6.幻想に立つ勇者・アレン
読みに来てくれてありがとう!
本日、ロリッ子が登場します!
2020/02/01
なろう定型版に改変いたします。
◆
――それから、特に三人の間に何もなく、次の日。
「……二日酔いでゲス」
102号室からエルケスが出てくる。
彼はパブフネッカから『泥酔状態』のバッドステータスを受け渡され、昨日中寝ていたのである。
「おっ、エルケス君が起きたよ! パブちゃん!」
大きな声で厨房からパブフネッカを呼ぶのは、桃色の髪をお団子にしているプリムである。
「エルケス! あんたいつまで寝てるの! もう昼だよ?!」
「んなこと言われても、パブフネッカ様が状態異常を渡すのがいけないんでゲスよ?」
クシャクシャになった髪を掻き、顔色を見るために近くにあった姿鏡に自分を写す。
「あ、そういえばエルケス。当分、ここに住むことになったから」
「え?」
エルケスの血色が変わる。
「プリムちゃんのヴェノン亭の宿泊施設に一週間住むのよ。いいでしょ?」
「良い訳がないでゲス! ウチらはあくまで勇者アレンを捕らえに来た身でゲスよ! チンタラしてたら魔王様から何を言われるか!」
「あ、私、魔王軍辞めるから」
「ええぇ?!」
エルケスの焦りは頂点に達し、パブフネッカの周りをぐるぐると回る。
「だめでゲスって! すでに魔王様に怒られ続けてるのに、もう……何でも良いんでゲスね、パブフネッカ様」
「うん! アレン君のためなら私、何でもできるから!」
と、パブフネッカはピースしてウインクして見せた。
「……でも、言うてウチはパブフネッカ様の補佐でゲス。主様がそうしたいのなら、ウチもそれに従うまで」
「ありがとう、エルケス!」
パブフネッカはエルケスに抱きつき、胸をギュッと押し付ける。
「――パブフネッカ様、なんか少し成長したんでゲスね」
「ん、何で?」
「だって、今までずっと『他人に尽くす』なんて言わなかったじゃないですゲスか。『自分の物にしたい』じゃなくて、『勇者アレンのために生きる』って言ってるのは、ウチ的にはすごく複雑な気持ちでゲス」
「うーん。確かに、言われてみればアレン君ほど追いかけようとしたことはないな。だって今までは、おっぱいを触らせるだけで従者にできてたのに」
「だからこそ、パブフネッカ様は勇者アレンのことが気になるんでゲスね。……大人になったんでゲスね! 感動でゲス!」
エルケスは二日酔いながら、元気に両手でガッツポーズをする。
「うん! 私、絶対にアレン君の心を掴んでみせる! 固有魔力や誘惑スキルに頼らず、私を好きになってもらうために!」
「その意気でゲス! この妖艶王補佐・エルケス、どこまでもお供するでゲス!」
――二人は笑い、腕を組み合って頷くのであった。
「ちょ、パブちゃん! エルケス君! そろそろアレンも起こして! あいつ、マジで起きないから!」
プリムが叫ぶ。
「え! だったら私が起こしに行く!」
「パブちゃん! エルケス君と二人で行って! あなた一人だったら不安だから!」
「分かった! じゃ、エルケス、プリムちゃんを引き留めててね!」
「え、パブフネッカ様?!」
「愛のチューで起こしてくる!」
と、パブフネッカは走って三階へと向かう!
「だーっ! やっぱり任せるんじゃなかった! エルケス君、厨房の掃除お願い!」
「え、ウチがゲスか?!」
「うん、お願い!」
プリムはエプロンをつけたまま疾走し、パブフネッカを追いかけていく。
――そして、残されたエルケス。
彼は、いつまでもこう言う役回りを任される羽目になるのである。
「……女って、どうしてこんなにも扱いづらくて自分勝手なんでゲシょう」
目を細め、厨房に立てかけてある箒と雑巾を眺め、
「ま、従者として、これは避けられん道でゲスかね」
呟き、エルケスは厨房の方へとフラフラしながら歩いていくのだった。
◆
――そして、アレン。
柔らかな風を受けながら、川のせせらぐ森にたどり着く。
「あれ、どこだよここ?」
ふわふわとした太陽の光に包まれ、森の匂いを嗅いで息を吐く。
「え、また転生したんか?!」
と、アレンは揺れる水面に自分の顔を写す。
「あーよかった! ちゃんとイケメンだわ!」
恥ずかしい言葉を簡単に吐き出す童貞王・アレン。
自らのイケメンさを確かめたのち、立ち上がってあたりを確認する。
鳥が囁き、草が風で揺れて囁く。
全てが優しい風景で、まるで夢の中にいるかのような心地に落ち着く。
「――たまには悪くないよな。一人でこう言う場所に来るのって。じゃねぇ! どうなってんだ!」
アレンは頭を抱えて周りを見渡し続けていると。
「――君っ!」
「え!」
突然、下流の方からアレンを呼ぶ声が!
小鳥の囀りのような美しい声に反応したアレンは、何者なのかと目を細めてみる。
「君、イケメンの君!」
「お、おれっ……すか!?」
何十メートルも遠くから、アレンの方に手を振る女の子が!
「そうそう、君だ! 悪いが、ワッチの網をとって欲しいのだ! 魚がワッチの餌に食いつきよった!」
「え! 魚が釣れてんすか!?」
「そう言うわけよ! ほれ、早よ来たれ!」
――そう言う小学生ほどの娘が釣竿を引っ張る!
「ま、待っててくれ!」
アレンは彼女に言われるがまま、後ろにあるクーラーボックスから網を取り出して、娘に渡す。
「ほお、君はなかなか良い魔力を持っておるな! この空間中でその速度で走れるのは素晴らしいことであるぞ!」
「……?」
「ほれ、釣れたぞ!」
娘は魚を釣り上げ、ピチピチと跳ねる透明で虹色な斑点がある鮮魚を網に入れる。
「すげえ! なんだこの魚! 異世界にはこんなのもいるんすか!?」
「いいや、これは私の想像した物だ。故に、このような魚は存在せん」
「――え?」
アレンは背の低い娘を見下ろして頭を傾げる。
――金髪のアシンメトリーな髪型で、左目が隠れるほどに長い前髪。
胸は割と大きく、背丈にしてはなかなか重厚感がある。
眉は薄く、マロマユのよう。
耳の前に垂れた長い髪がふわふわと風で舞い、彼女の美しさを上昇させる。
何よりも、彼女の八重歯が可愛い。
「君は勇者アレンであろう? 前世と比べ、君は随分と美顔を手に入れたようであるな」
「ど、どうしてそれを!」
「なるほど、君の世界にいた女神は実にセンスがよい。ワッチも君の顔は好くぞ? だがしかし、君を婚約者として迎えるには些か酔狂が過ぎるか?」
金髪の娘は魚を鷲掴みすると、魚を両手でパチンと叩く!
すると、魚は煙を上げて変形し、白い球になる。
それを遠い開けた場所に投げつけると、それは瞬く間に朝食が乗った小さなテーブルに姿が変わったのだ!
「――す、すげぇ! 幻想系の魔法っすか?」
「左様。しかし、これも現実。朝食にしようぞ勇者アレン。君に聞きたいことは数多とある」
ふふんと鼻を鳴らしてテーブルへと向かう娘に、
「ちょ、それにしてもあなたは誰っすか! 何で俺の名前をしってんすか!」
アレンは金髪の娘に話しかけると、
「それはもう、君は有名人だから私が一方的に知っておるだけだ。では名乗ろう」
彼女は振り返り、両手をお尻のところに組んでにっと笑ってみせる。
八重歯が出て、彼女のヤンチャさがうかがえる。
「――私の名は、ネメルコーネ。夢魔の頂点に立つ者。そう覚えてくれればよい」
呟き、彼女は再び朝食のテーブルへと歩いて向かうのだった。
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読んでいただきありがとうございました!
突然現れた少女・ネメルコーネ。
彼女は、いったい?
pvも100をこえるようになり、とても嬉しいです!
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