表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原始時代のチー牛  作者: akira
13/22

世界でたった一人のチー牛

ハヤット率いるリ・アジュール帝国(通称ハヤット帝国)

便宜上 比呂保保が率いている事になっている

チー牛国ニッホン 


は戦争を開始した。



比呂保保様  さっそくですが、あなたのお力をお借りしたいのです。 こちらに聖典研究所があります。 ここは我が国の施設の中で最も多く研究費が投じられており 最新最高の設備と研究者が揃っております。 我が国は基本的にあなたが残した聖典の秘密を解読する事そのものが技術発展の基礎となってきました。 もちろん我々独力で発見したものなどと組み合わせて 一定以上の技術や文明がないとあなたの聖典の記述の本当の意味を読み解くことができませんでしたので


そのたびに頭を悩ませながら研究をこんにちまで続けておりました。



しかしそんな日々は終わるのですね。

自分たちで悩みながら答えを探すのは辛くも楽しい日々でしたが 今は戦時 悠長なことを言ってはおれません すぐにでも技術の水準を革新させ 悪魔ハヤットを討ち倒す時なのです。



そうですね



まだ解読できてない章はこちらになります。

もちろん我々が解読できたと思っていた部分ももしかしたら解釈違いや不十分なところがあるかもしれません。


ただ我々にとって今重要な部分は基本的に兵器転用できる部分と考えております。


そこで我々の方でおそらくこれらは兵器たりうる技術だと考えている部分をピックアップさせていただいております。


この辺りから着手し始めるのが良策かと思われますが如何でしょうか?



そうですね そうだと思います。



承知しました。 ではこちらから始めましょう。

我々はこちら チー牛サンヘドリンスクロールズ

我々の聖典の名称ですが


この 烈チー牛記 第4章3節にあるこの部分を

解読しようと試みているのです。 これは天から降り注ぐ雷が巨大な街を包み込み破壊したというような描写があり ここを解読すれば おそらく我々は天の雷を手にすると考えています。


十数年前に実際的な研究に着手し、解読された先から技術転用を試み開発を続けていますがうまくいっておりません。


兵器は隣のセクションで行われております。


我々の研究室はこのような構造になっており

基本的にチー牛サンヘドリンスクロールズに書かれている章ごとに研究室 研究部が分かれており


各セクションごとに 解読班 開発班 PM がつくような形で 未解読の章ごとにチームが組まれてると言った具合です。


解読そのものが言ってみれば国家プロジェクトですので 掛け持ちなど一切行っておらず


チームごとに自分たちの職域に責任を持って取り組む仕組みが出来上がっております。


この研究所で聖典研究行うことはチー牛国ニッホンだけに限らず傘下のあらゆる国の中でも最高峰の人材が世界中から集められており 最高の待遇 最高の給料 最高の職場を人材に提供しております。



全てチー牛なんですね



もちろんです 比呂保保様  

厳格な審査 試験を突破した者のみがこの研究所で労働を許され 世界中から新しい研究成果について待望され期待を受けながら 世界を前進させていく存在となり 誉れの中で生きていくことを許されるのです。 あなた様の残した奇跡にこれほど接近できる これほどの幸せがありますでしょうか?



そうですね


比呂保保はそう答えてしつじの案内に従いながら研究所を一通り見てまわり 最も強力な破壊兵器となるであろう部署に到着して どこまで聖典研究が進み 開発がどこまで進んでいるか 各セクションリーダーから詳細な説明を受けた。





というわけでして 憎き悪魔ハヤットを討つべくして開発を続けてきた兵器 SOL RDS(リア充デストロイシステム) はこの部分で開発が難航しているのです。


比呂保保様 どうかお力添えを頂きたく思います。



比呂保保様 しつじが間に入って答える

こちらの章部 我々は部署を聖典の章の番号で割り振っており、通称 部を章部と読んでいるのですが


 ここは誇り高く研究所の中でも選りすぐりの人材を選び抜き 最も開発費をかけている章部です。なのですがうまくおっておらず室長も頭を抱えているのです


そこでどうか貴方様のご助言により兵器開発を助けてほしいのです。


比呂保保は基本的に研究者達の説明の全く何一つとして言っておるのかさっぱり理解していなかった 


ミョルアベル閃光  グラベルディア重力 波動振幅 

エキゾチック物質プロジェクター 重力波フォーカシング

プラズマアクセラレータ

ゼロポイントエネルギー抽出

エキゾチック物質プロジェクター

サブスペースインダクター

共鳴振動加速器 


聞いたこともない、原始人の比呂保保にとっては当然ではあるが 聞いたこともない名称が並び とてつもない技術を組み合わせたとんでもないものらしいが比呂保保に助言できるようなことは何一つなかった。 結果としてひろほほはそっけなくそうですね くらいしか言葉が出てこなかったのである。




比呂保保は 持ち帰って精査した後 こちらから連絡します


と 以前 世界を回った時にまともそうという理由でクビになった優秀そうな社員が言っていた言葉をそのまま使ってその場を離れた。




比呂保保はハヤットを倒すことを決意してはいるものの実際的な内容で役立てることはあまりなさそうだと感じていた


歴史の勉強を現代で目覚めてから繰り返してきたが おそらく世の偉人たちの周りで尽力したなもなき人々の原動力 活動 力は丸ごと薄められて伝わってるに違いないという部分を実感として感じていた


比呂保保自身はきっかけを作ったという功績はあるもののそれを影のうちに実行してきた多くの人の実在 実績 偉業はそのものたちのものなのだ。そんな教訓だけ肌感でわかった。



僕はアイコンとしてのみ居ればいいんじゃないだろうか



そんな感じで数日 比呂保保は公園を散歩したり

体を動かしたり 映画を見たりゲームをして過ごした



それから数ヶ月が経った


その間特に進展もアイディアのでなかったひろほほに対してしつじ他研究者達のだんだん態度が硬直してきていた。


あの、、 ひろほほ様  そろそろ 何かしらご提案などはないのでしょうか、、?



比呂保保はこの数ヶ月で20キロほど太って

最近は外に出ることもなくなっていた。


夜中になると コンビニでお菓子やカップ麺を買い

また朝方に眠り 昼頃から ゲームを開始して


夜中に一日一回あるかないかの食事をコンビニ飯で済ませていた。


比呂保保は原始時代から現代という完全な異世界で目覚めてしまって終始途方に暮れていて どんな説明を受けてもピンとくることが何もなかったが


ある日 ゲームというものを知ってしまってからどっぷりと沼にハマってしまっていた。


世界中からの期待と羨望 そんなものでは説明のつかないくらいの激情を全国民から向けられ 教祖 始祖のチー牛として崇められ 世界を救済する救世主として迎えられていた比呂保保だったが


当人はハヤットの国をどうにかできる力などなかったし 自分が描いた落書きを聖典だと崇められてもその時の記憶も曖昧で何一つ期待にことえることができなかった。


もちろん最初は懸命に自分の描いた絵や文章を眺めてはあーだこーだと意見を言ってはみたし 何を思って描いたのか 朧げながら思い出しつつ語って見せたり


どんな人生を送ってきたか とか 何に苦労したかとか できうる限りの事を話した。



そんな語りを会議の参加者は感嘆を持って聞いていちいちすごいリアクションを取り涙を流していたが


それらが聖典解読の助けになることはなかったようで 


研究所の記憶解明装置やカウンセリング 催眠術 ありとあらゆる方法で比呂保保の中にある重大な情報を引き出そうとしたが何一つ成果が出ていなかった。



そうこうしているうちに ハヤットの国との戦線は拡大していき互いに被害が拡大していたのだ。


連日 国境線沿いでは激戦のニュースが流れ

時に主要都市への攻撃やミサイルの応酬 


特殊部隊による本国への直接攻撃など多種多様な戦線が広がり 混迷を極めた。


実際のところ戦争は5分の戦いを見せたが、早期決着は到底見込めない泥沼へと進行しそうな勢いで


こんな事を続けていてはお互い疲弊して文明自体にすら悪影響を及ぼすだろうという目算がまことしやかに語られ 反戦を訴える国民も増えている状況だった。



こんなときこそひろほほの出番だと祭り上げられ メディア露出 コメンテーターとしてテレビやニュースに出ては 演説を行なわされた。


だが比呂保保は人前で喋るのが苦手で 

なんとか丸暗記させられた演説を終えても


その後の質疑応答で盛大に理屈に合わないことやわけのわからない事をゴニョゴニョと喋り


そんな事を継続した結果 根本的な尊厳は国民も変えず始祖のチー牛としてあげめてはいたものの


政治やリーダシップなどは期待できない という失望は明らかになっていって


世界中からの落胆は比呂保保も肌で感じていた


いきなり復活させられ祭り上げられた挙句 世界中からの失望を受けて比呂保保はすっかり意気消沈してしまったのだった。


だんだん聖典研究の会議や 記憶解明作業やカウンセリングでも 毎回同じことの繰り返しになり 比呂保保の思い出せる限りの全てを話し尽くした後で


全く同じような事を十数回に渡って根掘り葉掘り聞かれ 喋らされ その度に何か他にないのかとせっつかれる有様で


最終的に比呂保保もすっかりノイローゼになり

会議のたびに試すような ヤキモキするような

失望があるような 残念そうな表情を

各スタッフから向けられ 外に出れば 過剰な叱咤激励やあるいは政治は無理な人というような感覚を受け


ネットを眺めると 比呂保保様には政治は難しくあらせられるようだ 始祖としての尊敬は変わらないが向き不向きというものが


などといろんな書かれ方をしてるものの失望の色は消せなかった。


そんなエゴサーチを繰り返した結果として

だんだん鬱っぽくなってきた比呂保保は


自室に閉じこもるようになり 

部屋にあるゲームを半ば現実逃避気味にプレイし 次第に没頭するようになっていった。


特に最近ハマってるのはチー牛アートオンラインというネットゲームで


チー牛の中でも特にインキャっぽいものたちが

比呂保保の作ったクランに集まってきて

こちらの世界で居場所を見出すようになっていた。


今はチー牛の楽園のような世界が完成したが

チー牛の中にも才能のあるチー牛も居れば

なんの才能もないチー牛もいる


オンラインゲームにどハマりしているのは現実がうまくいかないインキャ寄りのチー牛達だった。


ネットの世界で比呂保保はそんな弱いチー牛達と自然に交流を行うようになり その中でやっと現代という世界についてリアルな質感を持って把握していったのだ。


そしてそんな社会の中で真面目にイキイキと生きていく気のないチー牛たちの話を聞いてるうちに


これだけ発展した文明で衣食住揃って

ファラオもびっくりの贅沢な暮らしを貧困層と言われるチー牛たちですら送っている事を知った。


ワンルームで、暖かいシャワー 一人で過ごせる個室 雨風凌げる丈夫な部屋 テレビやネット環境は貧困層でも大体アクセスに問題なくできるくらいインフラは発達していた。


遠くに行こうと思えば電車や飛行機であっという間に行ける。多少の交通費くらいならバイトで充分貯めることができる範囲だった。 


比呂保保の暮らしていた原始時代では 

ただその日を生きるためにどれほど辛い選択を強いられていたかわかったものではない。


狩に3度も失敗すれば栄養が取れず餓死していた。

洞窟内でコミュニケーションに失敗したものは ねてる時に仲間に間引きとして殺されていたものだった。


冬なんて毎年何人 部族の仲間が死んだかわからない。原因不明の病で何人が死んだだろうか。


それがどうだ この現代でそんな原始時代での全ての関心ごと 生きるための全てが完全に解決して久しい こんな世界で何をする必要があるというのだ?


成人まで生きるのに対して問題などないだろう

多くの致命的な病の大半を克服している



全員総じてバカなんじゃないのか?

原始時代に比べてこんな栄華を極めた完全に近い世界で

なぜ今なお働き なぜ社会に参加し あろうことか争いまでいまだに続けて。


比呂保保はゲームで人生にやる気の無くした友人達を通していろんな事を知った。

世界は比呂保保から見ると クリア後のRPGと言った具合で本来もうやることのない世界に見えた。その中で無理やり生き甲斐を見つけさせられるという窮屈感が蔓延してるように見えた。


こんな世界でこいつらは何を真面目に何かをしようというのだろうか 何を必死になって、あろうことか何かの義務感や正義感などと言った感覚に戦争されてよもや集団規模での殺し合いまで始める始末だ。


そんな事をチー牛アートオンラインのクランメンバーたちと夜通し語り合った結果として、比呂保保は社会から離脱する事こそ人生の本質だと悟るようになり


面倒で進展のない会議や

偏屈なだけで社会性を身につけようとしないアカデミア出身の学者気取りの連中を煩わしく思い


現場主義で実際的なものを作る作り手たちの情熱を眩しすぎて距離を置き


つまるところ何もする気が無くなったのだった。



そんな生活が数ヶ月続くうちに

しつじも流石にこのままではまずい


いやまずいなんてものではなく チー牛の始祖である比呂保保の引きこもりなど世界の一大事どころか

歴史的な大惨事に等しかった。


比呂保保様! いい加減にしてください!!

あなたは一体何をやってるのですか!!

この間悪魔ハヤットに行った宣戦布告はなんだったというのですか!!?


あなたがそんなことでは我々は悪魔ハヤットに勝てませんぞ!今は戦時中であることをわかっておいでか!?


人が、 同胞であるチー牛が死んでいるのですぞ!?


あなたは!あなたは自体の重大さを完全に理解しておられない!チー牛アートオンラインだって!! ふざけるな!!


執事はマジギレをしていた。始祖比呂保保に恐れ多いという感情を完全に通り越した本心からのマジギレだった。 


そんなしつじの罵倒を聞いていつもはひたすらシカトしていた比呂保保だったが今日はこんな感じで言い返していた。


うるせーババア!!

黙ってろ! 

あっちいけババア!



な、、、?!

しつじは思わぬ反撃に面食らっていた あまり強い言葉を使わない比呂保保がまるで引きこもりのインキャが拗らせたみたいな事を言い出したのだ 


比呂保保様 一体どこでそんな汚い言葉を!? 

そして私はババアではありませんぞ、、!


友達に教えてもらったんだよ ゲームばっかりしてて小うるさい事を言われたら大体みんなこういって追い返してるらしい。


全員ヒキニートのクソガキだろそれ絶対!

しつじはつい敬語を忘れて突っ込んでしまった。


そう言って比呂保保はしつじにポテチのふくろを投げつけてしつじを追い返した。



執事の他に数名のチー牛重鎮たちが扉の前に居たがそんな様子を見て


比呂保保様は、、もうダメかもしれない そうしつじは皆にこぼしていた。



そんな会話は比呂保保にも聞こえていた。

自分の悪口だけは比呂保保は敏感に聞き取るのだ。



絶対に協力しない姿勢を比呂保保が取り始めて

戦時中だというのに比呂保保はゲームに没頭し続けた。



もう比呂保保はダメだ。そんな会話がチー牛聖典研究所で囁かれ始め、軍部にもそんな噂が広がってしまい、 メディアにも登場しなくなった比呂保保に対して国民は不信感を抱いていた。


比呂保保の引き篭もりは次第に国民の知るところとなり 完全にチー牛国ニッホンの士気は下がり


これを好機と見たハヤットは一気に攻勢をかけ戦線を拡大させ 侵略の勢いを強めた。比呂保保のせいで士気を失った前線は次第に崩壊していった。



比呂保保はそれから数年間引き篭もりを続け、その間みるみるうちにハヤット帝国にチー牛国ニッホンは飲み込まれていったのだった。


比呂保保の国は領土の大半を失い


オセアニア連邦 CE U 南北アメリカ連合

チー牛国ニッホン本土以外の大半の主要傘下国家がハヤット帝国に占領された。


ハヤット帝国では連日のように比呂保保を罵倒するようなアニメが放送された。このアニメはハヤット帝国内では大ヒットして様々なグッズが販売された。


アニメの内容は チー牛の代表が引きこもった末に様々な失態を犯した挙句 戦争に負けて捕虜になり様々な恥ずかしい行動を取らされる


というものだったが リ・アジュール帝国の国民は皆このアニメを毎週欠かさず見て多いに笑った。このアニメは空前の大ヒットを飛ばし国民的アニメになるまでとなった。



戦時、前線ではまずこのアニメが大画面で放送され 

チー牛国の兵士たちは国の醜態を見せつけられて士気が下がったところで リ・アジュール帝国の兵士が攻勢をかけていく という戦法で 国を守ろうという意識を挫いていった。


次第に比呂保保のことをチー牛国ニッホンの国民たちは憎むようになり あいつのせいで戦争に負ける という意識が広がっていった。



戦争は完全にハヤットのリ・アジュール帝国の優勢だった。

あとはどう決着をつけるかという所まで来ていた。


そんな状況でも比呂保保はチー牛アートオンラインを続けており 世の中のことなどどうでもいいという感じで過ごしていた。


そんな折 比呂保保がチー牛アートオンラインをプレイしてると知らない相手からメッセージが来た。


女の子の名前でフレンド申請が来ていたため 比呂保保はちょっとドキドキしながらフレンド申請を受け入れた。


メッセージを読むと この日 ゲツセマネの丘

にこの時間で待ってるね。


と短いメッセージが書かれていた。フレンド登録した時点で相手のプロフィールや登録していた容姿も見れるため すっかりその女の子に期待を抱いたひろほほは限定ガチャでゲットしたオシャレなタキシードに身を包み

最大限見た目を改善して カッコ良さ の数値を250以上まで上げてから出発した。



実際に行ってみるとその女の子はいなかった。


しばらくあたりを見回しながら待っていると

一人の男がやってきた。



その男はなんとハヤットだった。



ヒィ!?


比呂保保はダボついた体で鈍い反射行動をとったが転んでひっくり返っていた。


ゆっくり近づいてくるハヤット


ひーろっほほ 元気?



ハヤット なんでここに!?


捕虜にした君の臣下から聞いたんだよ 比呂保保様は現実逃避して引きこもってずっとゲームをしているってね  キャラIDもそいつから聞いたんだよ。


お前の好みは原始時代の洞窟の頃からあんまり変わってないようだね ダメだよこんなメッセージでホイホイ出てきちゃ。まぁゲームだしいいんだけど。



どうして僕にいまさら構うんだよ もう戦争は君の勝ち確だろ。


それにそもそも僕には関係ないことさ 気づいたんだよ。死んだと思ったら目が覚めてそしたら始祖だの王だの祭り上げられたけど 考えてきたら僕にはそんな事関係ないじゃないか 勝手に持ち上げて勝手に失望したからって勝手に僕のことを憎み出したあいつらなんかどうだっていいよ。

そもそもこの時代の事自体 僕になんの関係があるっていうんだ?


バカじゃないか こんなにいい暮らしができる現代ではこいつら全員何をそんなに一生懸命になってるんだ? わけがわからないよ 貧困って言われてる連中すら僕らの過ごしてきた時代のどの王よりも豊かな生活をしてるじゃないか そんな土台の上に成り立って何を求め何にきづつかなきゃいけないっていうんだ? 根本的なところで持つべき思想が間違ってるんだよ こんな奴らも文明の発展に手を貸したところで なんの益もないよ 精神的に全く未成熟と言ってもいい どれだけ文明が発達しても精神的な部分では原始時代に劣ってるんだよ 発達させるべき分野を勘違いしてるんだよ こいつらは


僕はもう彼らに協力はしない ここは僕の求めたチー牛の楽園とは似ても似つかない世界だったよ。



比呂保保は、結局唯一自分の主張を理解できるのはハヤットだけだとでもいうかのように わざわざ原始時代の文脈を持ってきて話を共有しようとした。



ハヤットは黙ったまま比呂保保の横に座った。


風邪がざわめき 木々が揺れ カラクレナイの花の匂いが香ってきた。


しばらくしてようやくハヤットが口を開いた。


なるほどね ひろほほさ お前やっぱり記憶戻ってるだろ 


比呂保保は瞳孔がひらいて ギョッとした目でハヤットを見た。


実はチー牛アートオンラインで君のクランに裏垢で入っててずっと君たちの議論っていうか現実逃避のしょうもない愚痴を俺も混じって聞いてたんだよね ハヤチーってネームのやついるだろ あれ俺だから。


な、、、???


ハヤットはそのまま続けた

それでお前と会話してる間にまぁいろんなチー牛国ニッホンの事は空気を誘導して色々聞き出してたわけでさ おかげで戦争有利に進めた場面もちょくちょくあったんだけど まぁ微々たるものだけどね。



それより重要なのは お前が新兵器の開発への協力を拒んでたって所なんだよね。最初は本当にわからなかったみたいだけど お前このゲームずっとやってる中でも どんどん会話の中で出てくる単語とか話し振りも変わってきてたもん それで色々と仄めかしてみたら あ こいつ思い出してるってわかってきて。


でもなぜかそれを聖典研究所に伝えてないっていうから ずっとヒヤヒヤしてたんだよ。

もし兵器開発を終えていたら戦況も変わってたかもしれないだろ。



比呂保保はしばらくポカンとして やっぱりハヤットには何もかも見抜かれるんだと驚愕していたが


ゆっくりと質問には答えることにした。


さっきも言っただろ 僕にとってこの国は同胞の楽園ではない この国に協力する義理がない そう判断したんだ ここで僕は協力する理由が結局見つからなかった この国に利用されて君たちを滅ぼそうが、

この国が君たちに滅ぼされようが僕にはどうでもいいことだと気づいたんだよ 戦争なんて勝手にやってくれ ってこと。個人としての僕の幸せにとって 周りの なにものがなにをどうなろうと 僕の幸せだけが最重要 そう考えることはできないのかなって。みんな一体 なににあやつられて 一体感を持って 何かに導かれるように 突き動かされるように 行動を共にして わけのわからない方向へと向かっていく。まるで空気の奴隷じゃないか。

僕の支配者は常に僕だけでいたいんだよ。 それ以外の何かを感じた時 僕が戦うべき相手はそう言った空気であり 空気を運んでくるものであり 空気に感染するものたちなんだ


僕は僕が戦うべき相手を間違えないようにした。

それだけだよハヤット 君は空気を操るのが得意だろう 僕たちチー牛はね 空気を読むのが下手くそなのさ 今までそんなものを読めた試しがないんだ。


今回もそうさ チー牛と名乗る彼らの作り出した空気が僕には読めなかった あるいは肌に合わなくてね みんながあっちを向いてるとなぜか僕だけ別の方向を見ていた。  だからいつも原始時代の時に狩りに失敗して足を引っ張っていた。 今回も同じさ マンモスを狩ろうとしてるみんなをよそに僕は別の大切なことを見つけてそっちを見ているうちに “みんな”の邪魔をしていたんだ それでまた憎まれたのさ。


原始時代での洞窟と全く同じ 僕は一貫して本物のチー牛だった それだけだよ。




ハヤット 実は僕のことを本当に理解してると感じるのは君だけなんだ。 昔の僕を知ってる唯一の存在だからかな。 でもだからって君が僕にした裏切りや 洞窟追放された後での執拗な嫌がらせを許したわけじゃないんだぜ、僕がその気になれば君の国を滅ぼせるようになってしまっていた事も忘れないことだね。結果的に僕は今までそんな立場になってしまったんだ。 ちょうどいい塩梅でチー牛国ニッホンも弱ってきた ここらで兵器を完成させて 同じくらいの損害を出せば 少しはこの時代の人間たちも謙虚で大人しくなるんじゃないかな なんて思う事だってあるんだぜ。


そんな様子を眺めるのは僕だってやぶさかではないんだよ 君のような悪趣味に手を染める気にはなれないけど。



ハヤットは一通り比呂保保の言葉を聞いてから 始めた。


そんな事好きにすればいいんじゃないか?


最初にホットラインで話した時に言ったろ

僕にとっては政治も戦争もチェスと同じようなゲームなんだよ 負けるのは好きじゃないけど最終的な結果に結局のところ興味はなくて 楽しければいい程度の遊びの話なのさ。


僕の作った国の住民を滅ぼしたければ好きにすればいい 僕にとってはすぐ空気に感染して自分の意見も考えも変わるような連中が対等な人間だと思えるはずもないだろ チェスの駒くらいの存在だよ あいつらは別に駒以外の価値を見出していない 退屈な奴らさ  



比呂保保 俺は本当はお前達チー牛に憧れてたんだ

俺は洞窟にいた頃、体が小さくて運動神経も良くなくて狩に出てもみんなの役に立てなかった。お前ならわかるだろ 狩りもできない 集団を盛り上げる事もできない 空気読めないやつは間引かれて仲間に殺される原始時代で、空気を読むってのは一番重要な事だった。 俺は必死で人の心 全体の空気 流れ そういうのを読む事に苦心してやっと自分の立場を守ってきたんだ。


そうやってビクビクしながらみんなの顔色伺ってさ みんなに合わせて、空気に合わせて、 そんなふうにしてずっと生きてきた。でもある日ふと思ったんだよ こんなの奴隷と変わらないじゃないかって。 だから俺は空気を読んで合わせるんじゃなくて、その空気を自分で変える事ができないかって思い立ったんだ。 最初はなんか洞窟内でいじめられてるやつのことをみんなが話してるのを聞いた。少しだけ流れが見えた時にちょっとその空気の隙間に悪意を乗せてそっと流れを押してみると、みんなの意見が変わり始めたのに気づいたんだ。 あれ? こういうふうにすると印象って操作できる? そんな気づきがあった。 俺はそのままなんとなく悪い話題を自分が悪人にならない範囲で小さく小さくそいつの印象が悪くなるように振る舞い、でも何か気づかれて復讐されるのが怖いから本人には優しく接したのさ。そうやってバランスを見ながら、顔色 表情 筋肉のこわばり 声色 その日の歩き方 その話題に対する姿勢 そうやって洞窟内での関係や人々の動向をつぶさに観察して リスクの低い範囲でちょっとづつそいつを追い込んでみた。 そしたらみんな はそいつのことをだんだん堂々と批判するようになったり うまく行かないように罠を張ったり 直接的にそいつに何かされたわけでもないのに汚いことをし始めたんだ。


こいつら 関係ないのになんか誰かが何か言ってる ってだけで一緒になって攻撃を始めたんだよ。 僕がちょっとづつ印象をいじっただけでね。 こいつらはなんだか人間に思えなかった。だけどこれは利用できる そう確信してこいつらみたいな自分を持ってないやつはいくらでも操れるんだってだんだんわかってきて 実験を繰り返してきたんだよ。



そうこうしてるうちにみんな僕の思い通りの反応をして印象を作っていった。体の小さくて運動神経も悪い僕を原始の時代に 崇める 最高だったよ。 僕はそんなゲームを楽しんでいたけど どこか孤独だったんだ。 対等な相手がいない みんな機械的に空気に従ってるだけで内面のないただのハリボテを相手にしてるようだった。 でもチー牛のお前らは違った。


 僕がずっとビクビクして空気に怯えて従ってきたのにお前らは全く空気を読もうとしない イラついたよ 小さくて鈍くて 頭を使おうともせず ただ自分の自然に従ってるお前らが。



俺がどんなに空気を操ってもお前らは全く意見や行動を変えなかった。


お前が死んだ後にいろんなことを考えてわかったんだ 自分っていう軸を本当に持ってるやつってこういうやつのことを言うんだろうなって。


俺はお前にまたあって話したかったんだよ それだけだったんだ 


俺とお前が手を組めばちゃんとした世界を作れる 一回世界をリセットしてまた1からやり直そう。今度はチー牛とかリア充とかくだらない争いのない 綺麗な世界を。


リ・アジュール帝国の代表であるハヤットと

チー牛国ニッホンの代表である比呂保保は


戦時中にも関わらずお互いがお互いに 自分の国の事に興味がなく守るべき大事な存在というわけでもなかったことを確認しあった。


このネカマにホイホイつられて出てきたような場所で 戦争の終焉は決まってしまっていたのだった。


つまりハヤットは比呂保保にリ・アジュール帝国をSOLで壊滅させて問題ないという事を言い含めており あろうことかそうするよう人間比呂保保を誘導するような話ぶりだった。 

比呂保保はそれを持って諸々のことを手打ちとする事に話の流れで合意してしまったのだった。





比呂保保は聖典研究所にSOLの完成に必要な技術と知識 手順など詳細に書いた手紙を送り、 そしてすぐに旅に出たのだった。


これで世界はフラットな状態になるだろう お互いに国力の9割は削られる結果になるはずだ そしたら国の維持も難しい バラバラになった集落でこの世界を1からやり直せる その時こそ 真の楽園を作るためにお互い手を取り合って 


チー牛もパリピもインキャもリア充も仲良く幸せに暮らしていける世界を作ろうじゃあないか


新世界が待ってる その時まで

比呂保保はいろんな事に終止符を打つことができて、社会から飛び出して一人になることで活力が戻るという実感を抱いていた。 謎の空気に支配されていた社会で何故か自分たちは無気力を感じてしまい、そんなところでなにを求めていたのだろう そう言った事を考えながら、一人になることで生きるという事の価値に気がつけると比呂保保は考えていた。



比呂保保がチー牛国ニッホンを後にして歩いてしばらくして高尾山あたりまで辿り着いた。 そこから栄華を極めた大都市 チー牛国ニッホンの首都メトロチギュポリスを

遠い山から眺めていると


空が突然眩く光った。そして稲妻のような閃光であたり一面が強い光で包まれた後 巨大な火の玉がチギュポリスに落下して全てを吹き飛ばした。



比呂保保は爆風で吹き飛ばされた後 事態が飲み込めないでいた。あれはSOLの光に間違いない ただあれが落ちるのはリ・アジュール帝国のはずだった 一体なにが?


わけのわからない中でのつたうちまわっていたところに スマホから電話がかかってきた


ひーろっほほ 元気?


は ハヤット、、?


助かったよ 比呂保保 本当はね 僕は焦ってたんだよ 本当にSOLを撃たれたら負けちゃうじゃん やばくね? どうにかしないと って ずっと戦争の初期からあらゆる手を使って完成を防ぐ工作を行い続けていたんだ もちろん戦争が始まる前から情報戦も仕掛け続けてきたんだよ。


工作はある程度うまく言ってたけど完全じゃないし内通者もいつ誤情報を流し始めるかわかったものじゃない 確かなものはない中で  君が復活した。 いきなりSOLが完成するシナリオが出てきた それで特殊部隊を送ったりして暗殺しようとしたり いろんな事を試したけどガードが硬くてさ だから裏から情報を操って人を洗脳して ひろほほ 君自体を無力化する方法をずっと探してたんだよ。



それで君のカウンセラーや一部の研究者が君の記憶再生にうまくいかないような無駄な事をたくさん行わせたり 辛くなってお前が努力をやめてしまうような方向に誘導したりしたのさ 案の定プレッシャーをかけられた君はミーティングをサボり出し ゲームに没頭した。そこでチー牛アートオンラインでお前が作ったクランに潜入して思想を誘導するしたんだよ 思想の誘導はメンタリストである僕の最も得意な事だからね こうして君はチー牛国のために働くのが馬鹿らしい事だと信じて まんまと協力を拒んだのさ 自分の意思だと信じてね そして

最終的にSOLの開発に必要な情報を僕の配下の人間に渡るようにしてしまった


結果SOLを完成させたのは僕らリ・アジュール帝国となったわけだ。そして今 チー牛国ニッホンに止めをささせてもらったよ。


これでチー牛はこの世界から完全に消滅した。

全て僕のチェスの盤上の上 僕の描いた筋書き通りだったよひろほほ 君でさへもコマの一つだったってわけさ


アーッハッハッハッハアッハ!!!

アーッハッハッハッハアッハ!

ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!

ヒーハー!!

ねぇ今 どんな気持ち!? ねぇどんな気持ちィィィィィィ!!!!???


それ その顔!! その表情だよーーー!!!!

絶望!?虚無!?恐怖!?困惑!?退廃!?


ギャーッハッハッハッハ!!

これだから!! これだから空気をあやつって誰かを追い込むのはやめられないぜーー!! お前面白すぎるだろ!!

言ったじゃんおれ 人操って陥れたやつの絶望する顔見るの大好きだって! 原始時代ん時に洞窟で追放されたお前に言ったじゃん!一貫してるじゃん!

どうして信じちゃったの!? ちょっと神妙な顔して話し聞いてあげただけじゃん!!

ちょっろ!



電越しで激しい罵倒をした後 近くにジェットエンジンの高音が鳴り響き何かが近づいてきた。


はい ここで〜 比呂保保くんのォォォォォ

大好きな〜 リア充パリピメンバーによる〜!!

パーティーコールを開催します!

ハイハイハイハイ!! 


ジェット機の中から

大量のパリピがハヤットを先頭に空から降り立ってきて シャンパンとパーティグッズ 

タンバリンなどを片手に 手を叩きながら 盛り上がって コールを繰り返しながら比呂保保を囲うように集まってきた


ノーンで飲んで飲んでー!?


ハヤットがコールするとパリピたちが続いて

ノーンで飲んで飲んでー!!


ウェーイとかシャッシャッシャッとか叫びながらコールが鳴り響いた


ノーンで飲んで!飲んでー!

ノーンで飲んで!飲んでー!!


比呂保保 イェイ! 

比呂保保 イェイ!


騙されちゃったねイェイ!

騙されちゃったねイェイ!


おっちょこちょいだねイェイ!

おっちょこちょいだねイェイ!


また失敗しちゃったねイェイ!

また失敗しちゃったねイェイ!


比呂保保!

比呂保保!


比呂保保!

比呂保保!


チー牛絶滅!

チー牛絶望!


比呂保保バイバイ!

比呂保保バイバイ!


比呂保保ドンマイ!

比呂保保ドンマイ!


楽しい時間アザス!

楽しい時間アザス!


シャンパンタワー! レッツゴー!!


高く積み上がったシャンパンに巨大なドンペリがたっぷり注がれ パリピたちは比呂保保の周りで大盛り上がりだった。 



これが勝利の美酒というものだ。


ハヤットとパリピ達は勝利に酔いしれ 比呂保保の絶望とも放心とも取れない 人類が見せたことのないような 表情筋の薄いはずのチー牛の顔に刻まれた未発見の感情を酒の肴にし えもいえぬような愉悦を味わい 盛大に盛り上がった。


これが新しい人間の感情の発見と言ってもいいかもね これが真の芸術の創作というものだよ お前らもよく覚えておくことだな このチー牛の顔

これを作り上げるのがアートってものなのさ



ウェーイ! ハヤットウェーイ!

パリピ達がとりあえずノリで返してまた盛り上がって言った。


比呂保保はそんな様子を眺めながら今まで感じたことのないような新発見の感情とされる全てが 時間と共にただ一つの感情に集約されていった



ハヤットォォォォォォッォ!!! 貴様アァァァ 

裏切ったナァァアアアアァァ!!!!




激昂した比呂保保は大声で叫んでハヤットに殴りかかろうとするがパリピの踊ってるダンスの中うっかり肘が頭に入り 比呂保保は倒れた。


あ ワリ! ゴメンナリ〜


お前ゴメンって思ってないだろ ぎゃっはっはっは! てかわざとじゃね!?


ひっどーい かーわーいーそーうー


パリピ達は比呂保保が痛みでのたうち回る中で それを見てさらに笑いが巻き起こっていた。


チー牛オモロ!



比呂保保が倒れてる中で盛大にパーティーが繰り広げられた後 比呂保保は捕虜としてリ・アジュール帝国に連れて行かれてしまった。



この世界で比呂保保はたった一人 世界でただ一人の 唯一のチー牛となってしまった。


他のあらゆる人間はパリピ リア充 の世界で

たった一人 よるべなく漂う一人のチー牛が


ハヤットに敗れ、ハヤットの国で

これから地獄のような生活を送る事になる。


比呂保保はそんな思いを抱きながら 拘束着を着せられ 高速艇に乗せられてニッホン国を後にしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ