2.イケメンの向かう世界
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2020/01/15
なろう定型版に改変いたします。
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――アレンとプリムは買い物を終え、店に帰る途中。
少しずつアレンはプリムへの警戒心を解き始め、コミュ障である彼も話せるようになっていった。
「そういえばプリムさん。この世界には魔王っているんすか? 前世ではぶっ飛ばしたんすけど」
「ええ。魔王『ガルガナック』は今も人間の地を脅かしてるわ。それと、幹部が三人。夢魔王『ネメルコーネ』、美食王『ピュロナ』、妖艶王『パブフネッカ』。それぞれは三大欲求を司る魔物で、人間には大敵なの」
「へぇ……。やっぱり幹部的なのはいるんだ」
「そうよ。この国・ヘルザール王国からも毎年何人もの勇者が立ち向かうために旅立つけど、大体は帰ってこないわ。――おそらく、みんな心半ばにして倒れるから」
プリムは俯き、暗い顔を見せる。
「どうしたんすか?」
「え、いいえ。私の兄も戦士として旅立ったの」
「え! それって」
「……二年前にヘルザール国王から激励を受けて旅立ったきり、音信不通なの」
「そうだったのか」
「でも、でも! 兄が勇者として旅立ってくれたおかげで、国から給付金が貰えて、店を経営できてるの! だから、兄の死は無駄じゃないと思ってるわ。そう、無駄じゃない……」
プリムの声が小さくなり、消えていく。
アレンはその苦しみが痛いほどわかるのだ。
――生前のアレンは、何度も生き別れをした兄弟や子供の死を嘆く親、ゾンビと化した姉を叩き切る弟など、幾度も見てきた。
「そうだと思うっす! 兄貴の頑張りは無駄にはならない! 今だってどこかで頑張ってるはずっす!」
「そ、そうよね。そうであって欲しい」
「生きてるっすよきっと! プリムさんの魔力量でわかるっす! 兄貴はきっともっとすごい魔力の持ち主だと! 俺、そう思うっす!」
アレンは励ましが下手くそだ。
それは、コミュ障に起因する。
「……本当、アレンって見え見えの励まし方をするのね」
「うっ」
「ま、私も信じてはいるの。どこかで生きてる! きっと。だから、私はいつか兄貴に会って、『何で連絡をよこさないんだ!』ってぶっ叩いてやるわ!」
プリムはそう言い、グッと拳を握りしめた。
その力強さを見、アレンはふうと息を吐く。
――午後二時を過ぎた頃。
店の開店まで残り三時間。
それまでに、野菜や肉の下味をつける時間が必要だった。
◆
「魔王様の情報によると、このヘルザール王国に『転生者』が来てるって話ね?」
――ヘルザール王国の近くの崖の上から見下ろす二つの影。
「そうでゲス。ウチの鼻でも分かりますぜ、この国にいるはずでゲス!」
「ふぅーん……。ま、私をウナさせるほどのイケメンじゃなけりゃ、いつも通りに従者にしちゃうけどね!」
そう呟く女は、露出だらけの服装である。
髪が長く、唇がセクシー、美しいまつげが男の気をそそる。
背中に生える二枚の薄膜の羽には大量の桃色の鱗粉が付いており、羽ばたくたびに風は濃い色に染まる。
「それでは参るでゲス。イケメン勇者の捕縛作戦の決行でゲスよ、パブフネッカ様!」
「ええ。――私の性欲を満たしてくれるのかしら? おーっほほほほほほっ!」
高笑いをし、術式を展開して空気の中に消えていく二つの影。
――パブフネッカ。
それは、魔王幹部の『性欲』を司る妖艶王・パブフネッカだった!
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