43.フィルテガ
お久しぶりです!
今日も来てくれてありがとう!
今回は、敵であるフィルテガの話です。
◆
「――嗚呼。ここがエメルドラ。このフィルテガ、非常に感嘆しています」
呟き、フクロウのような翼でメガネを上に上げる。
彼はフィルテガ。
――魔王・ガルガナックによって派遣された『食欲』を司る魔物である。
「扨、ここで知ることは山ほどありそうですね。武器探しは旅人の基本ですから」
魔王軍幹部になりたてのフィルテガはエメルドラの街中を歩きながら狙いを定める。
――カジノが煌びやかに輝く夜八時前。
「ほうほう、良い獲物を見つけましたな」
と、フィルテガはふらふらと千鳥足で歩く二人の男の元へと歩き、
「そこの者よ、このフィルテガが聞く。ここはなんだ?」
すると、顔を赤くして泥酔すると男が、
「んだ兄ちゃん! ここはカジノの街だよ! 本当、賭け中毒ばっかのヤな街だぜ!」
「ほうほう。ここは嫌な街なのですね?」
フィルテガは頷きながら腕を組むと、
「では、この街の何が嫌なのだ?」
「カジノにはな、イカサマをしやがる奴が大勢いる! 俺はそれで今日50万イェンもスっちまった! こいつなんかよ、80万イェンだぜ?!」
「ほうほう」
酔っ払いの男がツレの男を指さす!
「ちょ、あんまり言いふらすなよ! 情けなくなっちまうだろ!」
――と、酔っ払い二人は喧嘩を始め出す。
「では、次の質問だ。そのイカサマをする人間はどこにいる?」
「まだ最大倍率のブラックジャックの台でケツ置いてるよ! あいつはブラックジャックに関してはバレないイカサマを極めてるからな!」
「ほうほう。では、次の目的はその者にしましょうか」
――と、フィルテガはその男たちに背を向けて、カジノの方に歩いていくが。
「待ちやがれ! これだけ質問しておいて礼は無しかよ!」
と、酔っ払いの男がフィルテガの肩を掴む!
「礼金を出せ! 俺がお前にありがたいアドバイスをしてやったんだ! ……10万イェンを寄越せ! お前が負けなくて良かった分の金だ!」
と、もう一人の男が泥酔男のもとへと行き、
「ちょ、さすがにそれはみっともないぜ! やめとけって!」
「うるせえ! こいつは俺らをバカにしたんだぞ! 負けてばっかの俺たちを心の中で笑ってんだ!」
「んなわけないだろ! 今日のあんたは酔いすぎだぜ!」
――そうやってモメていると、
「このフィルテガに何を求める? 食物連鎖の頂点に立とうこのフィルテガにどうして敵意を向けられる?」
「あぁ?! 調子に乗るんじゃねえぞ!」
と、酔っ払いの男はフィルテガの頭をぶっ叩く!
だが、フィルテガは全くの無傷。
「――ほうほう。これは面白い検体に出会えた。では、最後に問おう。死ぬことは怖いか?」
フィルテガは酔っ払いの腕を掴む。
「……は?」
◆
「――ほうほう。人間とは拷問すればあらゆることを吐き出すのですね。これは良いことを知りました」
フィルテガは真っ赤に染まった右手を舐めながら、カジノの方へと歩いていく。
「然し、これだけの知識を得てなお魔力はほぼ上昇していないとは。やはりたかが知れている事を質問してもあまり効率は良くなさそうですね」
――フィルテガの特有魔力『経賢値』。
それは、フィルテガが知り得ない事を知るたびに魔力値の上限が上がるという魔力である。
「貪欲に知識を得ようとしても、そもそもこのフィルテガに意味のある情報でなければ意味がない。やはり、魔法に精通した人間などに触れ合う必要がありそうだ。――イカサマの者は果たして魔法を心得ておるだろうか?」
そう、これがフィルテガが『食欲』として選ばれた所以である。
知識を蓄え、満たされるまで永久に知識を求めて狩りを続ける――。
梟の魔物であるフィルテガは、猛禽類と言い、食物連鎖の中で最も強い位置に属している。
故に、全ての知識を得ようと今日もレベルを上げているのだ。
「私はあまりイカサマやカジノの仕組み、エメルドラの特色や名物などをまだ調べてはいない。ほうほう、ここで魔力を貯め込み、来たる勇者との戦闘に使うと……。嗚呼、シナリオが完成していく! 素晴らしいぞフィルテガ!」
ぶつぶつと呟きながら、フィルテガはカジノの方へと上がっていくのだった。
読んでいただきありがとうございました!
ーー知識を蓄え続けるフクロウ、フィルテガ。
彼はこれからアレンたちとどう戦っていくのか。
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また、昨日の夜に短編ほどの短い小説を投稿しました!
死刑囚が、自殺を願う少女と入れ替わって転生する話です!
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