第6話 イリスと小鳥 2
あれから数日後、再び小鳥が遊びに来た。
「イリスちゃん、久しぶり」
「小鳥お姉ちゃん!」
俺は小鳥に抱きつく。
「すっかり仲良しね。じゃあ私は買い物に行って来るから小鳥よろしくね」
「わかってるよ」
アリサは部屋から出ていった。
「それであれから何か変わった?」
「いや、特にはないけど。啓介が私の睡眠を妨害してくる」
本当に成仏しろよ。夜な夜な話そうぜ、話してくれよ。とか言ってきてマジでうざいんだが。普通の女の子だったら恐怖を覚えるぞ。
「そう、幽霊が見えるって大変なのね。他の霊たちは居ないの?」
「啓介がいると近寄って来ないみたい」
「お疲れさまとしか言えないね」
「そうだね」
啓介、お疲れさま。
『ホントなんでだよ! 1人くらい近寄ってくれよ!』
まあ、啓介のおかげで他の霊が近寄って来ない点だけは褒めてやるよ。っていうかこの部屋で幽霊見たの啓介が初めてなんだけどね。
「ところで小鳥さんや」
「なにかねイリスさんや」
「こちらをどうぞ」
俺は例のビデオカメラを渡した。すると小鳥はビデオを確認した。
「ほほうイリスや、お主もなかなか悪よのぉ」
「小鳥さんほどでは……」
『どこの時代劇だよ』
俺がビデオを渡した理由は偶然とはいえ、アリサに小鳥の秘密が伝わってしまったからだ。小鳥もアリサに何かしないと気がすまないだろう。こっちに矛先が向くくらいならアリサたちに向けようと思ったのだ。だってリア充は滅ぶべきだと思うし。
「それで小鳥さんや、例のモノは?」
「イリスちゃんのために用意しましたよ」
小鳥は箱を取り出し、俺に渡した。そして、俺は箱を開けた。
「おおーっ!! これだよ! これ! 小鳥ありがとう」
箱の中にはタブレットが入っていた。お墓参りの時に小鳥が使ってたのを見て気になっていたのだ。
「……なんか新しいおもちゃを貰って喜んでる子どもみたいだね」
oh……
「さて、それでは電源をつけよう! ……どうやってつけるの?」
「イリスちゃんは……そうだったね。知るよしもなかったね。死んでたし、引きこもりだからね」
「いや別に死にたくて死んだ訳じゃないし、引きこもりは親の強制だからね?」
まるで俺が社会のゴミみたいに感じるじゃねーか。部屋の暖房代とかで実際にそうだけど。
「電源はここを押すのよ」
俺は小鳥の指したボタンを押す。
「おおーっ! ついた! これが時代の力か!」
「いやテレビとかでも電源つけたらつくでしょ…」
そういえばそうだったな。テレビとか産まれてから1度も見てないぞ。家をうろついた時に見かけたくらいだぞ? ずいぶん薄くなってたな。俺が死んでた間にどれだけ進化をしてきたんだ。
「それでここをこうするとネットに繋がるのよ。それでここで電話ができるんだよ。中には私の連絡先も入ってるからここを押すと私に電話できるわ。だいたいはこんな感じかな? 何か聞きたいこととかある?」
そういえば機械とか熱に弱かったような……
「温度とか大丈夫なの?」
「大丈夫よ。これは熱と衝撃に強い特殊なタイプだから気にしなくていいよ。」
なら安心だな。じゃあさっそくこのわーちゅーぶ? っていうやつを見てみるか。
「どういうの見ればいいの?」
「ここで見たいものを入力するのよ最近だと『真冬の夜の◯夢』っていうのが人気だよ?」
「へー」
小鳥がその動画を開く。すると映像が流れた。
「おおーっ! 凄い! こんなに小さなテレビなんて時代も進んだんだね!」
「そうでしょ? もうこれがあるだけでかなり便利なんだよ。あっ、ほら見て、もうすぐクライマックスよ」
俺は画面を見る。すると男の人と男の人が……
「こ、ことり……?」
俺はギギギ……っと音がなる感じで小鳥の方をみた。
「どうしたのイリスちゃん?」
「え? だってこれ……男同士で……」
パシャパシャ!
「イリスちゃん顔真っ赤してて可愛いね。安心して、私にこんな趣味はないから。ちょっとイリスちゃんの反応が見たかっただけだから本当はこっちだよ」
反応が見たかっただけでホモの動画見せられる側にもなってみろよ。
『ハハハハハハハ、人間どももっと脅えてみせろ!』
……なんだ戦隊ものか。こんなのは絶対に俺向けじゃないだろ。
『ほら、もっと脅えて俺にそのち◯こを見せろ!』
……は?
『そこまでだ! やめろホモ怪人!』
『なんだお前は!』
そういう設定の怪人なのね。はいはい。ビックリしたなー
『全ての情熱をBLに注ぐ愛の戦士! ホモレッド!』
ん?
『クールなBLイケメン参上! ホモブルー!』
『毎晩世界に生きる腐女子のおかず! ホモイエロー!』
『みんな大好きショタ系ホモ! ホモグリーン!』
『ドロドロ系でみんな揃ってやりますねぇ! ホモブラック!』
あれ?
『『『『『5人揃って! ガチホモ戦隊! ホモレンジャー!!』』』』』
ドーン!!
「やめろ!! 日朝からなんてモノを放送してんだ!! そんなもの放送中止になれ!!!」
「実はこれ1話しか放送されなかったんだよ……」
放送中止になったのかよ……
「気を取り直して、こういうのとかどう?」
「もう男同士はやめて……」
「もう大丈夫よ。今度は普通だから」
仕方ない、1話だけ見てやろう。
『ホモガキ戦隊! 真夏の夜ナンジャー!!』
プツンっ!
「小鳥ちゃん?」
「……すいませんでした。許してください。なんでもしますから!」
おおう!! いま、なんかすげー鳥肌が……