第2話 傘
カラン カラン
俺は
1本しかない足に履いた
ゲタを鳴らし、
建物を見渡した
俺の
傘から生えた足は
たった1本
傘の真ん中には
たった1つの目
今どき
流行もしない赤い傘だった。
「誰か、いねぇのか?」
声は空しく響き
他の誰かの声は
返ってこなかった
「ムムッ」
きっちりと閉まった扉に
(あるハズのない)
眉間に皺を寄せた
「さすがにコレは
舌じゃ開けれんなー」
ドンドンッ
舌で叩くと
ギイと
扉が開いた
「ん。?」
「いらっしゃいませ」
中から
やたら整った顔の男が
出てきた。
「色、白っっっ」
思わず叫ぶと
男がニコッとした
「中に入ったら
どうです?」
多少
苛立ってるような声で
ハッとする
「怒ったのか!!?」
初対面で
アレは失礼だったか
と今さらながら
気付く
「入らないないなら
閉めますよ?」
相変わらず笑顔だ
アレ?
怒ってる訳じゃない?
俺は
開いた扉のすき間に
首だけいれて
覗いた
(正直
自分でも
首がどこにあるか
分からない)
「フォアー
綺麗だなー」
中には
綺麗な観覧席。
「閉めますよ?」
「やっぱ怒ってるのか!?」
この状態で
閉められたら
首も絞められる
「色、白いって
素直に言ったから
怒ってるんだな!?」
「しめますね。」
「痛だだだだ!!!」
「さぁ
お掛けになって下さい」
男は
会話を
無理矢理打ち切って
指を鳴らした。
すると
照明が光を失って
スクリーンに
映像が
映された
◆◇◆◇◆◇
『ハァ』
嘆息をもらす
自分でも
嫌になる姿だ。
1つしかない目は
不気味でしかたないし。
1本しかない足は
何より不格好だった。
『どうしたの?』
『ひっ』
情けない声を出し
振り返ると
子供が立っていた
怖がるでもなく
じっとコッチを
みていた。
『お前…
恐くないのか?』
『べつに』
適当に切られた髪から
冷ややかな瞳がのぞく
『…お前も
疎開するのか?』
『そうだよ』
いつの時代だったかなんて
覚えてない
とにかく戦争の盛る頃だった
『そうか…
お前もこの地を
捨てるんだな…』
少年は、
俺を一瞥して
『命には代えられないから』
と言った。
全くその通りだと
俺も思う。
『でも、
お前の言ってるコトは違う』
少年は地面に座って
意味の分からない
マークを書く
『僕はココに帰ってくる』
『…本当か…?』
『本当だ』
『…』
『言ったからには守るよ』
『そうか』
『そしたら、
君にも会えるかい?』
『会える。
俺はこの地にいるから』
『じゃあ、
また会う日を待とう』
それだけ言うと
こちらを見るコトもなく
手を振って少年は去って行った
『お前のコト
待ってて良いだかー?!!!』
そう叫ぶと
『あぁ いいよ
また会おう。
約束だ』
静かに言葉が
帰ってきた。
あの日から
俺はお前を待っている。
空襲の時に鳴るハズのサイレンも
やがて
鳴らなくなった。
『痛っ』
空は真っ青。
焼け尽くされた地は
黒が広がるばかり。
『痛でででで
ってワチャー!?!』
慌てて体を起こす
『燃えとるがなー!!!ワチャチャ』
必死になって
傘に移った火を消す
『…ハァ』
火が消えた後に
素手を見つめる。
『あーぁ』
素手で火を消したため
火傷がひどかった。
『…帰って…こないなぁ』
少年が。
という意味ではない。
人が。
という意味だ。
それから
何年がたち
人々が戻ってきた
ただ
少年は帰ってこなかった。
『ハァ
また溜め息がでるべやー…』
人々が帰ってきたは
いいものの。
今度は身を隠す生活だ。
『ねぇ、』
『んぁ!?!』
声に振り返るが
誰もいない。
『コッチ、』
『んん?』
遠くの方に
あの少年をみつける
『あっ!』
しかし、
少年は身をひるがえし
走り出す
『なっ!オイ!!』
傘を広げ
空を飛ぶ。
下から見れば
傘が飛ばされてるようにしか
見えないだろう。
『ったく
どこに行くんだか』
すると少年は
半壊の民家に
入っていった
フワッ
降りて中に入る。
ガタッ
隣りの部屋から人影が現れ
俺は それが
誰かも確認せず
声をかけた。
『なんなんだよ
こんなトコに
連れて来て』
カシャーン
それは少年ではなく。
やせ細った女だった。
『キャー!!!!!』
『キャー!!!!!』
2人して
叫び。
その場に固まった
沈黙を破ったのは
女だった。
『あなた…』
俺は口だけパクパクしていた
『土足で上がってんじゃないわよー!!!!』
スコーン
その瞬間
明らかに
金属製の物を投げられた
それに、
土足って
もっとツッコミ所あるじゃん。
俺、妖怪だよ??
薄れゆく意識下
女の度胸と底意地に
恐怖を覚えた。
『あのーもしもーし』
『…』
『あ。起きた』
『…』
『いやー、すいませんでしたね。
ついね。アハハ』
つい で
あんだけやれれば
充分だ。
『えーっと、ハイ』
女は
茶封筒を渡して
ニコニコする
『…え?』
『コレを取りに来たんじゃないの?』
茶封筒の宛名には
俺の似顔絵
『俺…宛て?』
『そうよ。
ハイどうぞ』
それを
受け取って
『アイツは?』
聞いたら
優しい笑顔が返ってきた。
◇◆◇◆
ジー
なぜか映像は
そこで途切れた。
「中途半端な終わりだべや」
「そうでしょうか」
「そうだべや」
「では、手紙を開いて
終わりにしましょう」
「…いや、
いいべや」
席を立つ。
そのまま
扉の前に立つ
「開けてくんろ」
「どちらをですか」
「両方じゃ」
「かしこまりました」
ぴりっ
ブラックオーナーは、
封筒を切り
手紙を出した。
「どうぞ」
「…」
手紙を開いて
読む。
次第に涙が
にじむ。
あの日約束した君へ
残念な知らせだ。
俺は
約束を破ろうと思う。
君は僕を
待っているだろう。
でも、
僕は帰らない。
手紙で
申し訳ないが
"さよなら"だ。
「嘘吐くの下手べや」
キィ
ブラックオーナーは
今度は扉を開いた。
「…帰るべや」
「ありがとうございました」
男は深々とお辞儀をした。
「あぁ」
「失礼ですが、お客様」
「…」
「少々、疑問があるのですが
聞いてよろしいでしょうか?」
「なんべや」
「なぜ
手を使われないのですか?」
「あんまり使うと
こうなるべや」
見せられた手の皮が
ボロリと崩れた
「コレは…」
「寿命だべや」
「失礼しました」
「いいや」
部屋を出ると
扉が音をたてて閉まった。
1度 振り返った時に
君の姿をみた気がした。
そうなんだ
さよならなんだ
戦争で亡くした
大切な人よ
あぁ、
俺は君に
やっと会える。
ボラッ
体が崩れ
土になる。
形を残したのは
手紙だけ…
キィ
「やはりココで
逝きましたか」
『なんだ
分かってたのか』
「まぁ これくらいは。」
『どうするよコレ。
器[ウツワ]は、いらないんだぞ』
「片付ければいいでしょう」
『まぁな』
「さぁてと
後で地下に行かないと」
『なんだ?限界か?』
「えぇ、お腹がすきました」
『じゃあ、後で
喰らえ』
「えぇ」
辿り着けたなら
あなたの日々も
魅せて…
立つ。
そのまま
扉の前に立つ
「開けてくんろ」
「どちらをですか」
「両方じゃ」
「かしこまりました」
ぴりっ
ブラックオーナーは、
封筒を切り
手紙を出した。
「どうぞ」
「…」
手紙を開いて
読む。
次第に涙が
にじむ。
あの日約束した君へ
残念な知らせだ。
俺は
約束を破ろうと思う。
君は僕を
待っているだろう。
でも、
僕は帰らない。
手紙で
申し訳ないが
"さよなら"だ。
「嘘吐くの下手べや」
キィ
ブラックオーナーは
今度は扉を開いた。
「…帰るべや」
「ありがとうございました」
男は深々とお辞儀をした。
「あぁ」
「失礼ですが、お客様」
「…」
「少々、疑問があるのですが
聞いてよろしいでしょうか?」
「なんべや」
「なぜ
手を使われないのですか?」
「あんまり使うと
こうなるべや」
見せられた手の皮が
ボロリと崩れた
「コレは…」
「寿命だべや」
「失礼しました」
「いいや」
部屋を出ると
扉が音をたてて閉まった。
1度 振り返った時に
君の姿をみた気がした。
そうなんだ
さよならなんだ
戦争で亡くした
大切な人よ
あぁ、
俺は君に
やっと会える。
ボラッ
体が崩れ
土になる。
形を残したのは
手紙だけ…
キィ
「やはりココで
逝きましたか」
『なんだ
分かってたのか』
「まぁ これくらいは。」
『どうするよコレ。
器[ウツワ]は、いらないんだぞ』
「片付ければいいでしょう」
『まぁな』
「さぁてと
後で地下に行かないと」
『なんだ?限界か?』
「えぇ、お腹がすきました」
『じゃあ、後で
喰らえ』
「えぇ」
辿り着けたなら
あなたの日々も
魅せて…