ブラックホールに吸い込まれてしまうチー牛
チー牛達との宇宙旅行が始まって一年が過ぎた。
チー牛方舟は初日こそ時速7キロしか出てなかったものの
加速度関数
a(t)=2.87×10−14×t2a(t)=2.87×10 −14 ×t 2
この加速度関数を使うと、加速度は時間の2乗に比例して増加する
というものだ。
1年(約 3.15×1073.15×10 7秒)後には秒速約28.54メートルの加速が得られこのプロファイルにより、最初は非常にゆっくりとした加速から始まり、時間と共に急激に加速度が増大することになる。
これに基づいて恐ろしくゆっくりした速度から日毎に加速度が累積して冪乗に加速する事で丸一年加速し続けてちょうど一年経った時に光の速度を超えたのだった。
この一年は初めての宇宙旅行や 快適な宇宙船 見たことのない宇宙の様々な景色に圧倒され
加速し続ける方舟に一体どれほどの加速をしてるのかとドキドキしながら不安と興奮が入り混じりながらも現象に驚き楽しく過ごしていた。
だが一年が過ぎ 船は光速をちょっと超えたあたりで加速を止め そのまま光速のちょびっとだけ早いくらいのまま運行しており、数値の上昇が止まっていた。
その頃には外を見てもなんだかぼやけたものがヒュンヒュン動いたりモヤだったり霧のようだったりであまりまともに観察できるものもなくなり、次第に変化のない生活に退屈してきてしまっていた。
驚きも変化もなくなるころに 船内のため運動不足に陥っていた比呂保保は少しだけネガティブな気持ちが強くなり宇宙に来たことを今更になって後悔し始めて周りに脈絡もなく不平を言い出し始めた。
本当は宇宙に来たくなかった、、!なんかノリで老チー牛に説得された気がするけど本当はそういうの嫌だったなどと今更になって言い出したのだった。
比呂保保はリ・アジュール帝国ではなんやかんやでいい暮らしを送っていた。テレビの人気者として愛されていたし給料も良かった。執筆などやりがいのある仕事もあった。
そして何より、認めたくないものだったが今リ・アジュール帝国のパリピ達はノリが良く、よく笑い楽しそうにしてるので話していて楽しかったのだ。
ボケたらいいように突っ込んでくれるし話を盛り上げるのも上手い。皆総じてコミュ力が高く社会性が高かった。
それに比べて同胞のチー牛たちは、話題を振ってもピンとこないような返事をしたり、ボソボソ喋っていて何をいってるかわからなかったり、悪意はないのだろうけどなぜか会話してるとイライラしてくるのだった。なかなか会話の意図を汲み取ってもらえず常に要領を得ないコミュニケーションが基本となっていた。
比呂保保はリ・アジュール帝国のパリピたちと関わってるうちにコミュ力が鍛えられ、楽しいノリみたいなものを身につけてしまったせいで、インキャの卑屈でウジウジしたコミュニケーションの取り方を気持ち悪いと感じるようになっていたらしい。
ちょっと上位のカーストにいっただけで急速に下っぽい空気を出してる相手への態度を変えてしまう所もまた比呂保保は普通だった。
そうして上になった感覚でつい比呂保保はチー牛にイラッとする事が増え、それ以外ではことあるごとに比呂保保様比呂保保様と教祖ポジションでの意見を求められたりするのも面倒臭さくなっていた。
方舟は健康を維持できるよういろんな設備があったので、太陽の光や木々、川、自然の恵み、そういうものが再現され 船内でも雨が降ったり雪が降ったりした。 基本的な環境は再現されるし運動施設もちゃんとあったが比呂保保は運動をしない上に、
今まではテレビの仕事で通勤などで体を動かしたり喋ったりしていたし、仕事があるおかげで正気を保っていたが艦内で教祖として特にすることが何もすることがない中でだらだらしているとどうにも調子が出なくなるのだった。
比呂保保は誰かに何かをしてと仕事を作ってもらわないと行動ができない普通の一般的な人間だったので、特に始祖のチー牛としてそこにいる限り仕事などなかったのだった。
そんな中で擬似自然など見ても比呂保保は楽しめないたちだったし会話しても面白くないチー牛たちとはノリが合わず 一人で過ごしていた。
せっかくいい人生を送ってたのにハヤットに負けたくないという気持ちから勢いとノリで宇宙なんぞに来てしまったことを後悔し始めていた。
チー牛の中で生きているのになんだか寂しくなってきてしまったのだ。パリピはどうでもいいこと、それの何が面白いんだっていうしょうもないことでもでも面白い感じに変換してくるのに対して、
チー牛は本当に面白いこと以外を面白くないと思っている。こういうのは技術者やクリエイターなんかだと大事な気質だがそういうことをしてないチー牛が細かいことを理屈でずけずけと並べてくる感じが比呂保保にはなんだかただめんどくさいだけであった。
比呂保保はパリピに進化したわけでもないくせにインキャチー牛をわかった気になって、中途半端にリア充と関わってたというだけで自分が変わったわけでもないのに過剰にチー牛を見下したりする残念な感じの人になっていた。
そんな比呂保保のチー牛のくせにチー牛を見下すような態度に周囲も苛立ち始め、慣れない宇宙旅行よ閉鎖空間での生活で精神衛生が劣悪になっていった。
ある日比呂保保が食堂でチー牛と会話してる中でチー牛っていうのはこういう時こうだよな ハハッ! とミッキーマウスの声真似しながらチー牛をバカにするようなことをいっていると
若いチー牛が比呂保保に対して
このコウモリやろう!
と叫んだ。お前はリ・アジュール帝国に長くいたせいでチー牛の心とほこりを失ったのだ!
と罵った。
比呂保保は目の焦点が合わない感じでポカンと若いチー牛を見ていた。 いきなり怒鳴られたためびっくりしてフリーズしていた。
比呂保保!お前は始祖だなんだと崇められるが実際のところ怠惰で何もしないクズニートじゃないか!
みんな艦内で自分のできることをしているだろう!
掃除 洗濯 料理 皿洗い 補修工事 エンジンなど各種機構の点検 オペレーション みんな慣れない宇宙旅行ながら勉強して、 お互いうまくやれるよう努力してるのに
お前はクッチャネしてポテチばっか食べて掃除もせずにたまに食堂や談話室に現れると チー牛をバカにしてくるだけじゃないか!恥を知れ比呂保保!
宇宙生活が始まって二年 全く集団に貢献したりコミュニティを盛り上げたりするどころか空気を毎回悪くするようなことばかり言う比呂保保に
ついにチー牛は言いたいことを言った。すると別の若いチー牛を中心に
そうだそうだと 号令がなり始めた。 比呂保保!
ちょっと最近調子乗りすぎだぞ! 風呂くらい入れよ!比呂保保! 何上の存在になったみたいな雰囲気だしいてるんだ!お前がチー牛なことには変わらないだろうが! ちょっとヨウキャと関わるようになっただけでカーストの上に行ったつもりかよ比呂保保!
まさかここに来てチー牛たちに批判されるとは思いもよらなかった。数年間自由にし過ぎたつけが回ってきたようだ。
比呂保保は、素早くその場を早歩きで去ったがこの出来事は軽くはなかった。
その後の船内の雰囲気は殺伐としておりチー牛同士でチーチー言い合い、比呂保保はほとんど部屋から出なくなった。だがたまに出ると他のチー牛に舌打ちされたりしていた。
卑屈な顔したインキャの高校生くらいのチー牛たちは比呂保保とすれ違う時は 意味もなくセックス!と言ってすれ違う遊びが流行っていた。何が面白いのかさっぱりわからないがインキャっぽいキモい遊びで子チー牛たちは喜んでいた。
最近は食堂に夜通し入り浸るチー牛が増えて飲み会やコールが流行っていた。
のーんで飲んで飲んでー!
若いチー牛たちがお酒を飲んでパリピっぽいノリで食堂を占拠していた。
比呂保保はチー牛のあるべき姿とは何かについて語ったりしていたが何も貢献してないチー牛の比呂保保の話を聞くものはいなかった。
宇宙旅行何始まって三年、ここは比呂保保が原始時代で暮らしていた洞窟そのものだった。閉鎖空間の中逃れることのできない関係の中で空気読みゲーをしながら仲間内で実質的なデスゲームをしている。もし空気を読み違えて線を踏み外すとハブられ、場合によっては仲間内での間引き、あるいはコミュニティを追放される。過酷な原始時代では群れから逸れればどちらもすなわち死を意味した。
この宇宙空間も同じだ。この空間からは逃れられず、空気読ゲーをしながら足を踏み外せばこうして孤立し命の危険すら感じる。間違えれば宇宙に放り出されるか仲間にやられる。
しかしここはチー牛の群れだ。読む空気なんて存在しないはず。誰も空気なんか読めない。
そのはずだった。
しかしチー牛同士が群れとして集まると、雑多に集められたいろんな人がいればチー牛はいつも個としての自分を保ち、しかし低い立場のまま一人で過ごしていたがこうしてチー牛が一ヶ所に集まってしまうとその中で結局カーストが生まれ、強いチー牛と弱いチー牛に分かれてお互いに協力すると言うわけではなかった。
もちろん比呂保保も非協力的なチー牛の一人で、上の立場になっても下の立場になっても結局比呂保保は嫌なチー牛だった。
不貞腐てストレスいっぱいのチー牛になった比呂保保はしょっちゅう壁を殴ったりするまでに慢性的にイライラしていた。通りすがる高校生チー牛がまた セックス などといってからかって通り過ぎようとすると 即座に殴り倒して馬乗りになってボコボコにしていた。
比呂保保はポテチの食い過ぎて体重が増えたおかげでそこそこ強くなっていたのだ。
高校生チー牛は泣きながら仲間を呼ぶと
どこからともなくチー牛の群れが集まってきて比呂保保を軽くリンチにした。流石に暴力事件は危険だとチー牛の上の方の人が場を収め、暴力事件に関わったもの全員 独房に入れられた。
比呂保保はその後も悪態はエスカレートし、高校生チー牛たちの素行もそれ以来悪化し
他のチー牛たちもいまだ比呂保保を信奉する霊力と この事件をきっかけに比呂保保を間引こうとする勢力で真っ二つに分かれてしまった。
こんな宇宙の果ての孤独な宇宙の当てのない旅の中でチー牛たちはなんと争いを始めてしまったのだ。
しばらくお互いの勢力同士で不毛な言い争いや すれ違うときにいちいち肩をぶつけたり、相手の持ってる所有物を隠したりと言った地味な争いが続いていたが、状況に苛立った青年部の幹部が管制室を占拠したりするまでになった。
比呂保保は仕方なく自分についてるものを集めて、効果的にしてを無力化する道具の開発コードを出して武器を作り管制室に投げ込ませたりして若いチー牛たちを無力化させて行った。
比呂保保はチー牛青年部たちが立てこもってる管制室を制圧した後全員を縛り付けて 動けなくなった若いチー牛たちを一人一人殴り飛ばして唾を吐いていった。
若者チー牛たちは 比呂保保 お前のことなんか誰も認めないぞ 偽物の指導者め 我々はお前の本性を見抜いているのだ 悔い改めよ! 悪魔ハヤットに飼い慣らされたコウモリチー牛やろうが!!
リ・アジュール帝国で楽しそうにしてたじゃないか!今更何しにここに戻ってきやがった! 売チー牛奴が!!
比呂保保は抵抗できなくなってからも言いたい放題の高校生チー牛達にブチギレて怒鳴り返していた。
お前らは!俺がどんな気持ちでリ・アジュール帝国で捕虜になってわけのわからないバラエティ番組に出されてハヤットと漫才させられていい給料貰って、みんなに微笑ましく愛されって リアジュウたちに受け入れられて 楽しい時間を過ごしてきたと思ってるんだ クソチー牛どもが!!
え、、? 今なんて、、?
若いチー牛たちはポカンと目の焦点が合わない感じの目で比呂保保を見つめていた
あれ、、?
比呂保保は自分で言ってた言葉をもう一度反芻していた。 あれ もしかしてハヤットやリ・アジュール帝国のパリピたちと楽しく過ごしていた時間というのは、もしかして自分にとってかけがえのない、人生で初めてちゃんとした自分を受け入れてもらえて素敵な時間を過ごせてた幸せな日々だったんじゃないかって
そんなことに気がつき始めた比呂保保は急に涙が溢れてきた。ほろほろと溢れ出す涙はどんどん勢いを強め比呂保保はついに大声で泣き喚き始めた
うわぁぁあうあうあうあうあぁぁxsーー!!
あの時の日々、比呂保保のボケに鋭くツッコミを入れるハヤット、それを見て周りのみんなが微笑ましく笑う、暖かい日々
比呂保保が本当に欲していたのはあんな日々だったんじゃないかって
比呂保保は失って初めて大切にすべきだったものをみづから手放してしまったことに気がついた。
こんな捻くれて性格の悪いクソみたいなチー牛たちと棺桶みたいな宇宙船でひたすら暗黒の世界を彷徨って挙句こんな宇宙の果てまで来てチー牛同士で争いを初めて、約束の地なんかみつかりもしないまま10年が過ぎたじゃないか。
こんな日々が正しいわけがないじゃないか。
チー牛なんて生まれてきちゃいけなかったんだ。ハヤットが僕たちの旅を邪魔しなかったのは定のいい追放だったからに違いない。チー牛は和を乱し 世界を混乱に陥れる。きっと僕たちはそんな呪われた運命を背負って 世界を悪い方向に導くウィルスだったんだ。 ハヤットはそれをわかっていたからチー牛を追放して、、。
そんな事を考えていた比呂保保はパニックになって大声で泣き叫びそこら中に体当たりしたり拘束されて動けなくなってる若いチー牛たちを引っ叩いたり、踏みつけたりメチャクチャにしながら
ついに管制室のメインパネルをめちゃくちゃに操作し出した。
あうあうあうあうあうぁああぁぁぁーー!!
どうしたんだ比呂保保ー!!
アーッ!やめろっー!!
何やってるんだ比呂保保 貴様正気かー!!
若いチー牛たちが真面目に焦っているのは
比呂保保が操作してるパネルは回避プログラムで
このプログラムは船の航行の安全に最も重要なものでこれが正常に働かないと 宇宙に潜む極めて危険な天体や惑星 歪み 小惑星群 隕石 などを回避できなくなってしまうのだ。
比呂保保はその制御を担ってる端末をめちゃくちゃにしていた。
比呂保保ー!!
やめろー!!
しねーー!!
ついにイカれたかー!!
さすがにそれをやったら本当に終わりだぞ比呂保保ーー!!!
比呂保保はこうして安全航行保証プログラムを解除してしまった。 この宇宙の果てで比呂保保は極めて恐ろしい事をしでかしてしまったのだ。このシステムの操作権限はごく一部のものしか持っていないものだったが比呂保保だけは教祖惑星として全ての権限を有していた。こういう比呂保保のような無能なのに自尊心だけ膨れ上がったものに決裁権や管理権限などを与えるとこういうことが起きる。
比呂保保が端末を操作したことによって
方舟は急に挙動を変えて進んでいた方向を変えていった。 実は今はちょうどブラックホールの重力圏の側を通り過ぎている最中だったが。通常は安全保証プログラムによって引きづり込まれないようさまざまな制御が行われていたがそれが崩れたせいで一気にブラックホールに引きづり込まれ始めたのだ。
比呂保保ーー!! おいいっぃぃx!!!
なんとかしろお前 お前ーーー!!
青年チー牛たちは大声でなんとかやめさせようとするも効果はなく、比呂保保は相変わらずパネルを引っ叩きまくったり暴れたりしていた。
あうあうあうあああああああ!!
比呂保保はひとしきり暴れた後やっとかろうじてしゃべるくらいの冷静さを取り戻したあとで高校生チー牛たちに大声で怒鳴り始めた。
何が悪魔ハヤットだよお前ら。
お前らこそ悪魔だ クソチー牛どもが!
卑屈になって意味のわからないことでキレたり被害妄想に取り憑かれて 不幸にアイデンティティ見出しやがってクソどもbdjrbふぉf!!
そんなに楽園に行きたいなら連れていってやるよ!
この俺が文字通り楽園に導いてやるぜ!!
ブラックホールに真っ逆さまだ!
バラバラになって永久に暗黒の世界でチーチー言ってリア充とかパリピとか言って 上を見上げながら一生やってろ! 散々バカにしやがって若造どもがー!! これが大人のやり方ってもんだぜ 見てろ! 甘えたことばかり言いやがって 大人だってお前らと同じ人間なんだよ!!
比呂保保は激昂して方舟をブラックホールに向けて直進させた。
見てろクズども!
後戻りできない本当の楽園に今から連れていってやるからYOー!!!
比呂保保はハイになっており緊急加速装置をさらに噴火させて 光速の1.1倍が最大船速だったチー牛の方舟を 一瞬だけ10倍まで加速する装置を起動させた。
重力は歪み 時空が歪み 空間が歪み みんなの声が四方八方から飛び出して 色が意味をなさなくなり 思考はなぜか超加速して 様々なものが見えた。 みんなまっすぐ前を見てるようで全ての範囲を同時に見ているような感覚になった。
そのまま超加速が実行され ブラックホールに突撃して行った方舟は とんでもない速度で暗闇の中を突進し続け グニャグニャになった船体がさらにブラックホールの重力で 長大な力でペースト上に引き伸ばされた。
管制室にいた全てのチー牛が全力で怒鳴りあっていた。超加速中も大声で罵り合っていた。罵倒はやまびこのようにハウリングしそれが全方向から音がワープしながらあり得ない動線を描きつつ響き渡った。
ひひひヒッヒい
ろろろろろr
ほほほh
ほほほほほほh):::8sbfjfj!!!
しししししsfbfjfkfん!!!
ねーーーfbfbfbf!!!!
最後に聞こえたのは方舟中に響き渡った 若いチー牛の比呂保保への憎悪を込めた汚い言葉だった。
超加速が最大になり 拘束状態にない状態でこれを使用すると船内のものは大体気絶するか運が悪いと死ぬ恐れがあった。
みな 超加速とブラックホールに突撃した衝撃とで意識を失い 暗黒の世界に引きづりこかれて行ったのであった。