第86話 イリスちゃんの面接確定演出
文化祭が終わり、数日後……
「イリス、頑張ってね」
「うん! いってきます!」
俺はアリサに見送られて高校に向かった。高校は駅の近くにある。
「久しぶりかな? 校舎もかなり綺麗になってるなぁ」
俺は母校の校舎を眺め、面接会場の待機教室に入る。中には何人か生徒がいた。
俺は席に座り、志望理由書を読み返す。
30分後……
「114511番、114512番、114513番こちらに来てください」
次は俺の番かよ……めっちゃ緊張する! 誰か助けて! そうだ。こういう時は下らないことを考えるんだ! 俺の番号はホモガキだ。ホモガキだ。……なんか寒気が。
「114514番、イイヨコイヨの番号の人はこちらに着てください」
「はい」
ナイス教師。この場面でふざけるのはどうかと思うが、緊張がほぐれた。
俺は席を立ち、案内された場所に座る。
「次114514番」
俺はノックを3回して「どうぞ」という返事を待ち、扉を開けて失礼しますと言い、扉を閉めて椅子の左横に立つ。試験官は二人のようだ。1人は高校の時の担任だ。めっちゃ驚いた顔してやがる。
「では名前と受験番号を言ってください」
「はい、114514番 白石 イリスです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。では座ってください」
俺は荷物を置いて、席に座る。座ると足が浮いた。まあ、いつものことだ。
「では志望理由をお願いします」
「はい、私は小さい頃から……」
俺は小鳥と練習した時と同じように志望理由を答えた。
小鳥との面接練習はマジで辛かった。でもそのおかげで俺は答えられる。マジ感謝。
「ありがとうございます。中学校で最も努力したことはなんですか?」
「はい、私は去年は足が不自由になってしまい、殆どが病院で過ごしていました。その時の足のリハビリテーションを毎日欠かさず、先生に注意されるまでやり続けたことです」
これはアドバンテージであり、同時にディスアドバンテージでもあるのは知っている。
「どうして足が不自由になったのですか?」
よし、釣れた。これで時間を稼げる。
「はい、医者が仰っていた話だと先天性型のフラッシュバックが原因だと聞きました」
「フラッシュバックというと具体的にどうしてそうなったのですか?」
「はい、私は刃物を見ると身体が震えて、脳に異常をきたすようです」
「刃物を見るということは家庭科の授業は受けなかったのですか?」
がっつき過ぎじゃありませんか? なんで家庭科の授業を出してくるんですかね?
「はい、家庭科の調理実習や刃物が載っている教科書を見ることは出来ませんでしたが、代わりに裁縫の授業では他の生徒たちに遅れを取らないよう必死に取り組みました」
「では今日はどのようにして本校に来ましたか?」
これは余裕だな。何度も小鳥とやった内容だ。
「はい、家から徒歩で30分掛けてきました」
「では両親について教えて貰えますか?」
キツイ! 将吾はともかくアリサはキツイ!
「はい、父の職業は医者で、多くの患者さんを救っているところが大変魅力的で、私は父の判断力の高さ、指揮力をとても尊敬しています。
母は高校時代に貴学の天文部に入部しており、私は将来は天文学者になりたいと思うきっかけを作ってくれた人です」
よし、なんとか言えた……
「両親のお名前は?」
「はい、白石将吾と白石アリサです」
「うっ……」
それから10秒間沈黙が続いた。
「……失礼しました。質問は以上になります。ありがとうございました」
なんでここで終わらせる!? 俺落ちたの!? アリサのせいで落ちたの!?
「ありがとうございました」
俺はやむ無く席を立ち、扉前に移動して、失礼しました。と言って扉を開けて面接会場を出た。そして家に帰った。
「おかえり……イリス!?」
鏡を見ると俺は凄い酷い顔で泣いていた。
「大丈夫よ。イリスが落ちるわけないわよ。何があったの?」
アリサが俺を抱きしめると後ろから将吾と小鳥がやってきた。
「両親の名前を教えてって言われたの」
「「(あっ……(察し))」」
「大丈夫よ。私と将吾の名前を言っただけなんだから」
「「(これ以上ほざくな元凶が!)」」
すると小鳥が後ろからアリサを追い払い俺を抱きしめた。
「大丈夫よ。私が居るんだから。私に掛かれば不合格の1つや2つ合格に変えられるんだから!」
「ううっ……」
それから泣き止むまで小鳥が抱きしめてくれた。
将吾が「ウチの仲間が色々とやらかしてしまってすいません」と学校に対して謝罪をするのは入学後のお話。
そして泣き止んだ俺は疲れて眠ってしまった。
「イリスちゃん寝ちゃったね」
「そうだな」
「これで合格通知が届いて書類を出せば晴れて修学旅行ね」
「お前校長を脅すのかよ……」
「推薦試験なんてどこも権力ばっかよ」
「お前……」




