」


木々の間から現れたのは、巨大な牙をむき出しにした獣だった。

いじめっ子たちは慌てて比呂保保を突き飛ばした。


いじめっ子1:「先に行け、呪いの子!」

いじめっ子2:「こいつを囮にすりゃ助かるだろ!」


比呂保保は岩場に転がり、獣と自分の間に深い崖があるのに気づいた。

追いかけてくる獣に必死で逃げ出したが、足元の石につまずき、崖下へと転げ落ちていく。


比呂保保:「うわあああ――!」


断末魔の叫びがこだまし、やがて森は静寂を取り戻した。

崖下に消えた比呂保保の姿を、いじめっ子たちは息をひそめて見下ろした。


いじめっ子3:「……やっちまったな。」

いじめっ子1:「俺たちは知らねえ、猛獣に襲われるなんて珍しくもねぇさ。」

いじめっ子2:「ああ、部族に戻ればそれでいい。」


三人は互いに目をそらしながら、草を抱えて山を降りていった。





まともに訓練も狩りもしてこなかった猛獣に勝てるはずもなく力尽き、そして比呂保保はそのまま殺されてしまった。


比呂保保の意識は遠のいたと思ったが、どこかへ吸い寄せられていった。

声がきこえるほうへ流れていったのであった。


この緊迫した状況の中で、比呂保保は自らの真の強さに気づき始め、彼の運命は新たな局面を迎えようとしていた。

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