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悪魔の呟きが聞こえてきたなら僕はどうなる?闇からの招待状を貰ってしまった。

作者: 神名代洸

社会人になってはや一月。

でもまだまだ覚えることは多々ある。

なんせ銀行員。

営業回りとかに当たるとこの暑さの中汗が頬を伝う。

別に暑がりじゃないし、体型も普通だよ?

でも僕は昔からそうなんだ。

汗をかかないからよくわからないやという友人がいるのだが、その方が逆に羨ましい。

多分水分ほとんど取ってないからかなぁ〜なんて笑いながら喋ってたな…。

僕は逆に水分取りすぎーってくらいとってるかも…。

カバンにはペットボトルが2本入っている。


午前は外回りの先輩について行き営業のイロハを叩き込まれる。

相手の顔色を窺いながらも取り付けるのが難しい。

先輩もなかなかとれないって言ってた。

お昼は外回りを終える時間内に簡単に済ませないといけない。

それが過ぎたら今度は内勤だ。

窓口業務にあたる。

ホント覚えることが多すぎてテンパることが多いので何とか処理しようとするも間違えることもあり、先輩に叱られることも多い。ウンザリするんだと言いたくても言えない。

そんなこと言ったら怒られそうで……。


そんな普段と変わらない日常のある日、僕は幻聴でも聴いたんじゃないんだろうかと頭をかしげる体験をする。

だってさ、小さな声で【ボソボソ】っていってるんだよ?僕にはさっぱりさ。

暑さのせいで頭がいかれたのかもと思ったが、さっきから聞こえる言葉はおんなじだ。

嫌だなぁ〜。

こっそりと周りを見てみるも誰一人として僕と同じ体験をしている人はいなさそうだ。

これは悪戯か何かか?

先輩達がするとはとても思えないが、同僚ったって僕と同期は女性が一人いるだけ……とても話したりなんかできないよね。無理だって。

だからそっちの場合じゃないと除外したらあとは先輩しかないじゃないか。やるか?マジで……う〜ん、なんかやりそうな人がいるんだな、これが。


まぁ、今のところ実害はないから放置でいいかと安易な考えをしていたのだが、ある日の出来事によりそんな悠長なことを言っていられなくなってしまうことになるとは……。自業自得と言えるのかもしれないが、それで納得できるほどできた人間じゃないからさ。カチンときたわけよ。

これは犯人を捕まえなきゃ目覚めも良くない。

でも誰に手伝ってもらうかで悩んだ。

同期は女子、とても頼りになるとは思えない。だって現にこちらから何かを話しかけてもオロオロするばかりだし。問題外だね。


という事で身近な先輩を頼ることにした。

ただこの先輩、人づてで聞いた話では霊感がバリバリあるらしい。大丈夫だろうか?




昼休憩の時間になった為先輩の元に急いだ僕はいないかもと思っていたが机に向かって何かをしていたことにホッとしている自分がいてビックリしていた。

ただ時間は短いから簡単に話して聞いてもらうだけでいいかなと思っていた。

先輩は僕の話をきちんと聞いているのかわからないくらい下を向いたままの格好でいたのだが、突然立ち上がり僕の顔をキッと見つめた。

僕はいきなりだったので予想も何もなくただ呆然と立っていた。

「君…何課?」

「えっとぉ、部署はーー。」

「あーー言わなくていい。分かったから。で何しに来たの?……うん、うんうん。で?そう……。じゃぁ机の周りに盛り塩もっといて?それでもおかしなこと起きたらまた来て。」


【この先輩大丈夫か?さっき独り言喋ってたぞ?一体誰と話してたんだ?】


聞くのも怖くなりそうだったのであえて聞かずにさっさと自分のデスクに戻った。

そしてさっき言われた盛り塩のことを思い出したので近くの売店に走って買いに行った。あるか?普通。

なかったのでコンビニに走った。あったのでホッとして机の隅に邪魔にならないように盛り塩を盛る。

何か言われたら虫除け…とでも言って誤魔化そうと考えていた。

でも意外や意外誰一人として聞いてくるものはいなかった。

これも先輩のおかげか?

まぁいいやと思い、仕事に集中した。

終業時間まで忙しかったので、チャイムがなるまで気付かなかった。


さて帰りの支度をしていたらさっきの先輩がやって来て付き合ってという。どこへ行くんだろうと不安になりながら他の先輩はどうなんだろうと見て見たが、誰一人として一緒には帰らないみたいだ。僕は諦めて一緒に社屋を出る事にした。


「ブツブツブツブツ……。」何言ってるんだろう?不安しかない。でも声……かけにくいんだよね〜。そんな雰囲気を出してるんで。

「ブツブツ。」


いつまでたっても終わらない謎の独り言。

なぜに独り言?

でも時々どこかを向いて喋っているような感じがして怖い。

あ〜どうしよう?


「ねぇ。」

「ほえ?」

「ねぇってば。聞いてる?僕の話。」言われても何を喋っていたのか全く聞いてなかったので恐る恐る聞いてみた。

「すみません。よく聞こえなくて……。何かを喋っていたのはわかったんですが、それが何か…までは分かりませんでした。」


「ふ〜ん。そう…。じゃぁ問題。僕は誰と何を話していたでしょーか?」

「え?誰と何を?って先輩と僕だけじゃないですか。ここにいるの。他に誰かいましたっけ?」

「うん、いたよ?気付かなかった?」

「え?誰かいましたっけ?全く気づかなかったです。」


そう、確かにここには今現在2人しかいない。

ここは公園の隅のベンチだ。

普段からあまり人は通らない。

だからここで良くない事が出来るのだ。

防犯カメラも設置されてはいない。

盲点だ。


「……ねぇ、いるよ?ちゃんと見てあげて?」

言われてもやはり誰の姿も見ることが出来ない。まさか……幽霊?ま、まさか…ね。でも見えないってことはそうなんじゃないかなって思う自分もいて恐る恐る先輩に聞いてみた。

「まさかありえないと思うんですけど、幽霊?…なーんてこと無いですよね?そんな嘘くさい話信じるわけないですよね?」「?何でそう思うの?いるよ?そこに。」そう言いながら指さした。僕は心臓バクバクいってるんじゃないかってくらい脈が早く感じて、それでも指さされた方へ顔を向けた。一瞬だが僕の顔のすぐ横に誰かの顔がみてとれた。でも怖くて振り向けなかった。


「ね?分かった?」

「ね?…じゃないですよ!黒い何かがいたじゃないですか!何なんですか?さっきのは…。黒って…。」

「うん、それが…僕も好く分かってないんだ。テヘッ。でもあまりいいものじゃないとは思うよ。真っ黒だったからね。普通は人の姿をしてるんだけど、さっきのは影…みたいに黒かったよね?」

「笑ってる場合じゃないだろ?あんたが分かんなくって一体誰がわかるってんだ!」

「まぁまぁ、そう怒るなよ。まぁ大したことないって。要するに見えなきゃいいんだろ?」簡単に言ってくれる。それが出来てるのならさっさとやってくれって言いたかった。

でもその日は特に何かをするではなくそのまま帰ってしまった先輩。大丈夫か?なんか忘れられてる感がするんだが…。


次の日の夜、1人で部屋にいる時に玄関のチャイムを鳴らされて出たのだがそこには誰もおらず、手紙がというかメモ書きが置かれていた。

その紙に書かれていたのは読みづらく、でも放置するには不気味で…書かれていた字は血かなにか赤いもので書かれていたようだ。気持ち悪くてたまらない。


すぐに霊感持ってる先輩と連絡とりたかったが、何故か連絡がつかず慌てた。

気持ち悪いよな。

厄年か?と思うほどに。



それから1週間後、ようやく先輩と連絡が取れたが先輩はごっそりとやせ細っていた。

何があったんだろうと思ったが下手に聞くのはなんなのでやめておく事にした。

仕事が立て込んでて先輩の事すっかりと忘れてしまっていたが、先輩の方からやって来てくれて何とも言えない気持ちになった。だってどう見たってやつれてるよ?この1週間の間に何があったのかが知りたい。でも聞いていいものなのかが分からない。


「あのさ、ちょっといいかな。」

「え?あっ、はい。大丈夫です。」

「これ…なんのか知ってるよね?」言われて見せられたのは僕ももらった紙の端キレ。

やはり先輩ももらっていたか。

もしかしてそれでずっと姿を見なかったってわけか?

なんか嫌な感じがする。よくない何かだ。


「君のところにも来たと言うことは……だから。」

「ま、まさか僕の所にも何か来る…とか?」

「そのまさかだ。」

「やだよ。そんなのありか?僕は真面目な人間だ。霊なんてのも今まで見たことだって無かったのに…。どうすれば逃げられますか?」

「無理だよ。」

「へ?無理?何で?」

「霊はどこにでも現れるから。壁なんかも通り抜けられるしね。全てが終わるまでジッとしているしかないと思うよ。」

そう言いながら片手をヒラヒラさせる先輩を見てたらイライラしてきた。でも同じ目にあうんだよね?ならどうしたら……って考えたんだ。1番いいのは自宅にひきこもって時が過ぎるのを待つことかなぁ?

どうやら先輩もそうしたみたいだし…。

ただ、どの位引きこもればいいのかは分からないって言ってたな。

人によって違うってことか?

ならと先輩と別れ仕事も早々に切り上げると体調不良ということで早抜けした。

ただいかにもーって体調が悪いていを見せながらだけれど、誰にも怪しまれなかったのは僕の演技が上手かったのか仕事が忙しくてこっちを見てる余裕がなかったのかは定かではない。


自宅に帰る途中食料を調達し、帰路に着く。両手にどっさりと買ったものを持っていたので汗をかいてしまった。

だからサッとシャワーを浴びて服を着替える。

片手で掴んで食べられるものばかりを買ってきたのでドリンクを手に準備をしていた。ある程度お腹に詰め込むと少しは落ち着いたかなっておもい、布団の上にゴロンと横になる。

時間は午後10時。

幽霊が出るには早い時間だと思っていたのにベランダに置いてある草木が揺れた。気がした。風もないのにね。

手元には懐中電灯、携帯とランタンがある。

気分が悪くなったら雑誌で気を紛らわす作戦だ。

時計を見たら11時になろうとしている。

その時天井の灯りがチカチカした。偶然か?

怖くなったからテレビをつけた。でもおかしいんだ。画面がつかない。真っ暗のまま……。

その画面のすぐ側に何やら見えた気がした。白いモヤのようなものだ。

僕は目が悪いから気のせいかと思っていたのに…。

携帯を手にカメラモードにしてシャッターを斬る。

何度も何度も。

呼吸が荒くなっていた。だって怖いんだよ?当たり前じゃん。

震える手で画面を変え、撮った写真を見てみる。

やはり写っていた。

これが見える霊というものか?

それが写真いっぱいに写っている。不気味だ。

それを見ていた時、部屋の戸がバタンと開いた。

驚いた僕は固まってしまった。

怖い怖い怖い。


恐怖との戦いだ。

目を閉じてやり過ごしたくても耳から声が聞こえてくる。

叫び声とも奇声とも言えるものだ。

怖すぎて一瞬だけ目を開けた瞬間視界の中に見えたのは真っ黒なフードを被った髑髏の顔だった。

マジ怖いよ。

叫んだ。怖すぎて。

でも誰も助けには来てくれない。

何故って?

一人暮らししてるからさ。

念願だった一人暮らし、こんな形で過ぎるのはやだったけど頭には【怖い逃げたい。】それしか無かった。

先輩はこんなの1週間耐えたんだ。すっげ〜!

でも僕には無理だ。

耐えられない。

ただ霊を見た瞬間に腰を抜かしてしまったようで立てなかった。泣くしかない。


その日はなんとか耐えられたけど、こんなの後何日続くんだ?僕は冷や汗を書きながらそれから3日間耐えた。でもそれが限界だった。

気が狂いそうになる中5日目を耐えた時、もうどうなったっていい。楽になりたいよ。

そう願ってしまった。

心が折れたのだ。



その日を最後に僕の姿はこの街から消えた。

先輩が必死になって探しても見つけることは出来なかった。

僕はどこにいるのだろう??

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