第69話 世界はロリコンで満ちている
ーーイリス視点ーー
「はい、今日は三日月さんが欠席です。ではみなさん今日も1日頑張ってください。解散!」
さて、確か1時間目は音楽だったな。
「月美ちゃんおやすみなんだね」
光ちゃんが話掛けてきた。
「本当にバカだよね? 私から主人公奪おうとするなんて♪」
「「「「「イリスちゃん!?」」」」
「冗談だよ」
全員揃って真に受けるんじゃない。俺はサイコパスじゃないんだからさ。
「光ちゃんその顔はなに?」
「な、なんでもないよ。早く行こ?」
「あっ、うん」
俺ってサイコパスじゃないよな? 確かにたまにわざとそういうことを言ったりするけど、ガチで言ったことはないと思うし、行動だってヒトの庭でオタマジャクシ育てたり、将来の夢の発表会でたくさんの綺麗なお嫁さんが見れるから牧師になりたいなんて発言してないぞ?
「おっ、幼女ちゃんだ」
「誰が幼女ちゃんだ! って日向先輩……出番がないからって無理やり登場しなくても……」
「酷い言われようだな。今日部活あるから部室に来いよ」
部活か……めんどくさいな。でも小鳥の居残り教育も昨日終わったばかりで暇だしいいか。
「わかりました。じゃあ放課後に」
「あいよ」
「光ちゃん、行こ?」
俺は光ちゃんに抱っこされたまま音楽室まで移動した。
「はい、ではこの記号を五十鈴さん」
「フォルテです」
「正解です。じゃあこの部分を歌ってください」
いろいろと酷いな。正解したら歌うのかよ。
「わたしは、ロリコン。ずっとロリコンだった♪」
今俺ができるツッコミは3つ!
1つ、歌詞が酷い! 2つ、教科書にのせるな! そして3つ! この世界はロリコンで溢れ過ぎ!
「じゃあこの続きを変態熊 木地くん!」
「僕はロリコン。幼女が大好き。特に銀髪で翠色の目をしたロシア人の血が混ざっている幼女が大好きだ♪」
この変態熊殴り飛ばしてやろうか? めっちゃ俺に告白してくるじゃん。
「変態熊くん、ごめんね。私は光ちゃんの方が好きだから」
「なんで僕が告白したみたいになってるの!?」
さて、取り敢えず警察呼ぶか。
「ちょっとタブレットで警察呼ぼうとしないでよ!」
モブは黙って捕まっとけ!
「はい、ちょっと君こっち来ようか?」
「この黒服おじさんたち誰!?」
わたくしの護衛をしてくださっている光ちゃんの上司さんたちでございます。
「お疲れ様です」
「はっ! では失礼します!」
「うえっ!? ちょっと待っ!」
これでロリコンが1人消えた。護衛さんたちが教室から出て行くのを確認したら、俺はみんなの方を振り返った。
「次は誰の番かな?」
「イリスちゃん怖いよ! 先生、何とか……あれ!? 先生は!?」
光ちゃんが指さした方向を見ると先生は消えて変わりにぬいぐるみが置いてあった。そして音楽室の扉が閉まる音がした。
「また1人減ったね♪ 次は誰だろうね」
「ひっ!」
光ちゃんは次は自分の番だと察したのか遠くに逃げて行った。
「イリスちゃんそういう冗談はやめ……って! イリスちゃんが居ない!?」
「イリスちゃん、こういうのはどうかと思うよ?」
「はい、すいませんでした」
俺は小鳥に廊下に出されて正座させられていた。
コイツちゃんと授業してるのか? 毎回俺の所にくるよな? しかもなんで怒られてんだ?
「でもモブだからどうでもいいわね。じゃあ職員室で遊んで待ってようか?」
めっちゃ子供扱いされてるけど、小鳥の前では余計なことは言わないと決めたんだ。黙っていよう。
昼休み……
「じゃあイリスちゃん、私お仕事だからじゃあね」
「あっ、うん……」
さて、月美ちゃんと……居ない! まさか俺ボッチ!? 仕方ない小鳥のところに行くか。
移動中……
「ぷっ! それで誰も居なくてボッチだから私の所にきたのね! ホント哀れね!」
「うるさいよ!」
「でも残念ね。私これから会議なのよ。だからごめんね! さらばっ!」
小鳥は目にも止まらぬ速さで逃げていった。
逃げるの早いな……中庭にでも行くか。
移動中……
「はい、あーん」
「あーん」
やっぱり来なければよかった。リア充の塊しか居ない。しかもドイツもコイツも胸ばかり見やがって! そんなに巨乳がいいのかよ!
……ん? 別に男の目なんてどうでもいいはずなのになんで気にしてんだ? まさか身体の影響か!? まあ、そんなこと考えても仕方ない。変わったら変わったで何とかなるだろ。取り敢えず部室にでも行くか。
移動中……
「はぁはぁ……」
階段のクソやろう……部室棟にもエレベーターを付けろよ。
「……あれ? イリスちゃん?」
部室に行くと日向先輩が居た。
「日向先輩どうしてここに居るんですか?」
って俺と同じくボッチ飯か。藤木先輩が休みなのか。
「いや、それはこっちの……お前もか。ほら、こっち来て一緒に食おうぜ」
弁当箱手に持ってたから一瞬で見抜かれたな。まあ、1人で食べても変わらないしいいか。
俺はコートから踏み台を取り出し、椅子に座った。
「前々から思ってたんだが、コートの中を整理すれば階段とかで疲れないんじゃないか?」
「ふえ? ……あっ」
「おいおい」
そうだったのか。まさかコートに余計なものが多かったから体力が少なく感じたのか。よし、あとで気が向いたら整理しよう。
「まあ、いいや。取り敢えず……」
「「いただきます」」
さて、今日のお昼は……
俺は弁当箱を開けると白いお米が1面に詰まっていた。
「…………」
「お前の弁当ずいぶん寂しいな」
アリサ許さん……帰ったら覚えておけよ?
「ほら、俺の分もわけてやるよ」
「いえ結構です。日向先輩のお昼ご飯カレーパン1つじゃないですか。私に渡したら殆ど残らないじゃないですか」
「私に渡したら……そんなギャグを用いてくるとはな。寒いぞ?」
「なっ!?」
いつの間に俺はギャグを言ってたんだ!?
「ひ、日向先輩こそ早く部長の胸を揉んで絶望してください!」
ん? なんか失言したような気がする。
「なんで絶望するんだよ! ……ん? まさかアレで盛ってるのか?」
「(こくり)」
「ジーザスッ! つまり俺は騙されてたのか! 通りで智也が乗って来ない訳だ! アイツ知ってたのかよ! クソォォォォ! このままじゃ気がすまない! やるとこまでやってやるぜ! じゃあな!」
日向先輩は部室を飛び出して行った。
「もしかして……また私1人?」




