11.プリムorパブフネッカ
今日も来てくれてありがとう!
毎日更新すべく、頑張って執筆してる次第です!
さて、プリムちゃんとアレン君のお風呂シーンからスタートです!
2020/02/01
なろう定型版に改変いたします。
突然訪れたプリムの裸体!
アレンはそれを見まいと両手で目を覆い、
「プリムさん! まじ、なんでっすか! バカなんすか!」
大声を張り上げて彼女から目を背ける童貞王・アレン!
しかしながら、彼女も彼女とて処女の鑑、通常ならばこのような大胆なことはできぬはず!
その根拠に基づき、「これは何かの間違いである」とアレンはただひたすら声を張り上げ続ける!
――ものの。
「はぁ。今日も疲れたな」
プリムは呟き、四つしかない鏡の前に座り、シャワーで髪を濡らし始めた。
「ぷ、プリムさん……?」
プリムの応答なし。
アレンを無視し続けているのか?
はたまた本当に気付いていないのか?
――すると、突如として、アレンの脳内に何かが語りかけてくるのである。
『……本当、パブちゃんったら自分のしたいようにしてばっかり。私が本当にそれで喜んでるとでも思ってるのかな?』
そのテレパシーのようなプリムの声に反応し、アレンは耳を塞いだ。
魔術がパチパチと音を立てるノイズ。
そして、プリムはその心の声が漏れていることに気付いていない。
――その様子により、アレンは風呂に落ちついて浸かったのだった。
「なるほど、あのやろう」
アレンは呟き、目を瞑る。
『私だって、アレンのことは心配だよ。いつまで経っても女慣れしないし、クソ童貞だし、私なんかには目もくれないし。やっぱり、パブちゃんみたいにおっぱいが大きくないとダメなのかな?』
と、プリムは両手で胸を覆う。
彼女の乳は見積もりDカップはある。
しかし、パブフネッカは軽くE以上は確定だ。
――以前、トイレにてパブフネッカがプリムに壁ドンをしたことがあった。
その際に、プリムの胸に巨大な胸がどっしりとあたったことがあった。
その柔らかさを、今ながらプリムは思い出しているのである。
『パブちゃんみたいにおっぱいが大きくなったら、アレンも気にしてくれるのかな?』
眉を潜め、髪にジャンプーをのせてシャカシャカ。
その声は全て、アレンに届いているとも知らずに。
「プリム……」
『ってか、なんであのクソ童貞のためにこんなに悩んでるのか分かんない! 全部パブちゃんが仕掛けてきたからよ!』
膨れ、プリムはシャワーでジャンプーを洗い流す。
「さっきから、俺のことをクソ童貞だのなんだのと……! プリムの野郎、俺のことをそんな風にみてやがったのか! 許せねぇ!」
と、アレンは呟き風呂の中でプルプルと拳を握った。
『――でも、あいつに助けられた時は流石にドキッとしたな』
プリムは目を開き、曇る鏡の自分を見る。
「んっ?」
アレンはプリムの心の声に聞き入る。
『アレンってば、世界を救うために真の自分の望みを投げ捨てるだなんて、馬鹿みたい。なんで自分のために生きないんだろう、あいつ』
「そりゃ、俺の勝手だ! カッコよくなりたかったさ! でも、それ以上に人を救いたかった! それの何がいけねぇんだ!」
『どうせ、俺は人を救いたかった! とか綺麗事並べるようなやつなんだろうけどね』
プリムの心の声が聞こえ、アレンは絶句する。
完璧な名答であった。
『――私にはそんな生き方、一生理解なんてできない。一度しかない人生なのに、どうして自分の幸せを投げ打ってまで見知らぬ人を救えるのか。理解できない』
プリムは持ってきたナイロンタオルで体を擦り始める。
彼女の髪に泡がつき、再び泡立ち始める。
『どうせ幸せになるなら、他人に譲ったりしない。私だったら、絶対にモテることを願ってる! 女神様からの願いがなんでも叶うならなにを願う? 絶対に私なら自分の利益を優先してる! あのバカ……!』
「っさっきから俺のことをバカにしやがって! だいたいお前には人を救うことの素晴らしさが分かってないんだ!」
『自分を幸せにすることを後回しにして、他人を救う? 最高級の願いが叶うチャンスですら力を欲するだなんて、本当に!』
「本当、お前性格悪いな! プリム、だったらお前は――!」
『カッコ良すぎて、話しかけられないよ』
「っ……!」
アレンの震えが止まる。
瞬間、脳裏に聞こえたプリムの声がそうさせたのだ。
『私だって、誰かを救ってみたいって思う。でも、私が私を救えないんじゃどうしようもない。なのに、そんな未完成な私がアレンと付き合うだなんて到底、烏滸がましくて口になんて出せない』
プリムは全身にシャワーで水をかけ、不完全な肉体を眺めながら、
『――私みたいな凡人に、アレンはもったいないよ。パブちゃん、私はアレンを好きになってはダメな人間な気がするよ』
「ぷ、プリム……」
アレンはプリムの体を見てはいない。
それは、童貞たる所以である。
――おそらく、プリムからは自分が見えていない。
察してはいる。
しかし、それでもアレンはプリムの裸姿を覗き見しようなどとは到底考えなかった。
彼は、純粋なのである。
『……アレンはカッコいいし、男気があるし。すこし無骨だけど、そこがあいつらしい。人を救える力もある、私だって救ってくれた。だから、私はこれからもアレンには人を救って欲しいと思う。――私みたいな人間が、あいつの足かせになっちゃダメだよね』
と、プリムはぐっと背伸びをして立ち上がる。
『うっし! 覚悟はできたよパブちゃん!』
乾いたタオルを取り、体を拭きながら彼女は大きくグッとガッツポーズを!
『私、やっぱりアレンのこと、諦める!』
――と、心の中で呟き、プリムは出て行った。
風呂も入らずに、颯爽と。
「ぷ、プリム……」
プリム・ヴェノン。
彼女は、人を救える自信がなかった。
ただでさえ自分の幸せを見つけること叶わず、どうして他人を幸せにできようか。
そればかりが彼女の心を縛りつけ、自由に羽ばたく権利がないとしていたのである。
そのことに触れた、アレン。
童貞王である彼は、女心など一ミリも理解などできない。
ただ、彼は『勧善懲悪主義』として生きてきたからである。
他人は愛せど、他人を愛しようとしたことはない。
それは、プリムも違う形として共通だったのだ。
アレン。
他人を救いたいがあまり、他人を『恋愛』として愛したことなどなかった。
プリム。
他人から好かれるがあまり、自ら好きだと伝えることを恥ずかしいことだと生きてきた。
埋らぬパズルピースたちが、アレン、そしてプリムの間で合わさらずに飛び散った。
その結果、プリムは『諦める』と述べたのだ。
「――俺、プリムさんに、本当に好かれて……たのか?」
風呂に響く小言。
その音は水面に反響し、ただ寂しく揺れていたのだった。
◆
――ホットミルクを飲み干し、目を瞑ったままのパブフネッカ。
「パブちゃん」
「んっ……、あれ、私の目の前にイケメンが!」
と、わざとらしくパブフネッカは戯けて見せる。
「……さすがは妖艶王ってところだな」
「おっ? どうしたのかな?」
「とぼけても無駄だよ。昨日の夜、俺の記憶を消した犯人はパブフネッカ、あんただったか」
アレンはパブフネッカの前に座り、頬杖をついた。
「――あらぁ。もう私の正体もバレてる感じ?」
「バレるもなにも。そんなに高密度で洗練された魔法使えるやつが語るかよ。幹部級以上だ、プリムにあんな術式を体にねじ込めるのは」
アレンの目が鋭く、パブフネッカの胸元に貫く。
「……何もかも、お見通しってわけだね、アレン君」
「おう、俺はこう見えても前世では賢者以上の目利って言われててな。相手の状態を人目見れば、誰が術式を使ったか、濃度・階級・レベルに加えて相貌まで分かる。『千里眼』って言えば分かるか?」
「――そう。それじゃ、もう隠しても無駄そうだね」
と、パブフネッカは右手に術式を練り上げてアレンの足に向けて放とうとした――!
「残念。その手の『忘却魔法』は全て解析済みだ。二度ときかねぇよ」
「うっ!」
アレンはパブフネッカを睨みつけると、彼女は術式を消失させた。
「……私、やっぱりやらかしちゃった?」
「やらかしだよ。プリムさんに暗示魔法をかけ、そして真相心理を司る……なんだ、よくわからん魔法で俺を見えなく、心の声が漏れるようにしたんだろ? なぜそんなことをするんだ?」
静寂が再びアレンとパブフネッカを包み込む。
深夜二時前。
起きているにはすこし辛い時間帯である。
「私にもよくわからない。きっと、こっちの方が正解なんだろうなって思ってやったことだよ、アレン君」
「正解……?」
「そう。私なりのね。プリムちゃんの本意が聞けたでしょ?」
「そ、そりゃまぁ……」
「だったら、それでいいんだ。そもそもそれが目的でプリムちゃんをアレン君のいるお風呂に突っ込んだんだから!」
と、パブフネッカは立ち上がり、コップを厨房手前に置いて背伸びをする。
服に覆われた巨大な胸。
パツパツとボタンがハチきれんばかりに悲鳴を上げる。
「あのね、アレン君。私はね、アレン君のこと、好きだよ」
「――えっ」
「だけど、これは私が一方的に好きなだけでいいの。悟ったんだ、私の隣に居て幸せになれる人はアレン君じゃないかもしれないって」
パブフネッカは歩き、フロアの棚に入れてあった下着とパジャマをとり、
「私は、プリムちゃんとアレン君が付き合えばいいなって思うよ。でも、二人とも奥手だし、自分に素直じゃないし。だから、私がアシストしようと思ったわけ! これで納得がいく?」
「な、納得いくかよ! パブちゃんはその……俺のことが好き、なんだろ? だったら、なんでパブちゃんはプリムさんに俺を譲ろうとするんだよ!」
アレンは立ち上がり、机がガタンと揺れる。
「――私はもう、幸せだから、かな」
パブフネッカは金色の髪をかき揚げ、アレンの問いに答える。
麗しく、艶かしく。
頰は赤く、そしてどこか潤んだ目で。
「これは、私なりのイタズラ! 前、イタズラするって言ったのスルーしたでしょ、それが、今!」
「だ、だが俺はまだパブちゃんの『好き』への答えを言ってないんだぞ! なのに、そんな簡単に諦めちまうなんておかしい! お前らしくないぞ!」
アレンはパブフネッカのところまで走り、彼女の手を取った。
――童貞王・アレンが初めて自ら女性に触れた瞬間だ。
「私は、アレン君が好き。だから、今、とっても幸せなんだ」
「パブちゃん……!」
「幸せをありがとう、これからもよろしくねアレン君!」
言い、パブフネッカは風呂の方へと消えて行った。
読んでいただきありがとうございました!
ーーなぜ突然、パブフネッカはアレンをプリムに譲り始めたのか。
それは、のちのちわかってきます。
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