4.アレン争奪戦
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伸びも順調で、とても嬉しいです!
そして、アレン争奪戦、開始です!
2020/01/25
なろう定型版に改変いたします。
◆
「え! 今日からここに住むんすか!」
驚き、アレンの顔が嬉しさやら恥ずかしさやらの感情でひきつる。
「ええ。私もここで働くことにしたの。よろしくね、アレン君!」
対するパブフネッカは上機嫌で、今すぐにでもアレンにしゃぶりつきたい――そんな様子である。
「よ、よろしくっす……」
魔王幹部であるはずのパブフネッカ。
まさかの勇者に握手を求める。
――妖艶王パブフネッカとも知らずに手を取る勇者アレンの顔は実に間抜けで、プリムはいらだち、
「なに鼻の下を伸ばしてんのよアレン! このクソ童貞!」
「は! なんすかいきなり! プリムさん、急に口悪くなってないすか?」
「なってないわよ! とりあえず、ベッロベロになったエルケス君は部屋で寝かせてるから、残りの三人で店仕舞いをするわよ!」
と、ぷんすかと頬を膨らませるプリム。
「ど、どうしたんすかね。やっぱり、ゲロ吐いたことで癇癪を起こしたとか?」
アレンが呟き、
「いいえ。きっと嫉妬よ」
「はっ?」
「いえ、なんでもないわ! いくわよアレン君!」
「そ、そういえば名前なんでしたっけ? パン……パブリ?」
「私の名前は、ええっと……。パブ! パブちゃんって呼んで!」
パブフネッカはアレンの手を握り続け言う。
「ちゃんつけは……俺的にはきびいかもです。その、ふつうにパブさんでいいですか?」
「だぁめ! パブちゃん! それと、敬語も禁止! 敬語を使ったら、いたずらしちゃうぞー!」
「で、でも俺はその、コミュ障なんで、急に敬語をやめんのはむず痒いってかその……」
「あーもう! 敬語禁止! きんしー!」
と、パブフネッカはアレンの手を引き、自分の胸にポプリと乗せる!
「うわっ! パブさん!」
「これが、私のいたずらよ。敬語を使ったら、おっぱいを揉ませる! ま、私的には敬語を使ってもらったほうが有利なんだけど、どうかな?」
パブフネッカはニンマリと笑い、アレンは頬を赤らめる。
「もう……分かったよ。ほんと、変な人だねお前って」
「ほら、呼んでみて、『パブちゃん』って」
「ぱ、ぱ……」
「ん? 聞こえないなぁ」
「ぱ、ぱぶ、ちゃん……」
アレンは俯き、小声で言う。
と、パブフネッカは自分の胸にアレンの頭を挟み込んで、
「えらいねー! アレン君って本当に可愛い! お姉ちゃん、もういつでもいいわよ!」
「ちょ、パブちゃん! やめてって! プリムさんが見てるから!」
「やめないもーん! ほら、私のおっぱいどう? どう?!」
「どうもヘチマもない! こら、このやろー!」
――なんて、アレンとパブフネッカがイチャイチャしている頃。
プリムは一枚の皿を永遠に拭き続けていた。
もう乾いているのに、何度も何度も。
「本当、自分の体を売って誘惑してる。最低な女だわ」
呟き、皿を同じ場所に重ねる。
今日のプリムは非常に作業効率が悪く、閉店してからと言うもの、全く仕事に手がつかずにいた。
――『好きでもないオトコノコにどうしてそんなに固執するの?』
「そんなの、分からないよ。ただ、私はアレンにこの世界では幸せになってもらいたいだけ。そう、きっとそう」
一人呟き、プリムは堪えた。
叫びたいのだ。
自分では理解し得ない、定義し得ない不思議な感情が胸を襲う。
黒い何かが、宇宙のようなものが暴れている。
「――これが、嫉妬?」
◆
午前零時。
やっと全ての作業を終えた三人は、自室へと荷物を運んでいた。
「パブちゃんは101号室。エルケス君は102号室。アレンは301号室ね」
プリムは二人にそう告げると、
「アレン君を102号室にしよう! エルケスを上に運ぶから!」
パブフネッカが言うと、
「ダメよ! ダメに決まってるでしょ!」
プリムはべーっと舌を出す。
「アレンの部屋に夜這いされちゃ困るからね。どーせするでしょ」
「え、夜這いするのか、パブちゃん?!」
アレンはどう言う顔をしていいのか分からず、変なツッコミを入れる。
「しし、しないってば! ってか、プリムちゃんは302号室で寝るのね。アレン君の部屋の隣だけど?」
「私の部屋が302号室だからよ! 今日はたまたま宿泊者がゼロだったから部屋を貸すけど、仮に部屋が埋まったら全員私の部屋で泊まることになるの!」
「……それで? その話は関係なくない? 私は『アレン君の隣の部屋がいい』って言ってるのよ? プリムちゃん、ごまかそうとしてない?」
「……うるさいうるさい! パブちゃんは一階で、アレンは三階なの! あなたは危険なの!」
「あー! ごまかした! プリムちゃんはやっぱり私とアレン君を一緒にしたくないんだ! 策略見え見えだっての!」
「なんだと! このクソビッチ!」
「威張りしょじょ!」
「「ぬぬぬぬぬー!」」
――と、意地を張り合う二人に挟まれるイケメンが一匹。
「あ、あの。そろそろ風呂に入っていいすか? 俺、昨日から風呂に入ってないんで」
「うん! 入っていいよ! アレンがお風呂に入っている間、ちゃんとパブちゃんを見張っておくから!」
「あなたこそ抜け駆けしてアレン君とお風呂に入るつもりでしょ! 私こそプリムちゃんを見張っておく側なの!」
「「ぬぬぬぬぬー! ぬぬぬぬぬー!」」
「お、おふろ入りまーす……」
「「どうぞぉぉおっ!」」
プリムとパブフネッカは大声でアレンを見送るのであった。
◆
ヴェノン亭の露天風呂、と言うよりかは銭湯に近い。
宿泊施設として特化しているわけではないヴェノン亭の宿泊施設はあまり豪華とは言えず、風呂も一つしかないため、男湯と女湯が交互に入れ替わるシステムが採用されている。
そこにポツンと一人、男が――。
「はー、なかなかいい湯だな」
アレンである。
彼の体は生前の頃のムキムキバキバキガチムチマッチョとは異なる。
スタイルとして整ったちょうどいい筋肉で、美しいと言わざるを得ない肉体であった。
エロい。
男にして、それを言わせる体つきである。
「それにしても、パブって俺のことを割と気に入ってくれてるよな。なんでだろうか?」
呟き、湯に口をぶくぶく。
彼にとって、女の子に褒められたり愛でられることは今までに一度たりとてなかった。
そのため、素直に女の子からの愛情表現に応える術を知らないのである。
童貞とは、女の子に偏見を持ちがちだ。
「――もしかして、エルケスと手を組んでたりするのかな?」
ふと、アレンの脳内にある説が浮上する。
子供の頃の話だ。
『うわー、アレンってば、告白を受けてやんのー!』
『べ、別にいいだろ! ベロニカちゃんから告白されるだなんて思わなかったんだ!』
『でも、あれ、罰ゲームだったんだぜ? ジャンケンに負けた奴が、絶対に付き合いたくない男に告白するってゲーム』
『え?』
『で、ベロニカちゃんがジャンケンに負けて、お前を対象に選んだんだ』
『え?』
『それと、ベロニカちゃんからなんだけど、別れようだってさ。じゃ、俺これから塾があるから』
『え?』
――と言う思い出が蘇る。
ほつれた糸と糸が絡まりねじれ、そして解けてもいないのに、アレンは答えを導き出した。
「あ、罰ゲームなのか?」
これが、童貞の偏見である。
「だっておかしいもんな、急に俺のことを気に入ってるとか、胸を揉ませるとか」
アレンのテンションが急にガタ落ちになり、
「パブってそれなりに男の経験ありそうだし、露出多いし、喧嘩っ早そうだし」
落ちるところまで落ちた人間は、這い上がるのにはかなりの時間を要する。
男として最底辺に位置ついていた男は、つまり考え方も最底辺から見る風景から。
「勘違いしてちゃダメだ! 絶対にパブは俺のことを好きだとか思ってない! あぶねー! また女の子に笑われるところだったぜ!」
満面の笑みで風呂に浸かるアレン。
――子供の頃の経験により、彼の『誘惑』スキルへの耐性はマックス値を超えたのである。
魔物が誘惑攻撃によって仲間が戦意喪失する中、一人だけ奮っていた。
それこそ、勇者の英雄譚としてのちに語られることになるのである。
『不屈の精神耐性・アレン』と――。
アレン争奪戦において、この不屈の精神耐性はかなり厄介に働き、パブフネッカの誘惑の意味をかき消すほどの強い力を誇る。
鉄壁。
アレンにとって、おっぱいを揉ませることなど無に等しかったのだ。
◆
――数分後、ととのったアレンは湯から出たのちに背中を流す。
石鹸を流し終え、そろそろ上がるかと出口の方を向く。
「ん?」
ここで、アレンは何かの違和感に気づく。
「ふふ、ふふふーん」
長い髪の毛がふぁさりと舞うのが出口の奥から見える。
そしてブラジャーのようなモノを取り、両足を交互に上げて腰に巻いていた布を取る。
「わ、わわっ!」
声が出ず、アレンは急いでタオルを股間に当てる!
むくっ、むく!
「ちょ、まてまて!」
アレンはやっとの思いで声を上げるが、それでも彼女の進行は止まらなかった!
がちゃん。
「――あ・れ・ん・きゅん!」
「ぱ、ぱぶちゃん!」
現れたのは、全身にタオルを巻いたパブフネッカだった!
「来ちゃった」
「ぷ、プリムさんは?!」
「私といるよ。部屋で喧嘩してる」
「ど、どういうことだ?」
「プリムちゃんと喧嘩してるのは、私の鱗粉の幻想。で、これが私の本体!」
パブフネッカはそう言って笑う。
「それでね、アレン君。背中を流して欲しいんだけど、イイかな?」
ウインクで誘惑をする彼女の胸元をアレンはじっと見つめ、
「ふぁい」
と股間をおさえて上擦り声でいうのだった。
アレン争奪戦、初日にして裸の付き合いをこなしてしまうパブフネッカ。
――プリムに軍配が上がる未来はあるのか!
◆
読んでいただきありがとうございました!
さて、次回からアレンとパブフネッカのお風呂シーンからとなります。
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