表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/61

6.幻想に立つ勇者・アレン

読みに来てくれてありがとう!


本日、ロリッ子が登場します!


2020/02/01

なろう定型版に改変いたします。

 

 ◆


 ――それから、特に三人の間に何もなく、次の日。


「……二日酔いでゲス」


 102号室からエルケスが出てくる。

 彼はパブフネッカから『泥酔状態』のバッドステータスを受け渡され、昨日中寝ていたのである。


「おっ、エルケス君が起きたよ! パブちゃん!」


 大きな声で厨房からパブフネッカを呼ぶのは、桃色の髪をお団子にしているプリムである。


「エルケス! あんたいつまで寝てるの! もう昼だよ?!」


「んなこと言われても、パブフネッカ様が状態異常を渡すのがいけないんでゲスよ?」


 クシャクシャになった髪を掻き、顔色を見るために近くにあった姿鏡に自分を写す。


「あ、そういえばエルケス。当分、ここに住むことになったから」


「え?」


 エルケスの血色が変わる。


「プリムちゃんのヴェノン亭の宿泊施設に一週間住むのよ。いいでしょ?」


「良い訳がないでゲス! ウチらはあくまで勇者アレンを捕らえに来た身でゲスよ! チンタラしてたら魔王様から何を言われるか!」


「あ、私、魔王軍辞めるから」


「ええぇ?!」


 エルケスの焦りは頂点に達し、パブフネッカの周りをぐるぐると回る。


「だめでゲスって! すでに魔王様に怒られ続けてるのに、もう……何でも良いんでゲスね、パブフネッカ様」


「うん! アレン君のためなら私、何でもできるから!」


 と、パブフネッカはピースしてウインクして見せた。


「……でも、言うてウチはパブフネッカ様の補佐でゲス。主様がそうしたいのなら、ウチもそれに従うまで」


「ありがとう、エルケス!」


 パブフネッカはエルケスに抱きつき、胸をギュッと押し付ける。


「――パブフネッカ様、なんか少し成長したんでゲスね」


「ん、何で?」


「だって、今までずっと『他人に尽くす』なんて言わなかったじゃないですゲスか。『自分の物にしたい』じゃなくて、『勇者アレンのために生きる』って言ってるのは、ウチ的にはすごく複雑な気持ちでゲス」


「うーん。確かに、言われてみればアレン君ほど追いかけようとしたことはないな。だって今までは、おっぱいを触らせるだけで従者にできてたのに」


「だからこそ、パブフネッカ様は勇者アレンのことが気になるんでゲスね。……大人になったんでゲスね! 感動でゲス!」



 エルケスは二日酔いながら、元気に両手でガッツポーズをする。


「うん! 私、絶対にアレン君の心を掴んでみせる! 固有魔力や誘惑スキルに頼らず、私を好きになってもらうために!」


「その意気でゲス! この妖艶ようえん王補佐・エルケス、どこまでもお供するでゲス!」


 ――二人は笑い、腕を組み合って頷くのであった。



「ちょ、パブちゃん! エルケス君! そろそろアレンも起こして! あいつ、マジで起きないから!」


 プリムが叫ぶ。


「え! だったら私が起こしに行く!」


「パブちゃん! エルケス君と二人で行って! あなた一人だったら不安だから!」


「分かった! じゃ、エルケス、プリムちゃんを引き留めててね!」


「え、パブフネッカ様?!」


「愛のチューで起こしてくる!」


 と、パブフネッカは走って三階へと向かう!


「だーっ! やっぱり任せるんじゃなかった! エルケス君、厨房の掃除お願い!」


「え、ウチがゲスか?!」


「うん、お願い!」


 プリムはエプロンをつけたまま疾走し、パブフネッカを追いかけていく。


 ――そして、残されたエルケス。

 彼は、いつまでもこう言う役回りを任される羽目になるのである。


「……女って、どうしてこんなにも扱いづらくて自分勝手なんでゲシょう」


 目を細め、厨房に立てかけてある箒と雑巾を眺め、


「ま、従者として、これは避けられん道でゲスかね」


 呟き、エルケスは厨房の方へとフラフラしながら歩いていくのだった。


 ◆



 ――そして、アレン。


 柔らかな風を受けながら、川のせせらぐ森にたどり着く。


「あれ、どこだよここ?」


 ふわふわとした太陽の光に包まれ、森の匂いを嗅いで息を吐く。


「え、また転生したんか?!」


 と、アレンは揺れる水面に自分の顔を写す。


「あーよかった! ちゃんとイケメンだわ!」


 恥ずかしい言葉を簡単に吐き出す童貞王・アレン。

 自らのイケメンさを確かめたのち、立ち上がってあたりを確認する。


 鳥が囁き、草が風で揺れて囁く。

 全てが優しい風景で、まるで夢の中にいるかのような心地に落ち着く。


「――たまには悪くないよな。一人でこう言う場所に来るのって。じゃねぇ! どうなってんだ!」


 アレンは頭を抱えて周りを見渡し続けていると。





「――君っ!」


「え!」


 突然、下流の方からアレンを呼ぶ声が!

 小鳥の囀りのような美しい声に反応したアレンは、何者なのかと目を細めてみる。


「君、イケメンの君!」


「お、おれっ……すか!?」


 何十メートルも遠くから、アレンの方に手を振る女の子が!


「そうそう、君だ! 悪いが、ワッチの網をとって欲しいのだ! 魚がワッチの餌に食いつきよった!」


「え! 魚が釣れてんすか!?」


「そう言うわけよ! ほれ、早よ来たれ!」


 ――そう言う小学生ほどの娘が釣竿を引っ張る!


「ま、待っててくれ!」


 アレンは彼女に言われるがまま、後ろにあるクーラーボックスから網を取り出して、娘に渡す。


「ほお、君はなかなか良い魔力を持っておるな! この空間中でその速度で走れるのは素晴らしいことであるぞ!」


「……?」


「ほれ、釣れたぞ!」



 娘は魚を釣り上げ、ピチピチと跳ねる透明で虹色な斑点がある鮮魚を網に入れる。



「すげえ! なんだこの魚! 異世界にはこんなのもいるんすか!?」


「いいや、これは私の想像した物だ。故に、このような魚は存在せん」


「――え?」


 アレンは背の低い娘を見下ろして頭を傾げる。


 ――金髪のアシンメトリーな髪型で、左目が隠れるほどに長い前髪。

 胸は割と大きく、背丈にしてはなかなか重厚感がある。

 眉は薄く、マロマユのよう。

 耳の前に垂れた長い髪がふわふわと風で舞い、彼女の美しさを上昇させる。

 何よりも、彼女の八重歯が可愛い。


「君は勇者アレンであろう? 前世と比べ、君は随分と美顔を手に入れたようであるな」


「ど、どうしてそれを!」


「なるほど、君の世界にいた女神は実にセンスがよい。ワッチも君の顔は好くぞ? だがしかし、君を婚約者として迎えるには些か酔狂が過ぎるか?」


 金髪の娘は魚を鷲掴みすると、魚を両手でパチンと叩く!

 すると、魚は煙を上げて変形し、白い球になる。

 それを遠い開けた場所に投げつけると、それは瞬く間に朝食が乗った小さなテーブルに姿が変わったのだ!


「――す、すげぇ! 幻想系の魔法っすか?」


「左様。しかし、これも現実。朝食にしようぞ勇者アレン。君に聞きたいことは数多とある」


 ふふんと鼻を鳴らしてテーブルへと向かう娘に、


「ちょ、それにしてもあなたは誰っすか! 何で俺の名前をしってんすか!」


 アレンは金髪の娘に話しかけると、


「それはもう、君は有名人だから私が一方的に知っておるだけだ。では名乗ろう」


 彼女は振り返り、両手をお尻のところに組んでにっと笑ってみせる。

 八重歯が出て、彼女のヤンチャさがうかがえる。



「――私の名は、ネメルコーネ。夢魔の頂点に立つ者。そう覚えてくれればよい」


 呟き、彼女は再び朝食のテーブルへと歩いて向かうのだった。



 ◆

読んでいただきありがとうございました!

突然現れた少女・ネメルコーネ。

彼女は、いったい?


pvも100をこえるようになり、とても嬉しいです!


よろしければ、ブックマークをよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ