世界を支配していたチー牛
2024年 世界はチー牛に支配されていた。
比呂保保はチー牛の王専用ジェット機 というものにのせられ世界をまわることになった。
どうやらしばらく後で比呂保保の復活祭が催されることになっており、その準備期間が終わるまでの数ヶ月、世界の現状を比呂保保が把握できるように一回りし現代の基本的なことについての授業が機内で行われるようカリキュラムが組まれていた。
数十か国をまわり今の世界がどうなっているのかを実際に現地におりたち主要な場所をめぐり視察が行われその場所にまつわる産業や重要なもの 歴史について細かに教えられた。
その中で現代の教養などまったくない比呂保保に唯一理解できたことがあった。
世界はチー牛の楽園 チー牛が価値 チー牛がステータス どれだけチー牛であるかで社会での立ち位置が決まってるようなのだ。
最初に視察におりたった土地はチベットだった。
チベットの山奥では真のチー牛になるための修行が行われていた。
チー牛師範と呼ばれるものが大勢の修行者を指導しており、怒号が飛び交っていた。
そんなことでチー牛になれると思ってるのか!? このチー牛寺院での修行は苛烈を極めたが 一部の選ばれものだけが真のチー牛の資格をもらえることができた
チー牛免許皆伝 これは現代における医師免許と会計士資格と弁護士資格を掛け算したくらいのステータスがあった。
ここで真のチー牛として認められるとあらゆる国から融通をうけ成功が約束されるとされていた。
この資格があるとどの国もVISAなしで入れるようになり、公共交通機関、公共施設のほぼ全てを無料で利用でき、世界で最も信用の高いステータスになるのがチー牛ライセンス免許皆伝である。
産業の強いアメリカでも
子供たちは一流のチー牛になれるように 幼少期から猫背になるように訓練を受け 下をむいてあるき、あたりをキョドキョドと見回したりするのが良しとされた。
会話する時は相手の目を見ているにも関わらず焦点があってないような感じで見つめる眼差しが美しいとされて、チー牛っぽい眼差しメイク が載ると美容雑誌では定番の項目だった。
比呂保保の作った世界はチー牛であることが最も崇高な価値だった。
企業ではチー牛による圧迫面接すらあった。チー牛じゃない一般人は面接で不利だった。一流企業はみなチー牛ばかりだった。
「もっと何言ってるかわからない感じで喋れ!!」
「なんだそのシャキッとした感じは!?」
ハキハキ喋る学生に対して上から目線で重役がこのように怒鳴っていた。その重役も何言ってるのかモゴモゴしていてイマイチ何を言ってるのか受験者はよくわからず質問内容もよくわからなかった様子だった。
受験者はなんとかずば抜けたコミュ力で何を言おうとしてるか察して相手の意を汲んで素晴らしい解説をしたが
それはここでは醜い行為である。理屈 論理性 饒舌 相手の反応や表情の機微を読んだ空気を敏感に察する高度なコミュ力 こう言ったものは最悪な評価を受ける。
空気を読むと言ったことは極めて下品な行為だとモゴモゴ怒鳴り、重役は受験者に昨日の賄いで余ったカレーうどんを頭からかけて受験者を追い出していた。
どこもかしこも チー牛ファーストの時代になっていた。 チー牛であることがステータス。 チー牛が価値 チー牛フィギアは飛ぶようにうれ アイドルもアニメも漫画も チー牛のみためがよしとされた。 一時期SAOのキリトみたいなキャラがそこら中にいた時のように、主人公の容姿はチー牛っぽいものが基本的な主人公のデザインとなっていた。
たまにチー牛以外のデザインが出ると非国民として叩かれ、体のがっしりしたもの 背の高いもの 線のふといもの はきはきしゃべるもの は 異端として 見下され要職につけず地方に追いやられていた。
アイドルグループはみんなチー牛っぽい顔で占められていた。一部にはさいきんのアイドルはみんな同じ顔だと揶揄する老人も居る。
日本国憲法には 基本的チー牛権の尊重 という項目があり、ここが他のどの項よりも分厚かった。
中身はチー牛の讃美歌のようで、明るく強いものをなじるような表現もふくまれていた。
一通り世界の状況について実際に飛行機にのって世界がいかにチー牛色に染まっているかをその目で確かめたあと一行はまた日本に戻り、比呂保保が目覚めた施設に戻った。
比呂保保たちが世界視察を終えて帰ってくる頃には
比呂保保復活祭の準備が終わり比呂保保は盛大に祝われた。
復活祭では
現代のVIP 大企業の社長 総理大臣 一流スポーツ選手 一流ミュージシャン インフルエンサー お笑い芸人 茶道本家 世界的な画家 有名な小説家 宇宙飛行士 世界遺産の管理者 国際的な平和活動家 ノーベル賞受賞者 ミシェランシェフ トップゲームクリエイター 映画監督 人気アニメーション監督 トップファッションデザイナー 漫画家
ステータスをもってる人間はみなチー牛だった。
そんなチー牛VIPたちが1000名以上もあつまり、今日という日を祝った。
チー牛皇居の外ではさらに盛大なお祭りが開かれ 十数万という国民たちが集まりお祝いをし祭りを楽しんだ。 世界中で同様の祭が開かれ比呂保保の復活が祝われた。
比呂保保は復活祭でのステージの上であいさつをすることになっておりなんとなく盛り上げた方がいいのかと思いつい調子に乗ってコールを始めてしまった。 原始時代の洞窟内での飲み会で大失敗したあのコールをつい出してしまった。
「飲〜んで飲んで飲んで!飲〜んで飲んで飲んで!飲〜んで飲んで飲んで!飲んで? 飲め飲め飲め飲めチャッチャチャ!アイ!チャッチャチャ!アイ!GOGOレッツゴーレッツゴー!GOGOレッツゴーレッツゴー」
集まったチー牛のVIPたちはぼーっとした目で比呂保保を眺めた。さっきまで復活祭で賑わっており皆笑顔で楽しそうに談笑していたのが一変 空気が凍りついているかのようだった。
比呂保保は原始時代で空気が読めないタイミングでコールをした時の洞窟でのトラウマが蘇り苦悶する。
うわぁあああ!比呂保保はまたコールを失敗してしまったのかと思い、またコレでコミュニティ内での立場が悪くなって追い出された時の恐怖を思い出し頭を抱えて跪いてしまった。
だが
皆しばらく放心したかのように比呂保保を見つけた後咽び泣くように泣き出したのである。
比呂保保、、様、、、!!
比呂保保様!!
比呂保保様!!
間違いなく 間違いなく比呂保保さまなのですね!! いや疑いなどしておりませんでしたが見た瞬間からその神々しいお姿 既に心酔しておりましたが改めて見るとやはり素晴らしい!
コレこそ我々の王だ!
比呂保保! 比呂保保!
チー牛VIPたちは号泣しながらも比呂保保を大絶賛し生ける神を賛美しつづけた。もはや怒号のような大歓声が広がり始祖のチー牛をあがめたのだった。
比呂保保は完全に思っていたリアクションと全く違い困惑しかなかったがどうやら盛り上がったらしくとりあえずこの結果に満足することにした。
比呂保保はこの世界を少しづつ好きになってきたのだった。