第17話 お友達の家庭訪問
小鳥の車で家まで帰ってきた俺たちは玄関の前にいた。
「思ってたよりもショボいね」
「一体どんなの想像してたの……」
「「「ス◯ちゃまのお家ザマス!!」」」
そんな豪邸な訳ないだろ。そういえば最近白髪の幽霊さん居ないな。どうしたんだ? 成仏でもしたのか?
「まあ、いいから上がってよ」
俺たちは家に入り、手を洗ってからリビングに向かった。
「みんないらっしゃい、イリスがお世話になってるね。ちょっと待ってて、今飲み物淹れてくるから」
アリサは飲み物を淹れに行った。……ん? アリサが? マズい!
「……小鳥お姉ちゃん!」
「はっ! すっかり忘れてた! アリサ! 私が持って行くよ!」
ガシャンッ!
「きゃあーーっ!!」
よし、これでアリサを封じることに成功した。あのまま行ったら間違えなく飲み物をぶちまけてたな。……今絶対落としたよな?
「ねーねーあそぼー」
早くも次の問題きたーー!! コイツ絶対中身啓介だろ! 毎回触れてくるところが変態的だしな。
「んっ……ほら、アリスはあっちでママと遊んでなさい。ママー! アリスを持って行って!」
するとアリサは即座に飛んできてアリスを回収していった。
あなたの身体能力はどこから? 俺の身体能力は喉から……
『あなたの風邪に狙いを決めてベンザブ□ック♪』
頭の中に何か流れたな。これ結構テンポいいよな。それによく風邪の時とか便利だしな。
「イリスちゃんの妹って凄いあれだね……」
だろ? 俺も思ってた。特に行動とかヤバいよな。
「オレンジジュース持ってきたよ。はい、イリスちゃんは温かいお茶ね」
「ありがとう、小鳥お姉ちゃん。それで人生ゲームだっけ? うちにあったっけ?」
「……ちょっと待っててね」
5分後……
「あったよ。はい、これ」
おい、この人生ゲームに凄い見覚えあるんだが? 確かこれって天文部で普段活動がないからという理由で小鳥が作ってきたやつじゃなかったか? まあ、内容は……クソだな。うん。
「じゃあみんなで楽しんで……」
ガシッ!
「小鳥お姉ちゃんも一緒にやらない?」
「せっかくなんだから子どもたちだけで遊んでなさいよ。それに先生が近くにいると堅苦しいでしょ?」
ふっ……それは悪手だ。中学生、高校生相手ならその判断は正しいが今回の相手はまだ礼儀というものを殆ど知らない6歳7歳の子どもたち。普段の相手が大人だったからそれが裏目に出たな。
「そんなことないよね?」
「「「うん! 先生もやろうよ!」」」
「え? え?」
「ほら、小鳥お姉ちゃんも」
「うえっ!?」
こうして小鳥も巻き添えを喰らったのであった。
そして俺たちは人生ゲームを開始した。順番はくじ引きにより光ちゃん、蒼真くん、陸くん、士郎くん、小鳥、俺の順番になった。
「じゃあ行くよ。それ!」
光ちゃんがルーレットを回す。
「7だ! 1、2、3、4、5、6、7! えーと台風で家が飛ばされて家を失う。所持金2000万円失う。え!? 光早速借金!?」
光の速さで借金だな。
本当にリアルな人生ゲームだ。金額までリアルにするなよ。
「僕の番だね。3か……1、2、3……火事で家が全焼、近所にも迷惑が掛かった。次の番の人と一緒に1000万円失う」
「俺も!?」
どんまい。1度やってるから知ってるが実はこの人生ゲームにお金が増える手段はない。つまり借金のみ増えて行くのだ。しかも最終的に凄いインフレして単位が惜しくなる。マジでクソだった。
「俺は……4だ。えーと、突然の雷雨で大怪我。治療費として50万円失う。……まあ、さっきまでに比べればマシだな」
「陸ざまあないな。次は俺の番だ! ……7? まさか!」
そうだ! 光ちゃんのあのマスだ! 貴様も2000万円失え!
「次は私ね。10ね……彼氏が出来ず永遠に処女、友人の結婚式で9万円失う……」
生々しいな。まあ、これ作ったのお前だけどな?
「えっと……その……どんまい! まだまだこれからだよ!」
「余計に惨めになるからやめて」
「しょじょってなに?」
「未婚で彼氏が出来てない哀れな人間よ……そう……私みたいな……」
「せ、先生にもきっといい彼氏さん出来るよ! 先生美人さんだし! 優しくて、なんでもできるから!」
美人過ぎて、性格も優しくて、なんでもできるから彼氏が出来ないなんて誰が思うだろうか……男視点ならわかるかもしれんが、女の子視点ならわからないかもな。
「つ、次は私だね。9? えーと天体望遠鏡を破損、修理に出す。20万円失う」
元天文部としては結構痛いな。まあ、他のみんなと比べればまだマシだろ。金額的には小鳥が一位だな。
「光の番だね! この借金を無くして見せるよ!」
それは無理だ。諦めろ。
「会社がクビになった。20万円失う……」
ほらな。
そしてそれから何周かした後の小鳥の番……
「最後の友人が結婚式を挙げたら『まだ独身なの~』とバカにする。独身なら15万円失う……」
小鳥の表情が……写真撮らねば! アリサは……扉の隙間から撮影してたな。あとで見せて貰おう。
「も、もうやめておこうよ」
「そ、そうだね。先生、ここら辺でやめて他のことしようよ」
「いえ、こんなところで引き下がってたまるものですか! 最後までやるよ!」
やめておけよ。絶対後悔するぞ。
1時間後……
「こ、小鳥お姉ちゃん、おめでとう1位だよ!」
「誰よこれ作ったの!」
お前だよ! つーかキレるなよ! 子どもの前だぞ!
「だからやめて置けばって言ったのに……」
「イリスちゃん、もしかしてあれ全部当たってるの?」
「……信じるか信じないかは光ちゃん次第です!」
「当たってるんだ……」
「みんなお昼ご飯出来たよ」
アリサが声を掛けた。
助かった……この空気をどうすればいいのか困ってたんだよ。今回ばかりはナイスだ。
ちなみに昼食はうどんだった。昨日アリサの買い物袋の中にうどんの袋が入っていたので手抜きの感じがした。
でも俺だけは好物の焼き鮭である。焼き鮭は素晴らしいのだ。焼き鮭はごはんにも合うし、単品で食べても美味しい。それに残ったら他の料理に使うこともできるのだ。俺はこの素晴らしい食材を神様とし、新たなる教団を作り上げた。その名は『焼き鮭教団』だ。焼き鮭教団は焼き鮭をこよなく愛し、鮭を釣ってくれた漁師さん、食べる鮭を産んでくれたお義父さんお義母さんに感謝する教団。単体での活動は『焼き鮭教徒』となり、焼き鮭の素晴らしさを広めるのだ。
そして、みんなで昼食を食べ、午後のこと……
「イリスちゃんの部屋ってどこにあるの?」
「私の部屋? そこだよ?」
俺は厳重そうな部屋の扉を指した。
「「「「え? 軟禁ですか?」」」」
いいえ、監禁です。
「入ってみる?」
「「「「いいの!?」」」」
4人揃って凄い迫ってきた。
「い、いいよ……」
そんなに気になるのか? 何もないぞ?
俺は部屋の扉を開けた。
「ほら、おいでよ」
光ちゃんたちが部屋に入ってくる。
「暑いね……」
「暑いな……この温度でコート着てるコイツどんな神経してんだ?」
「むぅ……別にいいでしょ! それにそんなに暑くないじゃん!」
「「「「それはない!」」」」
だろうな。俺も知ってた。でも俺から見れば全然暑くないんだよな。
「じゃあ部屋から出る?」
「そうだね。イリスちゃんの部屋ってぬいぐるみ以外何もなかったし」
失礼な。興味がないだけだ。最近はタブレット一台でなんでもできるからな。ホント便利になったな。
「ねえ、イリスちゃんが普段どんな1日を過ごしてるか見てみたい?」
小鳥? いきなりなにを?
「「「「見たい!」」」」
「じゃあテレビに繋げるね」
「え? ちょっ!? なにするの!」
「死なば諸共って知ってるよね?」
……知らんな。
「ポチっとな」
テレビがついた。
「「「「おおっーー!! ……イリスちゃんまだ寝てる」」」」
斜め下の時間見ると午前3時だから当然だな。
小鳥が時間を飛ばした。
「あっ、イリスちゃん起きたよ」
俺って朝はこんなに眠そうな顔してるのか……あっ、洗面所で顔洗って歯を磨いてるな……ん? ここって脱衣場だよな? それで俺が次に取る行動はお風呂に……
「だめぇーーっ!!!」
「あらどうしたのイリスちゃん?」
「やめて! それだけはやめて!! ちょっ! リモコン返して!」
「え? これ?」
それはピンク色のリモコンだろ! なんでそんなものがあるんだよ! しまっとけ!
「あっ、ほらみんな見物だよ。イリスちゃんの入浴シーンだよ」
画面の中の俺が服を脱ぎ始めた。
「ちょっ! 見ないで! きゃっ!」
ばたんっ!
俺は転んだ挙げ句、そのまま小鳥に抑えつけられた。
「はなせ!! ママなんとかして!!」
「ダメよ。撮影中なの」
「いやあああああああっ!!!」
1時間後……
俺が風呂から上がって、服を着た所で小鳥が映像を止めた。
「ひっく……ひっく……酷いよ……こんなのあんまりだよ……これが人間のすることかよぉぉぉ!」
「よしよし、可愛いかったから大丈夫だよ。それに入浴中は湯気で殆ど見えなかったよ」
光ちゃんが俺を慰めてくれた。将来は小鳥みたいにクズ要素がない優しい人間になってくれ……
「ありがとう光ちゃん。でもね着替えてる時は丸見えだったんだよ……」
子ども相手とはいえ初めて人間の男の人に裸を見られた……もうお嫁に行けない……
「お嫁に行くの?」
「……いや行かないけど?」
焼き鮭教団及び焼き鮭教徒の主な出番は中学生編からです。




