第51話 オカルト部活動 ~~交差点の地縛霊である赤い猫編~~
という訳で来てしまったネオン。時刻は夜の8時……から30分遅れた8時30分だ。
「はぁはぁ……何も走らなくても……」
「いや、俺は走ってないんだが……」
家で待機してたら本当に迎えに来やがったので、仕方なく行くことになった。
日向先輩、どうやって家の住所を……
「本当に家で待機してるやつが何処にいる!!」
「「「「すいませんでした!」」」」
全員揃って家で待ってたのかよ。
「イリスちゃん、私が抱っこしてあげるわ」
「あっ! 部長さん! それは私の役割ですよ!」
「いやよ」
部長、そんなに俺のことを抱っこしたいんですか?
「この髪質の良さ、程よいモフモフ感、いいわ。堪らないわ。持ち帰らせて貰うわ。それじゃあ日向、また明日」
部長は俺を抱えたまま携帯を取り出し、歩き始めた。
「いやいや、何帰ろうとしてんですか!」
「何よ。私はそんな戯れ言よりも早く『ウンキョク』を作って、たこ焼きが貰いたいの。邪魔しないで」
ゲームやりたいだけかよ。つーかたこ焼きって……
「今度たこ焼き奢りますから!」
「そう? 悪いわね。それじゃあまた明日」
音姉同様、図太過ぎる……最早それは尊敬に値する!
「部長、足元にブツが……」
ふぇっ!?
「きやああああああああああっ!!!」
俺は部長の力によって空高く舞い上がった。
おお、めっちゃ飛んでる。すげぇ、着地どうするか。
「イリスちゃんキャッチ!」
「ええっ!?」
月美さん!? 何故この高さまでジャンプできるんだ!? っていうかいつまで飛んでるんだよ!? なんで物理法則無視できるんだよ!?
スタッ!
「先輩、早く行きましょ?」
「そうだな。よし、お前ら行くぞ!」
俺は月美さんに抱えられたまま例の交差点に移動した。
「うん、お前もう歩くな。普通にそっちの方が速い」
知ってるから追い打ちやめろ。余計に傷つく。
「ここね……トラック来ないわね。帰りましょう」
「まだ来て10秒も経ってませんけど!?」
日向先輩は素晴らしいツッコミ役だな。俺のイタズラ心が擽られるぜ。
「トラックが来たぞーー!!! トラックが来たぞーー!!!」
藤木先輩、大声出すな! 近所迷惑だ!
そして目の前をトラックが通り過ぎていった。
「「「「…………」」」」
「じゃあ私はこれで」
「暗黒世界が我を呼んでいる。ではさらばだ」
「私もこれで失礼しますね……」
「じゃあな太陽」
月美さんたちは俺を下ろして颯爽と帰っていった。
おい、こっちを見てくるな。どんなに見てきても帰るぞ。
「それじゃあ失礼します」
「よし、イリスちゃんはそこで待て」
早く帰りたい。
「ん?」
「どうかしたのか?」
赤い猫さんホントに居た……あっ、トラック来た。
『ひゃくれつにく……どかにゃ!!! ボクは死にまへーん!』
キランっ!
赤い猫は星になった。
「んーん。なんでもない」
「そうか。折角だし何処か食べに行かないか?」
「結構ですよ。それじゃあまた明日」
「まあ待て、こんな時間に女の子1人は危ないだろ? だから食べに行こうぜ!」
訳がわからん。普通は『送ってやるよ』だろ?
この後、俺は必死に説得するも日向先輩が聴くことはなく、俺は仕方なく付き添うことになった。そして日向先輩に連れられたのは屋台だった。
「ここだ。おっちゃん、ラーメンくれ! イリスちゃんはどうする?」
「私は中華料理は無理なので……」
「ラーメンもか?」
「はい……」
まあ、正確には油が凄くて、野菜が入ってるラーメンが無理なんだがな。説明するのもめんどくさいし嫌いってことにしとけばいいか。
「そっか……じゃあおでんなら大丈夫か?」
「はい、そうですね。でも私お財布持ってないですよ?」
「ああ、俺が奢るから気にするな」
そうか? じゃあ折角だし、奢って貰うか。
「焼ちくわとちくわぶ、それと生ちくわで」
「あいよ!」
「全部ちくわじゃねーか! どんだけちくわ食うんだよ!」
ん? こ、これは……
「店主さん、この焼き鮭ってありますか?」
「ん? おお、残ってるぞ」
マジか! よし、貰った! 焼き鮭教徒の血が疼く!
「それください!」
焼き鮭ゲットォォォォォォォッ!!!
「お、おう。いきなりテンション上がったな」
焼き鮭教徒ばんざーい! ばんざーい!
「そんなに焼き鮭が好きなのか?」
うっ、バレたか……これでは餌付けされてしまう……
「そ、そんなことありませんよ! 別に餌付けされちゃうから隠してるとかそんな訳ないですよ!」
……あれ? 今のまるでイリヤちゃんみたいになってるぞ?
「……そうか(なるほど、コイツの餌付け方法がわかったぜ。これでこいつの胸を人質に雪さんと月美さんの胸を……ゲヘヘ!)」
「お主、邪な目をしておるな?」
今の俺にはお前が考えてることなんぞお見通しだ。
「そ、そんなことあーりませんよーあはは! ほら冷める前に食べるぞ」
「……そうですね」
さて、焼き鮭を貰うか。だが、先にちくわを食べなければ。
「そういえばイリスちゃんはどうしてコート着ないといけないんだ?」
前に死ぬからと言ったはずなんだが……
「死ぬからです」
「どうして?」
別に大した秘密ではないし、幽霊が見えることさえ言わなければいいだろう。
「昔から体温が他人より高くて、常に40度必要なんです」
「40度か……だが、そのコートだけで40度なんて超えることができるのか?」
「普通なら無理ですね。でもこのコートは特別製で中の温度が40度を保つことができるんですよ」
今でもこのコートは素晴らしいと思うな。
もし、このコートが無かったら俺はどうしてたんだろうな。
「へぇ……便利だな。俺にも着させてくれよ」
「ヒトの話を聞いてましたか? 私が死にますよ?」
すると横から二人の男の人がやって来た。
「マスター、ビールくれ」
「あいよ!」
「パパ?」
何故に将吾!? そしてマスターって誰!?




