第95話 イリスたちの実家帰り 1
今日は23時にも更新します。
今日は将吾とアリサと3人で琴道の家に行くことになった。小鳥とアイちゃんは別日に買いに行くと言ってアリスとカラオケに行った。
小鳥のやつカラオケなんて行く趣味持ってたのか。っていうかアリスと行くとは……
「懐かしいね……」
「そうだな」
懐かしい家だな。あの時と違ってずいぶんおんぼろになってるけど……
「あらしょうくんにアリサちゃんじゃない。どうしたの?」
「お久しぶりです琴愛さん」
琴音(長女)琴葉(次女)琴道(長男)ときて、からの琴愛(母)である。この音無一家は先祖代々必ず名前に『琴』を入れてるらしい。ゆえに他の家からは『琴一家』とか言われてる。
ちなみに父の名前は琴助、祖父は琴一、祖母は琴乃、曾祖父は琴太、曾祖母は琴恵。
そして結婚相手は名前に必ず『琴』が付いてないといけない。これのせいでアリサが好きだと小さい頃に言ったら父さんに殴られた。マジ意味不。
とまあ気持ち悪い伝統を持つ家庭がこの『琴一家』である。ちなみに親戚も『琴一家』である。
「あら、ついに産まれたのね。これで二人とも親になったのね。おめでとー」
うん! そんな気はしてたよ! でもね。これだけは言わせて。
今年で16歳だよ!
って言っても母さんは耳があまり聞こえないんだよな。
「あはは、そうなんですよ。今年で3歳ですよ」
おいアリサ! さすがに3歳は頭おかしいだろ! なんで指で3歳だって表現してんだよ!
「3歳になるのね。可愛いわ」
そういえばうちの両親 バカだったな。どうしようもないぐらいバカでドMだったな。だって葉姉に自分の首を噛ませてそれで喜んでたやつだもん。それで母さんの首を噛んでる葉姉も葉姉だけどさ……
「お名前は?」
「……イリス」
音姉の時同様、人見知りキャラで行くか。
「イリスちゃんね。よろしくね」
相変わらず凄いな。ほとんど聞こえてないはずなのに口の開き方だけで分かるんだもんな。
「すいません。こんな無口で。いつもはもっと話すんですが……」
「いいのよ。ほら上がって行って」
「きゃっ!?」
バタンッ!
お前やっぱり転ぶんだな。俺は今日はまだ転んでないぞ。なぜなら将吾に抱っこされてるからだ!
「ふふっ、アリサちゃんは相変わらずね」
「そうですね」
「イリスちゃん、何か飲む?」
「あっ、イリスには暖かい飲み物をお願い出来ますか?」
俺は久しぶりにコーラとかメロンソーダが飲みたい。でも飲んだら火傷するって将吾がうるさいから飲めない。
そういえばあの黒くて喋る犬? が見えないな。死んだのか? まあ俺が小さい頃に葉姉が拾ってきた犬だったしもう生きてるわけないか。名前はミトコンだったな。正式名称ミトコンドリア。この名前だけは忘れられないな。
「はい、イリスちゃん。ホットココアよ」
「ありがとう……」
「イリスちゃん? 具合でも悪いの?」
ちょっと変態に見られてると気分が悪く……
「少し横になる?」
「そういえば距離が近かったから酔い止め飲ませてなかった」
「おい」
通りで吐きそうなわけだ……俺も久しぶりに車乗ったからすっかり忘れてた……あと何故かお腹痛い。
「ちょっとトイレ……」
「ついていこうか? ……っというかイリスはトイレなんかしないじゃん」
いやどこの時代のアイドルだよ。普通にするわ。じゃなかったら尿検査の時とか小鳥に怒られてた時とかどうしてたんだよ。一応言っとくけどパンツの中に水風船入れてないからな。
「ちょっと白い液体とカレー出してくる……」
「イリス、言い方に気をつけろ。女の子だろ?」
女の子でもカレーは出るし口から白い液体出るもん! そろそろマジでトイレ行こ……
「ついて行くよ」
アリサが来ても変わらねーよ。
30分後……
「イリス大丈夫?」
「うん……」
アリサがまさかここまで頼れる存在だったとは……母親って凄いな。詳細は言ってもエグいだけだから言わないけど。
「ママ、ありがと……」
「いいのよ。私が酔い止め飲ませなかったのが悪いんだから」
あっ、そうだったな。全部お前が原因だったな。
「イリス、琴愛さんに許可を貰ったから琴道の部屋に行くぞ」
俺は将吾に抱っこされて2階にある部屋に移動した。
母さん、俺の部屋まだあったのかよ。葉姉の部屋もまだあるし……
「まさかそのまま残ってるなんて意外だな」
「そうね」
懐かしいな。俺の勉強机やベッド……の下にある本。
「……これは?」
アルバムか。懐かしいな…………ん? アリサが写ってるやつ全部転んでるんだが……
「ママ……」
「な、なに! そんな憐れみの目で見ないでよ!」
しれっと将吾もアリサに同じ視線を向けていたんだけど……
「さて、使えそうな物を探すか!」
「そうだね!」
「無視しないで!」
さて、確かこの辺にまとめて置いてたような気がする。
「イリスよくそこにあるってわかったな」
……詰んだ。いやでも諦めるのはまだ早い!
「テキトーに開けてみただけだけど、ここにあるの?」
「ああ。低いところに置いてないと落とした時に壊れやすいから低いところに置いておく習性があったからな」
習性って……俺は人間じゃないのかよ。
「これ……」
ヤバい懐かしすぎる! 俺が天文部に入った時に贅沢して買った高級な方位磁針じゃねーか!
「興味津々ね。琴道みたい」
まさかアリサにまで言われるとは……ヤバい将吾が疑い始めてる。
「これ使えるの?」
「寝袋か……それは買い直した方が良さそうだな」
うん、知ってる。お前が疑うからわざと言ったんだよ。
……あれ? カメラがない。どこにやったんだ?
「パパ、カメラは?」
「ん? カメラならウチに……なんでカメラがあると知ってるんだ?」
ちょっ!? ヤバい! 小鳥様助けて!
「イリス?」
小鳥様はカラオケだった! アイツ使えね!
「お星さま撮るなら必要なんじゃないの?」
「そうだな。なら当然か」
お星さまが効いたようだな。
「よし、使えるものはこんなものか。ついでにお義母さんにも会いに行くか」
まあ、ネオン(跡地)の近くでここから近いもんな。
「そうね。私の部屋にも何かあるかもしれないわね」