37.子の名を
今日も来てくれてありがとう!
ーー今回は、魔王城からのスタートです。
2020/02/23
前日に今作日間最高PV930を記録しました!
◆
――転じて、魔王城。
「これで、よいか?」
魔王・ガルガナックは服を着るペネザードを眺めながら言う。
「えぇガルガナック様。あなたの遺伝子は既に我が胎児に注がれています。ブリードサキュバス故、ワタクシはこの子をすぐにでも産み落とすことも可能です!」
ペネザードは体液にまみれた体を一瞥して魔王を見る。
「――つまり、もう我が子は産み落とせると?」
「えぇ! 私が子宮に力を入れれば今でも!」
「そうか。それは安心した」
――と、ガルガナックは黒霧に包まれていき、徐々に黒く硬い物質が中から出てくる。
それに気づかないペネザードは、自分の腹を摩りながら、
「きっとガルガナック様の血を引き継いだ元気な子が育つでしょう。――私は、その子の母親! なんていい響きかしら! 良いわよ、元気に生まれてきなさい! 私が愛して育て、強くたくましく、そしてあのクソ勇者にも負けない最強の存在へと」
――と、突然ペネザードの視界がクルクルと回転し始める。
「あ――?」
ゴトン!
緑色の血が飛び散り、寝室とベッドの上がドロドロになる。
「なっ……!」
ペネザードはパクパクと口を動かし、自分の体から吹き上がる大量の血しぶきを見る。
――首のない自分の体を。
「先の説明を聞いて安心したぞ、ペネザード? 実に長い務めであったな。感謝するぞ?」
「な、ななっ! 魔王様?!」
首だけになったペネザード。
そして、その抜け殻のようなペネザードの体に硬い物質を差し込むと、腹の中から緑色の塊を取り出す!
「ほう、これが我が子。満ちておるぞ、素晴らしい!」
それは、胎児。
ペネザードが腹に宿した、ティフォルとガルガナックの遺伝子の集合体である。
「そ、それはワタクシの子、ワタクシの子!」
「ふん。貴様は首を切り落としたとて死なぬのか? 難儀な生物だな、ブリードサキュバスとは」
――ガルガナックはベッドから立ち上がると、転がったペネザードの首を見下ろし、
「お勤めご苦労。甘き眠りに落ちるが良い」
ガルガナックは胎児を抱え、ニヤリと笑み浮かべる。
それを見たペネザードは、全てを察して歯をきしませる!
「……ガルガナック! 最初からワタクシの子を奪うことを考えてたのね! それはワタクシとお前との子だぞ! しかも、それはワタクシの宝物なの、ティフォルとの思い出が詰まってるものなの!」
「知ったことか。貴様が持ち寄った駄作に興味などないわ。――我が遺伝子が流れるこの子以外はな」
と、ガルガナックはゆっくりと足を浮かせ、ペネザードの頭に狙いを定める!
「――殺す、殺すガルガナック! お前にその子の価値がわかってたまるものか! その子は私が作り出した最高傑作! その汚い手でワタクシの子に触るな! お前のような汚らわしい雑種の末裔の血が」
「善い」
ペネザードの頭は柔らかく、瞬時にガルガナックの足裏の中に消えていった。
飛び散った彼女の体は、ガルガナックの肌につき、伸びる伸びる。
「――従者共よ、この部屋を焼き払え。ペネザードの残り香がしては敵わんでな」
そう呟き、魔王は寝室から出ていった。
子を抱え、ガルガナックはふと呟く。
「この子の名はなんぞ?」
読んでいただきありがとうございます!
ーーついに産まれてしまった魔王の子。
この子が一体物語にどのような悲劇をもたらすのか。
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