第114話 ふぁんすぃー おぶ ようじょ 2
国語の授業が終わり、次は生物の授業だ。
なんか生物の先生からぬいぐるみが隣の人に迷惑をかけないように仕切りみたいなものをくれた。壁紙がお花などのとても可愛らしいお花畑の風景画だった。そして俺が出入れできるようにフラワーゲートも用意してくれた。なんでも理科の先生が全員で出し合って買ってくれたらしい。
「この傷口を治すのが血小板です。イリスちゃんみたいな幼女がみんなの身体の中にいて傷を治してくれてるんですよ。
つまり傷口を開いてそこを舐めると体内に幼女を吸収できるんです。だからみんなで幼女を吸収しましょう!」
おい貴様何て言う説明をしてくれてるんだ。
「イリスちゃーん、授業中は『いにょにょぎさん』で遊ばないでね。うさぎさんのぬいぐるみを頭に乗っけるのもメッ! ですよー」
くっ、こうなったら必殺の上目遣い!
「せんせーどーしてもだめなの?」
「うっ……」
「イリスね。『いにょにょぎさん』たちとじゅぎょーきくのたのしーよ?」
「そ、そうなのね……じゃあ授業中は静かにしててね? そしたら『いにょにょぎさん』持ってていいからね?」
「はーい!」
どうやら先生相手に上目遣いは効果が強すぎたようだな……! だが、これで俺はぬいぐるみさんで遊んでいられる!
『お前、精神以外完全に幼女だろ?』
幼女じゃないもん! それに知識とか立派な大人だし!
『大人だし発言に子供らしさを感じるのは何でだろうな?』
し、知らんわい! だいたいお前さっきからうるさい! 何でララたちよりも後から出た分際でほぼ毎回出てくるの!?
『そうは言ってもなぁ……お前の影にいるんだから仕方ないだろ』
じゃあ出ていけ!
『お前そんなことやったらお前をボッチにするぞ!』
ごめんなさい。ボッチは勘弁して……ボッチは……ボッチはもうイヤなの……
『おまっ!? 急に泣き出すなよ!? 先生が気づいたらどうするんだ!?』
「……イリスちゃん大丈夫? どうかしたの?」
「あう……ううっ……」
俺は涙を堪えることが出来ず、そのまま先生に心配されて、保健室までルーシーに乗って運んでもらった。もちろん『いにょにょぎさん』を抱っこして。
「それで保健室まで来たの……?」
「うん……」
「あのね。保健室って毎回来た人の記録用紙に記録を取ってるのよ? まだ始まって1ヶ月しか経ってないのにもう4ページ分あるのよ。しかもイリスちゃんだけで3ページ半占めてるのよ? 私の仕事をこれ以上増やさないでくれる?」
別に知らんよ。お前仕事はちゃんとやれよ。どうせルーシーの世話と尿検査以外することないんだからさ。
「とりあえず泣き止んだ? っていうか昔と比べて随分幼女らしくなったわね」
「よっ!? 幼女じゃないもん!」
「誰がどうみても幼女よ……今度幼稚園通ってみる?」
お前ふざけんなよ!? 誰が幼稚園なんぞに通うか! そんなことしたら給食残しちゃうだろ! そしてみんなが食べ終えても1人で寂しく教室で食べて……
「ふぇっ……ボッチいや……いやだ……もうやだよ、こんなのってないよ……こんな……」
パンッ!
「わんっ!(うっ!)」
ばたんっ!
小鳥がルーシーに目掛けて空気砲を当てた。
「魔法幼女が泣くならみんな死ぬしかないじゃない! 啓介も琴道も……!」
すでに両方死んでるんだが……というかルーシーの演技なかなか上手いな。あと『魔法幼女』ってなんだよ。せめて少女にしてくれ。
「はい、ルーシー。ご褒美のごはん………どういうことだおい! コイツ寝てるじゃねーか!」
まさか麻酔効果を持った空気砲だったのか……麻酔針よりも健康にいいじゃん。名探偵も首筋に麻酔針だらけにならないで済むじゃん。
「(やっと泣き止んだわね……さっさと教室に帰さないと授業の出席回数がヤバくなりそうね……)
じゃあ早く教室に戻ろうね?」
俺は小鳥に教室まで運んでもらい、授業再開。
「じゃあここの問題を……加藤さん!」
「重いものから順番に核、葉緑体、ミトコンドリアです!」
「正解です。ここテストに出るので覚えておいてください」
確かルーシーのお母さんは葉緑体だったな。つまりルーシーのおじいちゃんかおばあちゃんは核という名前なのか……
『そんな名前の犬がいるか!』
いや、ミトコンドリアという名前の犬がここにいるんだけど……
それから生物が終わり、数学の時間。
「何であそこだけ異世界を形成してるんだよ。あそこだけ幼女の世界観になってるぞ……」
「イリスちゃんだからあれが本来の背景だと思います!」
本来の背景ってなんだよ。普段の背景どうなってんの? あと幼女の世界観って何?
「まあいい、授業を始めるぞ」
「姿勢を正して! 土下座!」
「「「お願いします!」」」
遂に『土下座』って言ったな。そこは『畳に頭を擦り付ける』だろ?
「にゃんにゃんにゃーん!」
「(おい! あそこに幼児がいるぞ! この高校どうなってんだ!)
じゃあこの問題を白石!」
「X=8です」
「くっ!」
どうした? その程度か? 全世界の人間をこの手に収めたイリスさんだぞ? もっとレベルを上げて出直してきな!
『うわぁ……水の女神連れて異世界転生したあの人と同じこと言ってる……』
「じゃあこの問題は?」
不定積分風情で俺に勝てると思うなよ?
「35億……あと5000万」
「お前の計算能力どうなってんだよ」
天体観測だけで暗算は出来るんだよ。これで文句はないだろ? ゆっくりと遊ばせてもらうぞ。
「もう好きにしてくれ……」
数学の授業は『いにょにょぎさん』たちと寝た。