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良薬口に苦し

作者: 417NotFound

昔昔あるところに

とても優秀で心優しく美しい王子と傲慢な婚約者がいました


王子は優秀なので政略結婚の重要性を理解していました

婚約者がどんなに傲慢でも諌めようと努力しました


ですが庶子として引き取られた婚約者の妹と出会ってしまいました

美しく心優しく優秀なその妹に惹かれずにはいられませんでした



それに気付いた婚約者は烈火の如く怒り狂い

妹をイジめました、時に罵り時に暴力をふるい


そして暗殺者をさしむけて


それに気付いた王子の手により未遂に終わり

婚約者は断罪されました



殺人は重罪です

たとえ高位貴族であろうとも未遂であろうとも

裁かなくてはなりません


王子は幽閉しようとしましたが

妹に惹かれた者達が許しません


悪女だ魔女だ処刑だ火炙りだ

多数の声に押され


婚約者は公開処刑となりました

その婚約者の最後の言葉は

私はまだ死にたくない、でした



婚約者が処刑された後

王子と妹は結婚しました

婚約者の家の子であれば良かったのです

あの婚約者である必要は無かったのです


美しく心優しく優秀な妹は王太子妃として王子と国を支えました



めでたしめでたし





























幸福は麻薬なの

一度知ると手放せなくなる

どんな手を使ってでも欲しくなる

何を犠牲にしてでも

他から奪い取ってでも


でも何かを犠牲にした事も

他から奪い取ったことも

気付かないで幸福に浸って

その幸福が当たり前になって、普通になって


もっと、もっと、もっと、もっともっともっと


今以上の幸福を求めて

何かを犠牲にして

他から奪い取って

また当たり前になって、普通になって


求めて、求めて、求めて、求めて求めて求めて


尽きることなく今以上の幸福を求めて

最後にそれ以上の幸せがなくなった時に

何処からも何からも奪い取れなくなった時に


不満になって幸福の上に胡座をかいて不幸だと嘆く

幸せになりたい自分は不幸だ幸せが何も無いって


だから貴方に不幸をあげる

絶望をあげる

幸福を奪い取って


貴方は取り返した幸福で幸せだって思えるでしょう


貴方の幸せが私の幸せ

私を犠牲にして貴方の幸せを奪い取る

他から奪い取る


貴方には私以外から奪い取らせない

私は貴方以外に奪い取らせない


貴方を妬ませない

貴方に敵意は向けさせない

私が全ての悪意を受け止める


貴方が幸福であるために

あなたが朽ちるその瞬間まで奪い奪われ与えたい

幸せな人生だったと最期を迎えられるように

貴方の死に顔を幸福に染めるために


私は貴方の後に死にたい


貴方の幸福が私の幸福だから



愛してる


誰よりも


何よりも


私よりも


国よりも


父よりも


母よりも



貴方のその美しい笑顔が


貴方のその優しい声が


貴方のその私をおもい歪んだ表情が


私に幸せをくれた


初めて愛されていると思えた


貴方を幸福にしたい


私が幸福を与えたい


誰よりも幸福であって欲しい


愛してる



私に救いをくれた人


私の愛しい唯一の人



良薬は苦いのよ


麻薬に溺れ過ぎないように


適度な良薬と麻薬を与えたい




愛しい可愛い私の妹


私が死んだ後に誰が貴方に薬を与えるの


麻薬だけを与えられたらどうするの


苦い薬だけじゃ耐えられないでしょう


ねえ私は死にたくない


あなたを置いて死にたくない



ねえ知っていて


私が貴方を愛してるって


誰よりも私が


貴方を愛してるって




――元婚約者の灰になった手紙より


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― 新着の感想 ―
[良い点] この小説を知れて良かった。 こういう“裏”の話、私の大好物です。 描かれていない部分まで想像が浮かぶ、良い意味での少ない説明に痺れました。
[良い点] 後半の内容にぞくってきました。 姉の異常な愛がよく伝わってくるいい文章だと思います。 [一言] 面白かったです! 姉がああなってしまった経緯とかいろいろ想像してたら数分で読めちゃう文章な…
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