第115話 嫌いなモノが多い幼女は克服の努力をする
この世界には果てしないほど過去に二人の幼子と1人の研究員がいました。
そして、3人は未来を生きる人々のためにそれぞれメッセージを残しました。
初恋が叶うことがなかった少年は死ぬ直前に言った──────
「夢見ることができれば、それは実現できる。だから生き続けろ」と。
初恋の相手を失った少女は言った──────
「大切なモノは失って初めて大切だと気づかされる」と。
そして、最後の研究員は言った──────
「どれだけ強くても、漏らしたらそこで試合終了」と。
そして俺はいま、その最後の人の言葉の意味を身をもって知った。
「イリスちゃん、拭いてあげるね」
「死にたい……」
俺は授業中にオムツを取りかえて貰っている。……クラスメイトが見ているこの教室で。
確かに我慢できなかった俺が悪いけど、アイちゃんもアイちゃんだと思う。何が女子トイレ入りたくないだ。普段からスカート履いてるんだから余裕だろ。
『お前そういう趣味あったんだな。まあ、悪いとは思わないから安心しろ? 世界だって広いんだからそういう人が居てもおかしくないからな。ははっ……』
その腫れ物扱いするのやめろ。そもそもそんな趣味は俺にはない。こっちとら幼女だぞ? 幼女はそんな性癖持たんよ。
お前幼女をナメるなよ?
『……アイリスのそこを見てみな』
そこ?
俺はミトコンが言いたかったであろう場所を見た。
「アイちゃんくまさんパンツ見えてる!」
「ふあっ!?」
俺はあわててアイちゃんのスカートを抑えた。
お前まだ女モノ履いてるのかよ。男の娘としては完璧じゃねーか。
「あ、ありがとうイリスちゃん……でも余計なことは言わないで」
「……はやくオムツつけて」
いくら仕切りがあって周りからは見えないと言っても、いつまでも丸出しだとさすがに恥ずかしいんだけど。
「ご、ごめん……」
アイちゃんにオムツをつけてもらい、授業再開だ。
するとチャイムがなった。
「あっ、授業終わった」
4時間目は特にすることもなくして終わった。一体科目はなんだったのか。それを知る者はいない。
『モブは真面目に授業聞いてたから全員知ってるからな? お前だけだよ。ぬいぐるみで遊んで寝てるヤツは』
だって理系以外は何もわかんないからつまんないんだもん。逆に理系だと簡単過ぎてつまんないし。
『お前基本的に漢字読めないもんな。よく中学校のテストとか大丈夫だったな?』
何を言ってるんだ。ボロクソに決まってるだろ? 国語の問題とか文章読めないから何もわからなかったぞ。
『お前漢文って知ってるか?』
……カンブン? ナニソレ? カナブンの仲間?
『違う。全部漢字で書かれたよくわからないヤツだ』
ぜ、全部漢字!? そ、そんな文章あるのか!?
『たくさんあるからな?』
「イリスちゃん、ごはん食べるよー」
「はーい! いただきます!」
「「「いただきます!」」」
このクラスはテーブルが便利なので適当に4人から6人のグループを作って一緒に食べる。俺はアイちゃんとイリヤちゃんと蒼真くん、モブ二人の班で食べている。
もうひとりぼっちじゃない! もう何も怖くない!
『フラグ立てんな』
「イリスちゃん、これ美味しいよ。食べる?」
「遠慮する」
俺は野菜なんて求めてないんだよ。
あっ、蒼真くん焼き鮭いいなぁ……
「……食べる?」
「「(こくこく)」」
アイちゃんも焼き鮭教徒だから仕方ないな。焼き鮭教徒は『清く、幼く、平等に!』というモットーがある。だから焼き鮭をはんぶんこしてあげないと。
「仕方ないなー」
「「ありがとう!」」
俺とアイちゃんは焼き鮭を半分にして片方ずつ持っていく。
「ちょっ!? 全部持っていくの!?」
「「んんっ~~~っ!!! さすが美味のあじ!! 焼き鮭教徒ばんざーい!!」」
「まあ、喜んでくれてよかったよ……」
なんかイリヤちゃんが蒼真くんの肩を叩いてるけど、気にしないでいいや。
「貰ってばかりじゃ悪いし、これあげるよ」
「あ、ありがとうイリスちゃん……でも野菜は自分で」
「え? 蒼真くん私のこと嫌い……なの……?」
必殺、私のこと嫌いなの作戦。
『お前最低だな』
「そうだね。野菜を押しつけてくるようなヤツは嫌いかな?」
「……ごめんなさい」
まさかこの作戦がこうもたやすく破られるとは……!? アイツ最低だろ! こんな幼女に野菜押しつけるなんて!!
『それお前の野菜だし。黙って食え』
いやそれは無理だからミトコンあとで食べてよ。琴道だった時もそういう手筈だっただろ?
『おい!! あれ俺のエサじゃなかったのかよ!? お前の残した給食と晩御飯だったのか!? なんでそんなもの食わせた!?』
お前が「最近エサが貧しい」なんて言うからだろ。俺は野菜を食べない派なんだよ。
『お前さては学校の昼ごはんカ□リーメイトで済ませる系男子だろ!?』
な、なぜそれを……!?
『それぐらいわかるんだよ! わかったら黙って野菜食え!』
「うっ……」
「イリスちゃん、いつまでもほうれん草持ったまま見つめるのやめたら? 嫌なら食べなきゃいいじゃん」
そ、そうだな。よし、このままフタをして……
『残したらお前の正体バラす』
……ごめん。それは無理。一口なら我慢できるけど、この量の野菜は無理だわ。バラすなら好きにバラしてくれ。
『諦めんなよ!? そこは食べるところだろ! 男なら根性見せろ!』
幼女だから! 今は幼女だから! しかも野菜口に含んだだけで気絶するんだから食えるわけないだろ!!
『できるできる! お前ならいける!』
「悩むなら食べなよ……えいっ!」
「むぐっ!?」
アイちゃんが俺の口にほうれん草を入れると目の前が真っ暗になった。
ばたんっ!
「「「えっ……?」」」
『すまん。俺が間違ってた』
私の高校時代のお昼はカ□リーメイトが主食、野菜ジュースが主菜でした。
クラスメイトたちからは「またカ□リーメイト食べてる。ちゃんとごはん食べなよ。体重いくつなの?」と余計なことを言われてました。
「◯□キロだよ」って言ったら「死ぬよ!? 大丈夫!?」って言われましたよ。
……実は高校時代が終わったの最近なんですけどね。(年齢バレるやつ)
え? 卒業アルバム? 右斜め上にクラスの陽さんたち数人分書いてあるだけで残りはまっさら。不思議と白紙よりも少しだけ書いてある方が惨めになるから、卒業アルバムは白紙をおすすめしますよ。(中学の卒アルが白紙だった私の経験談)