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★5.パブちゃんとお風呂

アレン争奪戦編二話!


始まり早々、アレンとパブフネッカは素っ裸!

波乱の話になります!


また、評価ポイントが30を超えました!

このまま100を目指して突っ走ります!


2020/01/25

なろう定型版に改変いたします。

 

 ◆


 ちゃぷり。

 音を立て、艶かしいパブフネッカの素足が湯につく。

 あまりの緊張によって縮み上がってしまったアレンは湯の中にハズカシサを隠し、膨れる気持ちをどうにか抑えて彼女を待つ。


 ――さながら、低俗な店の一部風景のように。


「アレン君って、あんまり女性経験はないのかな?」


 パブフネッカは施設の風呂にしては狭い風呂をゆっくりと歩く。

 アレンはどうにか彼女から距離を置こうと奥にいたというのに、簡単にパブフネッカは壁を突破してくる。


「ふぇっ、そ、そうだ、な、あはは」


 ひきつる表情と上ずる声。

 情けなくも、アレンはパブフネッカの顔も体も見ること叶わずに水面とにらめっこを繰り広げる。


「――生前の影響かな?」


「ま、そ、そうっすね……」


「前世では、ブサイクとかコンプレックスがあったの?」


「そんな感じっす?」


 パブフネッカはいよいよアレンの隣にたどり着き、ゆっくりと腰掛ける。

 ――艶めく肩。


 と、突然パブフネッカはアレンの左腕をバッと掴み、自分の方へと引き寄せる!

 その動作に見覚えがあったアレンはすかさず手を引っ込める!


「こら、罰ゲームだっ!」


「敬語くらいもういいだろ! 俺はこういうスタンスで生きてきたんだよ!」


「敬語を使われると、なんかお店の接客みたいで私が嫌なの!」


 パブフネッカは口を歪ませ、アレンの手を胸の方へと引き寄せる!

 しかし、アレンも男の意思でそれを阻止しようとする!

 ――素直ではないのだ、童貞王・アレンは。



「いいわ。とりあえず今回は保留にしとく」


 パブフネッカは手を離し、


「それにしても、なんで俺が転生者って知ってるんだ? たぶん何も言ってないが」


 アレンは頭をかく。


「――そっか。まだ言ってなかったよね」


 パブフネッカは俯き、アレンの方へと体を寄せた。


「ちょっ!」


 アレンは動揺し、体に寄りかかるパブフネッカを肌で感じる。


 ――柔らかい。

 お餅みたいだ、とアレンは思った。


「私はね、魔物なの。妖艶ようえん王・パブフネッカ。魔王軍幹部・『性欲』を司る正真正銘の怪物よ」


「なっ……!」


 アレンの顔色が変わる。

 その表情は、警戒と敵意の色を混ぜ合わせたものである。


「大丈夫。この国を壊したり、侵略するようなことはするつもりないから」


 パブフネッカは目を瞑り、背中に隠していた妖精の羽をゆっくりと広げる。


「私は、魔王幹部になるつもりなんてさらさらなかった。ただ、私の家族や仲間を守るために幹部にならざるを得なかった。――私の魔力値が他人とは格段に違ったのよ。だから、魔王軍にスカウトされた。『性欲』担当としてね」


 パブフネッカの目から涙が流れ、アレンは、


「――それで?」


「私は魔王幹部の候補者になった。数々の男の人を相手にしてきた。私が『性欲』として成長するまでいつまでもいつまでもいたぶられてきた。――そして、ついに私は魔王幹部『性欲』として檻から出され、久しぶりに外の世界の空気を吸った。三百年経ったその日に、私は――」


「うん」





「――妖精族が滅びたのを知ったわ。私が魔王軍にスカウトされてから数日後に、魔王・ガルガナック様が妖精族の全てを焼き尽くしたんだって。私が故郷に帰るのを諦めさせる、ただそれだけのために……」


 パブフネッカの肩が震え、アレンはそれを振動として受け取る。

 先にも言ったように、アレンは理不尽を幾度となく経験してきた。

 しかし、魔王軍にもそのような事情があって戦う者がいることなど考えもしなかった。


 敵は叩き切る。

 ただ、それだけを考えて生きてきたアレンからすれば、パブフネッカの存在はかなりショッキングな内容だったのだ。


「私は、普通の恋なんてできなかった。犯され続ける毎日のなかで、私はある日悟ったの。『あぁ、私は愛することも愛されることも叶わない女の子』なんだなって」


 呟き、彼女はついにしゃくり上げ始める。



 ◆



 ――302号室、プリムとパブフネッカの分身との話だ。


「パブフネッカ?」


「……」


「ちょ、ねぇ! パブちゃん?」




 突然、プリムの前にいたパブフネッカが涙を流し始めたのだ。


「……プリムちゃん」


「どうしたの? なにか悲しいことでもあったの?」


「わからない。でも、すごく胸が苦しい。なんでだろ、なんか、もうわかんないや」


「パブちゃん……」


 ――口喧嘩をしていたプリムとパブフネッカ。

 そのはずなのに、突然涙するパブフネッカを見、プリムは我慢できずに寄り添う。


「魔王幹部の話?」


「たぶんそう。私が言ってる。『もう、魔王幹部を辞めたい。これ以上、罪を重ね続けるのは嫌だ』って」




 ◆



 ――変わり、アレンとパブフネッカ。


「それは違うぞ、パブちゃん」


 アレンはパブフネッカに寄り添う。


「え?」


 その行動に驚きを隠せず、パブフネッカは目を開く。


「『愛することも愛されることも叶わない』奴なんかいないさ。生前の俺は、モテなかったのは事実だが、俺から愛することはできたんだ。パブちゃんみたいな美人が、その権利を放棄するのは宝の持ち腐れだ、冒涜だ!」


「アレン君……」


「パブちゃんは可愛いし、たくましいし、自分を持って俺に接してくれてる。正直、嬉しいんだ。パブちゃんみたいな女の子が俺と風呂に入ってくれたり、俺を頼ってくれたり、言えない秘密を話してくれたり。そういうところ、俺は」






 好きだぞ。






「っ……!」



 パブフネッカに一つの雷光が走る。

 その響きを今までに一度も味わったことがなかった。

『好きだぞ』などと一度も。



 ――『おら、股を広げやがれ性奴隷が!』

 ――『お前は俺らの便器なんだよ』

 ――『性欲として働く手伝いをしてやる!』




 三百年の暴力を経てたどり着いた絶望の末にみた、同種が絶滅したという絶望。

 それを受け、なお生き続けるパブフネッカは、もう何者かに愛されることを放棄していたのである。

 故に、自らも。



「愛する権利は誰にだってある! 俺は、イケメンになれた! 愛される権利も手に入れて超ラッキー! ばんばんざーいだぜ!」


 アレンは笑い、パブフネッカの胸には熱くたぎる思いが徐々に膨れ上がっていく。


「アレン君……。アレン君!」



 パブフネッカはアレンの左手をとり、


「私……あなたが好きかもしれない! 出会った時は顔が良い人だと思ってたけど、それだけじゃない! アレン君は私が生きてきた中で一番かっこいい! 素敵すぎて言葉にできない!」


「お、おう……。好き、とか初めて言われたかも」


 アレンはどうして良いのか分からず、顔を赤くして、ようやくパブフネッカの顔を見つめることができた。


「私は、好き! アレン君が大好き! 短い間でも、好き! わかんない、もうわかんないくらい好き!」


「そ、そんな連呼されても!」


「でも、好きだよアレン君! 私、あなたならこの身を預けて良いと思えるの! だから、こんな汚れた私でも良ければ、付き合ってもらえませんか?」


「……!」


 アレンははじめての『求愛』にたじろぎ、彼女の美しさを目に入れることしかできなかった。


「……俺は、正直よくわからん。こうやってパブちゃんとお風呂に入って、すごいドキドキしてる。パブちゃんは可愛いし、正直言って俺好みだ。ムチムチで、エロくて、ストレートで」


「ありがとう。褒めてくれてるのかな?」


「もちろん! 俺は、パブちゃんが恋愛に対して本当は純情な女の子なんだなって今しみじみと感じてるよ。『性欲』を司る魔物なんて、関係ない! 過去がなんだ! 俺なんか、死ぬほどのブサイクだったんだぜ?!」


 アレンはパブフネッカの手を握り返し、恋人つなぎにする。


「アレン君……」


「……今の気持ちは、たぶんだけど、パブちゃんに引き寄せられてるかもしれない。こういうシチュエーションが初めてだからかもだけど、今の段階では、俺は――」








 と、突然アレンの声が消える。

 理由は、言葉を発する機能が突然停止したからだ。


「……ん?!」


 アレンは突然訪れた幸福に対し反応できず、唇を舐め回す。


「……言葉の途中にごめんね。急にキスしたくなっちゃった」


「ぱ、パブちゃん……」


「私から言っておいてごめんね。やっぱり、アレン君からの返事は聞かないままでいた方がいいような気がしたの。わがままだよね」


 パブフネッカも唇を舐め、アレンの味を感じる。


「そんなことない! 俺は――!」


「言わないで! 言われたら私、もう後戻りできなくなりそうだから」


「……そっか」


「ごめんね? でも、あなたの言葉を聞いてたら、生半可に『好き』って伝えた自分がバカらしくなっちゃった」


 パブフネッカは涙を拭き、


「やっぱり私はアレン君が大好き! だから、これからもずっとアレン君のことを好きでいたい!」


「……パブちゃんって、やっぱり強いんだな」


 アレンは呟き、パブフネッカの頭を撫でる。


「へへっ。そんなことないよ。きっと、プリムちゃんの方がもっと強いよ?」


「――プリム?」


「……いや、何でもない! はー、やっぱり抜け駆けすんの、やーめよっと!」


 パブフネッカはグッと背伸びをすると、タオルを脱いで立ち上がる!


「ちょ、パブちゃん!」


 目の前に現れた全裸の美女を前にし、アレンは顔を真っ赤にして叫ぶ。


「――これが私の全裸! どうかな?」


「す、すごいっ……綺麗だ!」


「そう? ありがと!」


 妖精の羽を満開まで開き、徐々に光に包まれゆく体をアレンに見せつける。


「今日はありがとう。私、これからアレン君のことをもっと好きになる! そのために、プリムちゃんとフェアな勝負をしたいんだ! だから、今回はノーカン! ノーカンだよ!」


 ――パブフネッカの体がパラパラと崩れ落ち、みるみる消え失せていく!


「え? パブちゃん?!」


「ごめんね。実は、こっちの私の方が鱗粉の分身だったんだ。本体の方がプリムちゃんと話してる方。――はじめから、こうした方がいいんだろうなって思ってたから」


「それって!」


「――わかんない! 正直、アレン君と今からでもエッチがしたい! でも、プリムちゃんと勝負してみたいとも思うの! プリムちゃんと私、どっちの方がアレン君が好きなのか!」


 パブフネッカは手を振りながら、消えていく自分の体を鏡で見る。


「ど、どういうことだ? ってかプリムまで俺のことが好きなのか?!」


 アレンは耐えきれず立ち上がると、湯を斬りながら持ち上がる戦艦がプルリと震える!

 それをパブフネッカが見、「大きい!」と呟き、


「それは、彼女次第かな! でも、きっと悪いようには思ってないと思うよ?」


「ま、ままままっ! まじか!」


「アレン君ってモテモテだね! 本当、君がこの世界に転生してきてくれてよかった! それじゃ、また会おうね、アレン君!」


「――待てパブちゃん! 俺、やっぱり今の気持ちを伝えておきたい! パブちゃん!」








「『性欲』とは関係なく、アレン君を好きにさせてみせるよ。覚悟しておいてね?」




 ◆





「あっ……!!」



 ――ヴェノン亭の露天風呂、と言うよりかは銭湯に近い。

 宿泊施設として特化しているわけではないヴェノン亭の宿泊施設はあまり豪華とは言えず、風呂も一つしかないため、男湯と女湯が交互に入れ替わるシステムが採用されている。


 そこにポツンと一人、男が。






「――あれ、なにしてたんだっけ?」



 アレンは一人、壁のほうに向かって手を伸ばしていた。

 もう一人のアレンはブルブル震え、手を伸ばす方向を指し示していた。


 どうやら、アレンは夢を見ていたのだ。

 甘い甘い、誘惑の夢を。


 ◆


 プリムとパブフネッカ。


 パブフネッカはプリムの手を取り、


「罪を重ねてきた分、私は他人を救いたい! 贖罪がしたいの、魔王幹部を辞めたい! もっと人から愛される、他人を愛する! あるべき姿、妖精として!」


「パブフネッカ……!」



 彼女は覚悟した。

 ――魔王軍から身を引く。

 性欲に関わらず、自らが愛したものと純粋な愛を育みたいと。


「私はアレン君が好きだ! これは変わらない! プリムちゃんと正々堂々と勝負する! いいかな?」


「……わかった。私も全力で勝負する! アレンは絶対に渡さないから!」


「ええ! 残り一週間、せいぜい私に追いつくことね! おっほほほほほほほ!」





 ――こうして、パブフネッカはプリムとアレンとの心の距離を縮めるのであった。




「絶対に、アレン君を私のものにするから」


 ◆






 ――雷鳴が鳴り響く。

 ここは、魔王城。

 紫の霧に覆われた、まさに『魔境』というにふさわしい外観である。


 その城の中で、玉座に座る巨大な魔物が一人。



「――監視されてるとも知らずに、何と愚かな」


 そう口を開くのは、魔王・ガルガナック。

 黒霧に包まれ、全貌は見えず。

 ただ、巨大な角と長い手、蛇のような巨大な尾が見える。


「そのようですわね。『性欲』妖艶ようえん王・パブフネッカ……。三百年の力作だというのに、やはり精神面に問題があったと」


「そのようだな。我が直々に妖精族を根絶やしにし、帰る場所をなくしたとて人間にうつつを抜かすとは。もう良い。この作戦が失敗したら元々から破門にするつもりであった。良いか、醜い性欲の出来損ないを殺し、かわりに貴様が『性欲』となれ!」


「はっ! ワタクシでよければ!」


 と、褐色の美女は魔王の前で跪く。

 艶かしい素足を差し出し、薄い腰巻で下腹部を隠す。

 適当に巻かれた胸の布には、溢れそうなほどに巨大な肉が押し込められている。

 服はただそれだけ。

 つまり、たった二枚の布だけで彼女は生きてきたのである。


「貴様の実力は知っておる。この千年、数百万を超える雄と交尾し、新種の魔物を産み落とし続けた。貴様のその『性欲』をもって、出来損ないを始末してくるがいい」



「はっ! ……しかしながら、ワタクシとて悪魔。一つ提案がございます。よろしいですか?」


「良い。なんだ?」



「残り一週間。奴らはきっと勇者・アレンと愛を育むことになる。……そして、熟れた果実をもぎ取ろうとした、その瞬間にワタクシがそれを横取りする……というのはどうでしょうか? 勇者アレンと出来損ない娘と無理にでも交接させ、死ぬまで子供を産ませ続ける! なんて悲惨だこと! 出来損ないも喜ぶでしょう、何度も何度も愛するものと交配できて! そして、私と勇者との交配も見せつけてあげる! きっと、絶望に絶望が重なって……あん、だめ、ジュンジュンしちゃう!」


 褐色の美女はニヤリと笑う。


「――これは傑作! 良い。勇者アレンをどのように食おうが貴様の勝手だ。『始末』を性奴隷として生かすことと捉えるのも了承しよう」


「ありがたき幸せ!」




 褐色の美女は胸を震わし、来る時をすでに待ちわびる。

 下腹部が震え、じんわりと布に汁が滲む。


「……久々の上級肉との交尾。実に楽しみだわ! あの体ごと、私の中にピストンして……ふふふふっあははははははっ!」




 ――魔王・ガルガナックの前で高笑いをする褐色の美女。

 それは、妖艶ようえん王・パブフネッカに代わる『性欲』を司る悪魔である。

 短い黒い羽が映え、尖った尻尾を振りながら胸を揺らす。


 交配種・ブリードサキュバスの始祖。

 彼女の名は、『性欲』生殖王・ペネザード。


 ◆

読んでいただきありがとうございました!


突如現れた魔王・ガルガナック。

そして、生殖王・ペネザード!


アレン争奪戦、プラムとパブフネッカに加え、ペネザードからも狙われることに!


次回、さらに新キャラが登場します!

お楽しみに!


面白かったら、ぜひブックマークをよろしくお願いします!

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