第7話 アリサとお買い物
あれから俺はネットというものを使って俺が死んでからの情報を集めていた。
人類はここまで進化してたんだな。にしてもわからない用語が多すぎる。最近話題のえーあい? とかいうやつもよくわからん。
「はぁ……疲れた。まさか高校のレベルもここまで上がってたんだ。暇潰しのために復習してたけど全くわからないよ……仮定法過去完了ってなに? 複素数平面? 微分? 積分? なにそれ? それに鎌倉幕府って1192作ろうじゃなかった? なんで変わってるの?」
『今時の高校生は大変そうだな』
啓介が何と言おうと俺にはやるしかないから仕方ない。理解するまでやるか。どうせ暇だしな。
するとアリサが部屋に入ってきた。
「イリス、これから出掛けるわよ」
珍しいな……
「どこに?」
「ネオンモールよ」
ネオンモール? ああ、イオ……
「どうしたの? 早く準備して」
「あっ、うん」
俺はいつものパーカー&コート+手袋&ヘッドホンを装備する。
「今日からはこれもしなさい」
俺はアリサが出してきた薄い黄色のマフラーを受け取った。
初めて水色から離れたな。いや、タイツとかは普通に黒だが、こういうのは全て水色だったからな。こういうのも悪くない。
「じゃあ行こうか」
「うん!」
「あっ、これ酔い止めね」
「ありがとう、ママ」
俺はアリサから酔い止めを貰った。
いやー、久しぶりの外だな。にしてもこのコート本当に凄いな。便利過ぎだろ。
「これその辺で発売したら完売するね!」
「それはないと思うわよ?」
何故!?
「え!? こんなに便利なのに!?」
「その中の気温じゃ普通の人は熱中症になっちゃうよ」
……そうだったな。どうやら俺の感覚が狂ってたようだな。
「そうだったね。早く行こうか」
「そうね」
俺はアリサと車に乗ってネオンモールに移動した。
「うわーっ!! きれーい!!」
ネオンモールはとても綺麗だった。我ながらとても女の子らしい声がでたな。そういえば途中で幽霊とか見かけなかったな。もしかしてほとんどの幽霊ってお墓にいるんじゃないか?
「ほら、そんなところにいつまでも居ないで早く行くよ」
「待ってよ!」
俺はアリサを追いかけた。それからアリサと移動をしてたが、移動中に凄い視線を感じた。まあ仕方ないと思う。こんな髪色してる親子が居たら普通は気になるだろ。
「さあ、イリス。好きなもの選んでね」
移動し終えるとアリサがランドセルの並んでいる棚の前で何か言った。
「あのポーチが欲しい」
俺は近くにある結構気に入った色のポーチを指した。ちなみに色は水色である。だいぶ洗脳されてきたな。
「あとで買ってあげるね。今はこのランドセルを……」
「いらない。不要。大きい。ゴミ。重い。邪魔」
「イ、イリス? どうしていらないの?普通これくらいの子ってランドセル欲しがるものじゃ……」
テレビすら見せないで部屋に閉じ込めてる奴が何を言ってるのかさっぱりわからないな。そもそも小学校ってなに? って言うことすらできるぞ。つーかまだ5歳だから使うのは来年だろ?
「らんどせるってなに?」
「……あっ、しまった。今度タブレットで調べて置きなさい」
ようやく気づいたか。っていうかアリサが教えるんだよ。何勝手に自習にしてんだよ。……はっ! 長年の付き合いの勘が言っている。アリサがあと1秒後に転ぶ! でもこの体じゃ何も出来ないし諦めるしかないか。
「うわっ!」
え? こっち? ちょっ!?
「きゃあ!?」
ドサッ!
「痛たた……ん? イリス! ごめんね! 大丈夫!?」
「sa3&vedahUKEwi4itr8ltrkAhV1KqYKHTjhBEsQwqsBMAB6BAgIdghEAOvVaw0VTJzWxrN8ZF4xbU2n58ovuk」
「いきなりどうしたの!? イリス! しっかりして! イリス!」
「冗談だよ……小鳥お姉ちゃんはこういうことすら予測してたんだね」
俺の頭部にはエアバックが膨らんでいた。実は袖のところに紐がついていて引っ張るとフードの中に空気が自動で入るようになっているのだ。ちなみにもう一度引っ張ると空気は抜けるようになっている。
「さすが小鳥ね……助かったわ」
助かったじゃなくて転ばないでください。この機能無かったら頭まっしぐらだったぞ。
『アリサも変わらねーな。お前はああなるなよ?』
誰がなるかよ。
「じゃあランドセルは水色でいいわね。帽子は……不要ね」
そうだな。ヘッドホンで邪魔だし、日除けとかコートとタイツと手袋で覆ってるからそんなものいらん。むしろこっちの方が優秀だ。
「上履きは何色がいい? 水色?」
さすがに上履き水色はいらないな。
「黄色で」
「足のサイズはこれね。じゃあ次ね。次はノートだね。どれがいい?」
そうだな。まずジャポ◯カはいらないな。普通にこのレポート用紙でいいか。
「……それノートじゃないわよ?」
「なんか便利そうだったから……だめ?」
「……せめてこっちにしなさい」
ルーズ◯ーフとファイルが渡された。
「じゃあこれで」
アリサはファイルとルー◯リーフをいくつかかごに入れた。
「次は筆記用具ね。どれにしようか?」
「これで」
「それは羽ペンよ! いつの時代よ! っていうかなんでそんな物売ってるの!」
やはりアリサもツッコミ度は高いままだな。筆記用具は一般的なやつでいいか。
その後、ランドセルとポーチと一緒に会計を済ませ、夕飯は珍しく外で食べることにした。というか初めてである。
というわけで俺とアリサは夕飯を食べるためデ◯ーズに移動した。
「い、いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「二人です」
「ではこちらの席にどうぞ」
俺とアリサは席に案内された。
「じゃあなに食べようか?」
「かきご……」
「死ぬわよ?」
まだ言い切ってないんだが……
「……オムライスで」
「すいませーん」
その後注文をして、待っていた時のこと。
「イリスはあの部屋からあまり出られなかったけど、今日外に出てみてどうだった?」
別になんともなかったな。別に外で遊ぶこともしなかっただろうしな。でも……
「外に出るのもいいね」
「そう。これからイリスは学校っていうところに行くから毎日外に出るようになるからね」
マジか。小学校とか行きたくねー絶対暇じゃねーか。ん? あれは……
「イリス?どうしたの?」
「んーんなんでもない」
将吾? それと知らない人3人? 男の人は将吾と仲良さそうにしてるな。しかもその人は向こうの女の人とやけにデレデレしてるな。カップルか? だとしたらもう1人の女性は? あっ、これは……
「こちらへどうぞ。それではごゆっくり」
マジか……何故俺の後ろの席なんだ。しかも壁が高いからアリサからは見えないだろうな。俺も声しか聞こえないし。でも座席の配置は俺の方側に男二人で将吾が通路側、女性二人が反対側だな。今はそれしかわからんな。
「お待たせしました。お子さまオムライスとカルボナーラです。ここからお1つどうぞ」
いらねーゴミの結晶だな。アリサも店員さんも凄いニコニコしてるし断れないな。適当にこの宝石の形したピンク色のプラスチックが3つ入ったやつにしとくか。これコマとして遊べるし、っていうかそっちが本命だろ? 見た目なんて適当だろ?
「これで」
「はい、それではごゆっくり♪」
店員さんは立ち去っていった。
「やっぱりイリスも女の子だね」
「急にどうしたの?」
「べーつーにー? さあ、早く食べようか」
なんかムカつくな。
「……いただきます」
「はい、召し上がれ私の愛情たっぷりのオムライスよ」
お前が作った訳じゃねーだろ。どうせ厨房にいるであろうおっさんの愛情だろ。お前を召し上がってやろうか? あ、別にやましい意味はないからな。だって俺、相棒いねーし。
「どう?」
「普通」
「そこはもう少し可愛いらしい反応してよ!」
仕方ないな……1回だけだぞ?
「だってママの作ったやつの方が美味しいんだもん」
「まあ! 明日はご馳走にしてあげるわね!」
よし! ご馳走きたー!! お肉だよな? お肉に決まってるよな?
「イリス早く食べなさい。冷めちゃうわよ」
お前冷めるの早いな。さっきまで喜び捲ってたくせに……仕方ない、食べながら将吾の会話でも聴いてるか。
「そういえば将吾は優里ともう5年も経ったんだな」
「そうだな。ずいぶん早いな」
「全く、奥さんに見つかったらなんて言われるんだろうな」
……は?