プロローグ 死後ライフの幕開けです。
何となく思いつたので執筆しました。こちらも楽しんで貰えたら幸いです。
それはあまりにも突然に、何が起きたか認識する前に終わっていた。まるで、死神が気配を消し後ろから魂を刈り取るのと同じで簡単に僕の命を奪いさり、それを手中に収めていた。返せ!それは僕の物だ!と消え入る意識の中、うっすらと見える人影に向かって手を伸ばしていた。自分の幻覚が生み出した死神かな?それより、体の感覚が無く冷たくなってきた。自分の死が近づいているのが嫌でも分かった。その様子を死神は黙って見ていた。いつまで僕は幻覚を見ているんだ。それに死神は僕を見下しながら嘲笑っているように見えた。自分の幻覚で生み出した死神に嘲笑われてるとかどんな羞恥プレイだよ。薄れゆく意識の中しょうもないことを考えいた。あぁ、何故僕は、死んでしまったんだ?段々と視界が曇っていき、瞼を開ける気力すら今の僕に残っていなかった。結局、最後まで自分の死因が分からず意識はそこで切れた。
....................
.............
........
「お....て....だ....さい!....」
何だ?声が聞こえる。女性の声?声からして若い女性だと推察できる。なんだ、迎えが来たんだ。死神とか、よく分からないものじゃなくて良かった。僕は天国と地獄どっちに行くんだろう?その前に閻魔様に審議にかけられたりするのだろうか?そもそも閻魔様とかいるの?ファンタジーの世界みたいに架空の存在では?うーん。分からん。あーもう、さっきからうるさいな、さっさと連れて行ってくれよ。ん?というか僕、なんで意識こんなハッキリしてるんだ?実は死んでない?夢落ちというパターンか?考えれば考える程余計に混乱したが、一応試しておきたいことがあった。ぐっと力むように力を入れた。すると力は....入る。という事は、目もあけられるのでは?そう思い、恐る恐る瞼をあけると最初に写ったのは、鎌を持った女性が今にも僕にその、凶悪な形をした物を振り下ろそうとしていた。
「あっ。起きた。」
「き、きゃぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
ばっと体を起こし。自分の体に傷などは無いか確認をした。と、とりあえず大丈夫そうだ。胸を撫で下ろし。鎌を振り下ろしうとた張本人を睨むとガッカリしたような顔をしていた。
「ちぇ、もう少しで殺れたのに」
「ふざけるな!死んでたまるか!」
「何言ってるの?もう死んでるわよ?」
「え?だって今、殺れたのにって」
「あー、それは君じゃなくて黒く光るあいつの事よ」
「Gのことか!?」
黒く光ると言われ、思いつくのはあいつしかいない。ど闇に紛れ、どこの家庭にも現れる奴。素早い身のこなし、驚異的な生命力、何よりこちらの動きを察知する鋭い感覚。これだけなら普通に漫画とかのラスボス級の強さに見えるが、奴は数センチしか満たないあの体躯でこちらに恐怖心を植え付けてくる。まだ、漫画に出てくるラスボスの方がマシだ。想像するだけで身震いがする。なんて恐ろしい奴なんだ。しかし、目の前の女性はGと聞いて頭にハテナマークを浮かべてそうな顔をしていた。
「G?何それ?コードネーム的な?」
「Gを知らない?小さくて素早い奴だよ」
「うーーん。やっぱり分からないわ」
嘘だろ?Gを知らないなんて。見た感じ髪の色は白髪だが、スムーズに日本語で会話出来ている辺り日本人で間違いないのだが。というか、なんだその格好。今気づいたが目の前にいる女性の服装がかなり見覚えのある格好だった。いや、自分も学校の授業で着ていた。通気性がよくそれでいて頑丈に作られておりちょっとやそっとじゃ破れないし寝巻きにもピッタリのジャージを着ていた。赤色の。ますます、分からなくなった。夢?夢なのか?夢であってくれ。そうでもしないと説明がつかない。なんだ、ジャージ姿の美小女が鎌を持ってるって。おかしいだろ。色々、渋滞してるって!えぇ、何このカオスな空間。ここだけ時空歪んでたりしない?駄目だ。脳が考える事を拒否している。この状況に対して考えたくないと、現実逃避したいと訴えかけてきている。ん?現実?そういえば夢なら自分を抓っても痛くないとよく言われている。物は試しだ、自分の頬を思いっ切り抓った。.....痛っ!?という事は夢ではない?え?じゃあ、あの、色々渋滞しているのも夢ではなく現実?えぇ....。ガックリと項垂れ振り返ろうとすると。自分の右側に何かが素早く振り下ろされた気がした。恐る恐る向いてみると鎌の刃が地面に突き刺さりひび割れていた。サーっと血の気が引くのを感じる。いまの僕って血が通ってるの?そんな事はどうでも良くて!
「お、おい!?さっきから何だ!その物騒な物を僕に向かって振りかざすな!!」
「だ、だって!そこにいるんだもん。黒く光る奴が」
「ど、何処!?」
嘘でしょ!?全然気が付かなかった。足元や自分の周りを見ても特に素早く動く黒い物体は見つけられなかった。なんか、代わりにふよふよと漂ってる黒い人魂ならあった。ん?人魂?なんで見えるん?死んだから力が覚醒したとか?いや、それこそ、夢であって欲しい。特に自分の周りに再度危険がないことを確認し目の前の女性に向き直った。しかし女性は足元にいる人魂を指さし、片手に持っていた鎌をまたしても振りかざしてきた。
「そこよ!足元にいる黒い人魂よ!」
「うわっ!?だ、だから止めてと言ったはずでは!?」
「あなたじゃなくて、その黒い人魂に用があるの!待て、このっ!うろちょろするな!」
「ちょっ!?危なっ!?」
鎌を横薙ぎで降ってきたのでそれをギリギリの所でリンボーダンスするような状態で紙一重で躱す。その後も暫く、僕の周りをうろちょろしている人魂のせいで避け続ける羽目になった。お互い体力が尽き、肩で息をしていた。
「はぁ.....はぁ...はぁ...な、なんで...当たらないの...」
「はぁ....はぁ..はぁ...ぼ、僕に....言わないでくれ...そこの人魂に....聞いてくれ」
「こ...こたえて...くれないで...しょ」
「我を殺そうとはいい度胸だな?」
「「!?」」
「い、今...喋らなかったか?」
「う、うん。しゃ...べった...よね?」
「...........」
「おい!何、知らんが?みたいな態度してるんだ!今完全に聞き覚えのない声がしたぞ!」
「...........」
「ちょっと貸して?」
「う、うん」
鎌を借り、僕の周りを浮遊している人魂の動きを見極め、鷲掴んだ。それでも尚、白を切るつもりのようだ。黙ったままだ。こうしていても埒があかないので借りた鎌の刃を人魂に向けた。
「驚いたよ。人魂ってつかめるんだね。そのまま君が何も言わないのなら分かるかい?」
「........」
「そうかい。交渉決裂だね」
「わ、分かった!分かったから!」
さっきまで大人しかった人魂が急に手の中で暴れ始めた。逃がさないようにさらに力を込める。何も考え無しに行動してしまったけど。どうやら今の僕は人魂を視認できるだけでなく触ることもできるようだ。
「あだだだだだだだ!つ、強いって!潰れる!潰れる!」
「このまま潰してもいいんだが、いくつか聞きたいことがあるから我慢しよう」
「君、見た目の割にかなり凶暴だな」
「ん?」
「ごめんなさい。なんでもないです。我のわかる範囲ならお答えします」
「許す」
「あ、あなた可愛い顔してやる事えげつないのね....」
可愛い顔と言われて嬉しくないわけないが、えげつないは余計だ。それにしてもだ。まじまじと人魂を観察すると見たまんまである。黒い炎の塊にしか見えない。何故僕の周りを浮遊していたのか、何故目の前にいる美少女に追いかけ回されていたのか?謎が謎を呼んでいる。この現状を打破できるのか分からずじまいなのか、ある種この人魂にかかっていた。
「とりあえず、名前は?」
「無いよ。そこのお嬢さんたちからは人魂と言われている」
「何故、僕の周りを浮遊していたの?」
「分からない。我も気がついたら君の近くにいた。そして何故か君から一定の距離離れると我は消えてしまうらしい」
「じゃあ、投げて遠くに飛ばしてみようか」
「それはやめた方がいい。理由は分からないが我と君。どちらか一方でも消えるとお互い消えてしまう」
「え?じゃあ何。運命共同体ってこと!?」
「そうらしい」
なんじゃそりゃ!?よく分からないうちによく分からない人魂と運命共同体になってしまったようだ。今のところ有益な情報は運命共同体位しかない。有益なのか怪しいが、これで1つ分かったことがある。僕の周りを浮遊していた理由だ。ある一定の距離どちらか片方でも離れると人魂は消えてしまいそれに伴い僕も消えるという事は、その逆も然りで、可能性として僕が何らかの理由で消滅、あるいは死亡?した場合、人魂も漏れなく消滅するだろう。この人魂の事はよく分からないが、よく分からないからと言って巻き込むのはあまり気持ちの良いものでは無い。あと、僕も消えたくないし。
「あと、なんで追いかけられてたの?」
「この世界では我々黒い人魂と言うのは良くないものらしくてな」
「そこからは私が説明するわ」
人魂の話を遮り、未だに名前も知らない美少女が割って入ってきた。正直この人魂より、この世界のことを知っていそうだし。何よりこの美少女の事が何かわかるかもしれない。
「まずは、自己紹介ね。私の名前はモルネ。霊界管理本部死神課特殊機動部隊に所属しています。自己紹介が遅れて申し訳ありません」
「いえいえ、で、モルネさん?は何故この人魂を狙ってるんですか?」
「モルネでいいわ。見た感じ歳が近そうだし。それにこの世界に歳は関係ないわ。だってみんな歳を取らないからね」
「歳をとらない?それは、もう死んでいるから?」
「そうね。簡潔に言うとここは死後の世界よ。じゃあ何故、痛覚や嗅覚等が機能しているのか疑問に思うわよね?」
確かに言われてみると嗅覚も機能していることが分かる。気が付かなかったがモルネからは女の子特有の甘くていい匂いがしていた。なんか、変態みたいな感想になってしまったが勘違いしないでいただきたい。ありのままの感想を言っただけです。そのままモルネは話を続けた。
「確かにここは死後の世界。でも完全に死んだという訳ではないの。何故ならこの世界に存在しているからよ。死んでいようがいなかろうがこの世界に存在する以上歳をとる以外は生前と変わらないわ」
「じ、じゃあ。ここで死んだらどうなるの?」
「それは正真正銘消えるわね、ほんとに魂だけになり転生するまで待機よ」
「転生?生まれ変われるの?」
「ここも無限に人が住めるわけじゃないわ。限度があるの」
「ちなみに、転生するまでどれくらいかかるの?」
「それは人によってね。早い人だと1000年くらいかしら?」
そ、そんなに!?気が遠くなるほどの長い年月じゃないか。この世界に娯楽などあればなしは別だがなければ地獄だ。そもそもここは天国なのか地獄なのかもハッキリしていない。今更だが今自分がいるこの空間には何も無い。ただ白い世界が無限に続いている。無性に落書きしたくなる白さだ。
「今、長いと思ったでしょ?私も最初聞いて思ったわ」
という事は。今更だがここにいるモルネも何かしらの理由で死んでしまったということだ。見た目も僕とほぼ変わらないし若いうちに亡くなってしまったようだ。死因については流石に聞けるはずもなくなんと言っていいかわからず少し沈黙が訪れた。その静寂を破るように人魂が無い口を開いた。
「という事はお嬢さんは若くして亡くなったと言うことか」
「そうね。隠す必要も無いし言っておくわ。病死よ」
自分の死因を気にすることも無くごく普通の会話の話題かのように言い放った。少しびっくりしていると。モルネは僕の顔を見るなり微笑んだ。訳が分からなかった。何故、微笑まれるのか理由が見つからなかった。言葉が出てこない。何か言わなくてはいけないのに。考えれば考えるほど語彙力が何処かへ言ってしまい、結構何も思いつかづ俯いてしまった。すると、モルネが僕の頬を手のひらで優しく触れてきた。びっくりし顔を上げるとまたしても微笑んでいた。
「ありがと。驚いてくれて。この世界だと死因なんて日常会話と同じよ。気にしなくていいわ」
「そ、そうなんだね。僕、死んでから間もないからさ。慣れてなくて」
「いいわ。私も最初の頃はあなたと同じだった。っと脱線しちゃったわね。何処まで話したかしら?」
「我の記憶だと、転生の所までではないのか?」
「ありがとう。その辺ね。話を戻すと。転生と言っても全員出来る訳じゃないの」
「というと?」
「この世界にも犯罪を犯す人はいるわ。その人達は魂を檻に閉じ込められ永遠に転生出来ないと言われているわ」
まじかー。この世界にも犯罪があるんだ。ほんとに生前とほぼ変わらないんだな。というか死んでも犯罪犯すなよ。バカは死んでも治らないと言うがそうらしい。やはり真っ当に生きた方がいいんだなと、再認識させられた。モルネが先程より真剣な顔になり人魂を指差した。
「で、次なんだけれど。あなたよ。黒い人魂のあなた」
「やっと、我の事か。正直我が何者なのかよく分かっていなくてな説明を頼む。」
「えぇ、いいわ。簡潔に言うと黒い人魂は大罪を犯したと判断された人がなるのよ」
「ど、どういうことだ!?我、何か大変なことをしでかした覚えはないぞ!?ほぼ記憶ないけど」
「そして、私達死神課特殊保安自治隊は黒い人魂の処分を許可されているの」
ばっと、手帳を見せてきた。そこに制服を着ているであろうモルネの顔写真が貼ってあり。自分が死神課特殊保安自治隊に所属していることを証明していた。しかしだ。ここに来て驚きの新事実。まさか僕の周りを浮遊している人魂が大罪人だったなんて。でも、消えると僕も一緒に消えるらしいし。正直どうしたらいいか分からなかった。
「でも不思議なのよ。あなたから感じられないの。悪意が。」
「それはそうだろう。我、何もやましい事はしていないからな。ほぼ記憶はないけど」
「なんでさっきから記憶喪失を強調するんだ」
「記憶はないが確信しているのだ。我の魂が本能がそう訴えかけている」
魂がって。魂そのものじゃないか。そもそも正体も分からない人の言う事は申し訳ないが全部信用出来ない。ましてや会って間もないやつの言うこと鵜呑みにできるか!じーっと人魂を凝視する。
「何か隠してない?」
「我何も隠し事などしていないぞ」
「ほんとにぃー?」
「そこは安心して。その人魂は今の所ウソはついてないわ」
「なんでわかるの?」
「眼よ。私の眼をよく見てちょうだい」
そう言われモルネに近づいた。モルネは自分の右眼を指さし、「ほら赤いでしょ?」っと見せてきた。吸い込まれそうな深く赤い綺麗な瞳だった。ただそれ以外は何の変哲もないカラコンを入れた眼にしか見えなかった。
「カラコン入れてる?」
「違うわよ!これは死神の眼!」
「うわっ。厨二病っぽい!」
「厨二病?まぁ、いいわ。私の眼は相手の嘘や悪意が見えるの」
「すごっ!」
「悪意がある場合は紫。嘘の場合は赤。オーラみたいなものが周りに漂うの」
「で、この人魂には何もないと?」
「そうなのよ。黒い人魂は大体紫のオーラを纏っているはずなのにそれが無い」
「ふふっ。そうであろう?我!清廉潔白なり!」
「まぁ、君と僕は一心同体だから、処分されても僕が困る」
「そこが問題なのよね。黒い人魂は処分対処。しかしその人魂からオーラが出ていない。尚且つ無関係な女の子にとり憑いていて運命共同体」
「君、女の子だったのか!?」
「失礼な人魂だな!?僕はれっきとした女性さ!」
「少し髪の長い中性的な男性かと思ったぞ。確かに男性にしては華奢だと思ったが.....」
「おい!何だ!最後の間は?喧嘩売ってるのか?」
「.......」
人魂に顔なんてないがどこを見ているのかハッキリ分かった。あぁ!そうですよ!僕は胸が小さいですよ!服で分かりづらいだけで多少なりともありますとも!なんてデリカシーのない人魂なんだ。というか服装で気づけよ。女の子らしい格好して.....なかったわ。今更ながら自分の服装を見てみてると黒の無地のTシャツに灰色のショートパンツ姿だった。完全に部屋着である。髪型もシンプルなショートヘアだ。確かに髪の長い男の子に見えても仕方なく無いわ!少し傷ついたわ!確かに一人称が僕だから小さい頃はよく間違われた。なんかよくわかんないけど私って言うの恥ずかしいんだよね。まぁ、僕っ娘ってかなりレアじゃない?ってそんな事はどうでも良くて、少しだけど自分が死ぬ前の記憶を思い出した。確かに僕は自室にいた。この部屋着姿が確かな証拠だ。部屋で漫画読んでたら、お父さんの声が聞こえて、そこから....。駄目だ思い出せない。無理に思い出そうとすると脳が拒否するかのように頭痛がする。かなりの激痛が走り、思わず蹲ってしまった。
「うぐっ!?」
「だ、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫!?顔色ひどいわよ?」
「う、うん。大丈夫。少し自分が死ぬ前のこと思い出したんだ」
「とりあえず、顔色が良くないわ。私が勤務している職場に行きましょう」
「で、でも。どうやって?」
「それはね。こうするのよ」
ポケットからおもむろに鍵らしきものを取り出した。金色の鍵でいかにも宝箱の鍵を開けるのに必要そうな見た目をしていた。装飾された鍵を何も無い空間に突き刺した次の瞬間茶色の扉が現れた。手品ではい。今現実で起こった事に唖然としていると。モルネが手を差し伸べてきた。
「少し歩くけど、大丈夫かしら?」
「大丈夫。今の衝撃でどっか行ったよ」
「でも、無理は良くないわ。職場に行けば飲み物くらい出せるはずだから」
鍵穴に刺さった鍵を右に回し引き抜きドアノブを捻り扉を開けるとそこには今まで真っ白な空間から見慣れた景色に変わった。多くの人が行き交い、信号機や高層ビルなど、生前自分が住んでいた世界と何ら変わらない建造物があちらこちらに建っていた。唯一違うとすれば人が空を飛んでいる事だ。アニメや漫画のファンタジーや魔法の世界でしか見られないと思っていたがまさか自分の目で見られるとは思っていなかった。
「文字通り、声も出ないって顔をしているわね」
「そりゃそうだろ!人が空を飛んでいるだよ!?」
「ここでは普通よ。慣れよ慣れ」
「その言い方だとモルネも僕と変わらない反応したんじゃ?」
「そ、そんな事ないわ!私はいつだって冷静よ」
そうだったか?最初会った時かなり冷静さを失っていた気がするが。全然関係ないけど頬を赤らめて否定してくる姿が可愛い。美少女って見てるだけで癒されるよね。目の保養だよ。ってあれ?さっきまでいた人魂が居なくなっていた。辺りを見渡してもどこにも居ない。まさか!?置いてきたとか!?いや、だとしたら僕は消えているはず。消えていないと言うことは近くにまだ居るはず。出てきた扉に戻ろうとすると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
「我はここだ。」
振り向いても黒猫しか居なかった。いつの間にいたんだ?迷子かな?にしても猫って可愛いよね。無性に撫でたくなる。無意識のうちに手が黒猫に伸びていた。
「我を撫でようとするな」
「うえっ!?猫が喋った!?」
「あなた、変身できるのね」
「さっき、お嬢さんが黒い人魂は処分対象と言っていたからな。あのままでは危険であろう?」
「で、猫に変身したと?ていうか変身って便利な人魂だなぁ」
「目が覚めた時色々試してみたら出来たのでな」
「確かに、喋る猫なんてここでは普通だわ。他にもできるのかしら?」
「まぁ、イメージできるものならなんでも出来ると思うぞ。ほれ」
そう言って僕と同じ姿になった。容姿は僕と同じ。違う点は目の色だった。僕は純日本人なので黒目なのだが、人魂が変身した僕の目は黄色だった。あと猫耳が生えていた。
「なんで猫耳生えてるんだよ!」
「可愛いであろう?」
「僕の姿だから気持ち悪いんだよ!」
「これはこれで可愛いわね」
「モ、モルネ?」
「まっ、これで問題はなかろう?」
「ちょっ、僕の方に乗るな重いだ....ろ?あれ?」
軽やかに跳躍し僕の肩に乗ってきたが重みを全く感じなかった。でも確かに乗っかっている。すごい不思議な感覚だが、重くないのならまぁいいか。実は少し憧れていたりする。肩に小動物を乗せる事に。だってなんか良くない?まぁ、いいや。この黒猫もとい人魂とは運命共同体。下手に離れられてお互い消滅は避けたい。目に見える範囲にいてくれるなら問題は無い。
「そういえばさ。名前は聞いてないよね?」
「ん?我か?そうだなソリットとでも名乗っておくか」
「ソリットね。僕の名前は一ノ瀬舞」
「舞か。可愛らしい名なのだな」
「そうね。可愛らしくて素敵な名前だわ。よろしくね舞」
「な、何だか、恥ずかしいな」
自分の名前は嫌いではなかったがこうも、可愛いと連呼されるとむず痒いものがある。悪い気はしないけどね?
コホンとモルネが咳払いをし。当初の目的であるモルネの職場に行くために歩き始めた。
「遅めの自己紹介も済んだし。少し案内しながら目的地まで行きましょうか」
「それは助かる。なぁ?舞」
「いきなり下の名前かい。別にいいけどさ」
「置いて行くわよ?2人とも」
「ま、まって!置いていかないでよモルネ!」
こうして僕の死後ライフが始まった。分からない事が山積みだが、1つ1つ解決していくしかない。心強いモルネとソリットがいるし、取り敢えずなんとかなる気がしていた。今はモルネが勤務しているという職場に行くことが何よりの手がかりだろう。肩に乗ってる猫のソリットを撫でつつモルネの後について行った。
どうでしたか?死後の世界ってどんなところなんでしょうね?想像もつきません。それではまたー。