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原始時代のチー牛  作者: akira
2/22

さらに孤立するチー牛


昨晩の飲み会の翌日、部族にとって重要な狩りの日がやってきました。朝日が地平線を照らし始める中、部族の狩人たちは緊張と期待に満ち溢れていました。比呂保保もその中の一人でしたが、彼は他の狩人たちとは異なり、コミュニケーションが苦手で、部族内でもあまり信頼されていませんでした。


狩りの準備が進む中、比呂保保は静かに他の狩人たちの動きを観察しました。彼らは熟練した動作で矢や槍を準備し、各々が役割を果たす準備をしていました。比呂保保は自分に割り当てられた簡単な任務に集中しようとしましたが、心のどこかで他の狩人たちと同じようには行動できないことに対する劣等感を感じていました。普通にしているつもりなのに比呂保保はなぜか行動がワンテンポ違ったり、みんなが統一して向いている方向がある時に不思議といつも別の場所を見ていました。


狩りが始まると、部族のメンバーは慎重に森を進みました。木々が風に揺れる音と、小動物たちの足音が耳に入りますが、狩人たちはほとんど音を立てずに進んでいきました。比呂保保も必死に彼らについていきましたが、彼の動きは少し不器用で、時折小枝を踏んで音を立ててしまうことがありました。


ついに、部族の狩人たちは大きなマンモスを発見しました。彼らは一斉にその巨大な獣に近づき始めました。マンモスはまだ彼らの存在に気づいていないようで、静かに草を食べていました。狩人たちは風の向きを確認しながら、マンモスに気づかれないように近づいていきました。


比呂保保も他の狩人たちに従い、慎重に位置を取りました。彼は他の狩人たちと同じように行動しようとしましたが、彼らとは異なり、どこか緊張している様子でした。比呂保保は石槍を手に取り、他の狩人たちと同じタイミングで投げることを心に決めました。


しかし、狩りの最も重要な瞬間に、比呂保保は突然、独創的なアイデアを思いつきました。彼は他の狩人たちとは異なる行動を取り、予期せぬ方向からマンモスに近づこうとしました。この突飛な行動は、他の狩人たちには理解できず、彼らは一瞬動きを止めてしまいました。


その瞬間、マンモスは突然の動きに気づき、驚いて逃げ始めました。狩人たちは慌てて槍や矢を放ちましたが、すでに遅く、マンモスは森の奥深くへと逃げ去ってしまいました。比呂保保の行動が狩りの失敗を引き起こし、狩人たちはその場に立ち尽くすしかありませんでした。




マンモスに逃げられ部族のメンバーは比呂保保に対して怒りを爆発させました。彼らは比呂保保を取り囲み、激しい非難の言葉を浴びせました。「何を考えているんだ!」という声が彼に向けられました。比呂保保はただ黙って、彼らの言葉を受け止めるしかありませんでした。


「お前のせいで狩りが台無しになったんだ!」と一人の狩人が怒鳴りました。他のメンバーも同調し、「昨日の飲み会でも空気を読めずに、みんなの楽しい時間を台無しにしたよな!」と続けました。昨夜の出来事が再び蒸し返される形となり、比呂保保はさらに追い詰められていきました。


彼は自分の言動がどう受け取られるかを理解することができず、他のメンバーを不快にさせていました。その出来事が今、狩りの失敗と重なり、部族のメンバーの怒りをさらに煽ることになりました。


「昨日の夜からお前のことが気に入らなかった。まさか狩りでこんなことになるとはな」と別の狩人が吐き捨てるように言いました。比呂保保はその言葉に何も返すことができず、ただ無力感を感じていました。彼の行動は意図せずに部族のメンバーを苛立たせてしまっていたのです。


比呂保保はその場で頭を下げ、「ごめんなさい」と小さな声で謝罪しましたが、部族のメンバーの怒りは収まりませんでした。「お前の謝罪なんて聞きたくない!」という声が飛び交い、比呂保保はさらに孤立していきました。彼の立場は部族内で以前にも増して悪化し、彼はどう対処していいか分からず、ただ立ち尽くすしかなかったのです。


狩りの失敗の後、部族のメンバーからの非難が浴びせられる中、比呂保保は自己防衛のために必死になり、ますます卑屈で醜い言い訳をし始めました。


「でも、本当は他の人たちが僕の邪魔をしたんだ!」と比呂保保は声を震わせながら言いました。彼の言葉は、自分の非を認めることなく、他人を責めるものでした。「そんなわけないだろ!お前が勝手に動いたからこうなったんだ!」と部族のメンバーは怒りを露わにしました。


「みんながもっと僕を認めてくれていたら、こんなことにはならなかったはずだ…」と比呂保保は続けました。彼は自分が不当に扱われていると感じ、その結果としての行動を正当化しようとしていました。部族のメンバーは彼の自己憐憫に苛立ちを隠せませんでした。


「僕はいつも無視されて…だから、少しでも注目されようと思ったんだ」と比呂保保は言いましたが、その言葉は自己中心的で、彼の内面の醜さをさらけ出していました。部族のメンバーは彼の発言に対して、「自分のことしか考えていない。部族のことなんて何も考えていないんだな!」と厳しく非難しました。


比呂保保のこのような言い訳は、彼の負の面を強調し、部族内での彼の立場をさらに悪化させました。



狩りの失敗と比呂保保への怒りが高まる中、昨夜、皆を盛り上げようとコールをかけましたが、誰も反応しない冷たい空気が流れていたときに登場した 空気を読める男ハヤットが上手に場を和ませるために会話の中に入ってきました。


今回もハヤットが緊張を解消するために前に出ました。「みんな、落ち着こう。比呂保保のせいで狩りが失敗したわけじゃない。こういう時もあるさ。まだチャンスはある。」と彼は言いました。部族のメンバーはハヤットの言葉に耳を傾け始めました。「実は、あのマンモスの通り道に罠を仕掛けてあるんだ。あの方向にいったとすれば今頃は足止めをくらってるはず。逃げられる前に畳み掛けて、狩りを成功させよう!」とハヤットは続けました。


部族のメンバーはハヤットの言葉に活気づき、「さすがハヤットだ!」と称賛しました。彼の落ち着いた態度と的確な提案が、部族の士気を高めました。比呂保保はその場にいながらも、自分が完全に余計な存在であることを感じ、さらに落ち込みました。


ハヤットの導きにより、部族は再び狩りに出かけました。彼らはハヤットが仕掛けた罠の場所に向かい、確かにマンモスが罠にかかっているのを発見しました。狩人たちはすぐに行動を開始し、見事マンモスを仕留めることに成功しました。


狩りが成功すると、部族のメンバーは喜びで一つになりました。彼らはハヤットを英雄として讃え、「やっぱりハヤットには敵わないな!」と声を上げました


狩りは成功し、見事マンモスを洞窟に持ち帰りその晩はまた盛大な飲み会がはじまりました。

夜が更けるにつれて、彼らは火の周りに輪を作り、歌い、踊り、盛大な飲み会をたのしみました。その中心には、狩りの成功を導いたハヤットがいました。


飲み会が盛り上がる中、部族のメンバーは楽しげにコールを始めました。「飲〜んで飲んで飲んで!飲〜んで飲んで飲んで!飲〜んで飲んで飲んで!飲んで? 飲め飲めハヤット!飲め飲めハヤット!チャッチャチャ!アイ!チャッチャチャ!アイ!GOGOレッツゴーレッツゴーハヤット!GOGOレッツゴーレッツゴーハヤット!」と、彼らは声を合わせて叫びました。ハヤットは笑顔でそれに応え、さらに場の雰囲気を高めていました。


この光景を見ていた比呂保保は、昨日の飲み会での失敗を思い出し、ますます自分の孤立を痛感しました。昨日彼がかけた同じコールが、今日もハヤットのために熱狂的に叫ばれているのを見て、彼は自分がいかに部族の中で孤独であるかを実感しました。彼は周りの歓声とは対照的に、内心では深い悲しみと孤独を感じていました。


部族のメンバーはハヤットの周りに集まり、彼を中心にして酒を酌み交わし、笑い声が絶え間なく聞こえました。しかし比呂保保はその輪の外にいて、ただ静かに彼らの様子を眺めることしかできませんでした。彼は自分が部族内でどのように見られているのかを痛感し、その夜はひとり部族の喜びから取り残された存在となってしまいました。


飲み会が進むにつれて、比呂保保はさらに自分の孤立を感じ、部族の中での自分の位置を見つめ直すことになりました。彼は静かに自分の思いを胸に秘め、部族の喜びの輪の外で、深い思索にふけるのでした。

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