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私の頼れるゴリマッチョ01

筋肉がいちゃいちゃしている小説が書きたかったので書きます。

 日本で新感覚VRMMOゲームが発売された。

 タイトルは「ばーちゃる・げーむ」という、開発者そのタイトルで本当に大丈夫か?!と心配になるぐらいのおふざけ感満載のタイトルであった。

 こんなタイトルではあるが、内容はいたって真面目。よくある設定である、魔法のある中世ファンタジーの世界で、「天球」という大陸の、ロストライン都市からスタート。勇者や戦士、魔術師やサモナーなど正当ジョブとなり魔王や魔物を討伐する事も、農家や鍛冶屋など生産ジョブになり陰から支える事も、悪党ジョブとなりダークサイドに落ちていくこともできる。

 感覚もあり、もう一つのリアル世界ではないか?ともいわれるほどのものだった。__痛覚は設定で感じにくくすることもできるが____

 とはいえここまでは他のVRMMOとほぼ似たり寄ったりの内容だが、唯一他と違う部分があった。


『婚姻制度』

 リアル年齢18歳以上のもので、ばーちゃる・げーむ内でお互いに同意し、婚約、結婚したものはリアルでも適応される。また、離婚も可能。

未成年の場合は保護者の同意が必要。


 最初は正直目を疑った。確かにゲーム内恋愛ってあるし、結婚することも可能なゲームもあったけど、リアルにまで反映されるの?顔も変わっているのに?...と。当初はネットで散々叩かれていたものだ。

 私も最初は批判側だった。まぁ現実世界で婚姻しているわけでも、彼氏がいたわけでもないんだけど、ゲームはゲーム、現実は現実じゃないの?って思っていた。


だけど今では______




「みゆちゃん!グレイトウルフの肉とってきたよ~~!」



_____ばーちゃる・げーむ、本当にありがとう!


現実では独身貴族街道を走るためにクラウチングスタートの構えをしていた私、斎藤美幸(26)_ゲーム内ネームはみゆ_にも婚約者ができました!

ありがとう!VRMMO!ありがとう!ばーちゃる・げーむ!!_______




「ありがとう、仕事が早いね」

「それだけが俺の取り柄だから…」


 さて、顔を赤くしながら頭をかいているこのゴリラ…婚約者の方を紹介しようと思う。

 名前は(みなと)さんと言う。年齢は私の2つ下の24歳。男性だ。

 ゲーム内でのジョブは格闘家。現実世界でも柔道の黒帯を持っているらしく__正直武道に詳しくないので、どれぐらい強いのかは分からないけど__魔王相手でも自分の力が通用するのか試したかったのでこのゲームをプレイしたそうだ。理由が筋肉でできている。

 

 見た目は決してイケメンではない。イケメンにも設定できるのに、顔も体もリアルに寄せて作ったらしい。髪の毛はつんつんとした銀髪で__いずれ老化して白髪になるから、と理解できない事を言っていた__肌は健康的な小麦色だ。

 

 しかし見た目で注目したいのはその肉体美だ。180cmの高身長、赤ちゃんのようなすべすべした肌、美しい逆三角形の上半身、太もものような太い首とその筋肉、ぽっこり上腕二頭筋、きちんと美しく6つ割れた腹筋、私よりある胸筋、小ぶりでキュートなお尻、競輪選手のような足……とにかく素晴らしいゴリマッチョである。私が筋肉採点者の職についているなら、ぶっちぎりで100点を与えたいぐらい素晴らしい。語彙力がない自分を恨みたくなるほどの、美しさである。

 

 仕方ないことではあるがゲーム内ではゴリマッチョより細身イケメンが多かった。ゲーム内でもしっかり筋力を鍛えればマッチョになれるが、細身イケメンって目の保養になるし、何より細身剣士のモーションがとても美しくかっこいい為___明らかに開発者のやる気を感じる___かはわからないけど、まぁマッチョ人口は多くない。

 ウケ狙いでマッチョに設定している人は見たが、あまりウケが取れず結局イケメンに戻ってしまう事も多々あった。あれはあまりいい筋肉ではなかった。まるで筋肉の服を着ているようで、筋肉評論家の私は悲しくなった。


__話は変わるが、彼は性格も良い。

 見た目は荒々しさを感じさせる男だが中身は純真無垢。

 男子校出身で、さらにはその立派な筋肉と長身、厳つい顔のせいで女性に怖がられることが多いそうで、あまり女慣れしていない。いつも周りの友達にからかわれると言っていた。

 ゲーム内で付き合って初めて貰ったプレゼントが「赤い一輪のバラの花」__花言葉は、あなたを愛しています__だと言えば、誰もがその可愛らしさにニッコリしてしまうだろう。


 こんなに素晴らしい彼氏ができるとは、ゲームプレイ当初の私は思っていなかっただろう。


「みゆちゃん?」

「あ、ごめんね。考え事してて」


 玄関でグレイトウルフの肉を受け取り、キッチンへと向かう。

 この家もせっかく婚姻するんだし、と二人でお金を貯めて建てたマイホームだ。平屋建てではあるが4LDKの庭付き、3口コンロでカウンターキッチン、お風呂は彼が足を伸ばして入ることができる。現実の私よりいい家に住んでいる。

 もちろん中世風のゲームの為、ガスコンロではなく火硝石という石に魔力を込めて使う。冷蔵庫も氷魔石に定期的に魔力を込める必要がある。電気はないので多少不便ではあるが、楽しんで生活している。


「今日はハンバーグにしようか、ひき肉にしてもらってもいい?」


 彼の顔にぱあっと笑顔が咲く。夏の太陽に照らされたひまわりのような男だ。

 笑顔で頷き、鼻歌交じりで肉をミンチにしてゆく。お店で売られているようなミンチ肉も魔法で作ることはできるが、個人的に塊が残っている方が面白くて好きだ。あとは包丁で砕くたびに動く上腕二頭筋が美しいので見ていたいのもある。

 湊さんが砕いている間に私はハンバーグに混ぜる玉ねぎや調味料、付け合わせの人参やカボチャ、トウモロコシなどを用意する。焼きたてのパンはもう用意済みだ。


「ミンチできたよ!」


 私が玉ねぎを炒めている間にミンチ肉が完成したらしい。褒められたい大型犬のようで、激しく振られるしっぽが見えてしまう。余りにも可愛すぎて頭__は、届かなかった__ではなく胸筋を撫でてしまった。

 困惑し若干にやけつつ顔を赤くする湊さんに感謝の言葉を伝え、ミンチ肉を受け取る。


 玉ねぎが飴色になったところで、フライパンから下ろし氷魔法で冷やす。そして砕いてもらったミンチ肉に混ぜ、調味料を入れていく。

 細かい部分とゴロゴロしている部分が程よくあり、捏ねる感覚も面白い。

 程よく纏まりになったところで8つほどの塊にし、よく見るハンバーグの形に成型していく。

 目の前にはニコニコ上機嫌の筋肉がいる。何度も見ているはずだが、筋肉はハンバーグがとても好きらしく、いつも笑顔で目の前で見てくれている。


「食器の用意とかお願いしていい?」

「いいよ!」


いそいそと筋肉が動き出す。動くたびに床がギシ、ギシと小気味いい音を立てる。筋肉からはミチ、ミチという幻聴が聞こえてくる。

 そんな様子を見ながら、温めたフライパンに6つのハンバーグを乗せていく。肉の焼けるいい香りと、じゅうじゅうという空腹を促進させる音を立てる。そのたびに目の前の筋肉がピクピクと動く。

 焼いている間に付け合わせのグラッセと、ゆで野菜を作る。リアルでは人参をあまり食べていなかったので、めったに作ったことはなかったが、こちらの世界の最高品質の人参はとにかく甘い。ゆで野菜をおやつとして食べれる。ジュースも飲んだが、農家の方ありがとう。と、思わず感謝を捧げてしまった。


「美味しそう…」


 生唾を飲み込む音が聞こえる。それもそのはず、ハンバーグはとても美味しそうな焼き色がついているからだ。

 まずはメインをお皿に盛り付けていく。私は1つ、彼は5つだ。残り2つは明日朝用にする。

 ハンバーグがなくなったフライパンにソースの為の調味料を混ぜ、完成したソースをハンバーグにかける。その横ににんじんのグラッセやゆで野菜を添え、完成だ。


「やった~!ハンバーグだ!」


 大喜びでお皿を机の上に置いていく。我ながらうまく作れた気がする。


「じゃあ、いただきます」

「いただきます!」


 勢いよくハンバーグを食べる湊さん。決して下品な食べ方ではないが、一口がでかい。たった1つのハンバーグなど瞬きしているうちに消えてゆく。しかも頬を赤らめ、満面の笑みで___まるでプロのハンバーグを食べたときのような笑顔で___幸せそうに食べている。時折嬉しそうに動く胸筋がチャームポイントだ。

 

「美味しい?」

「とっても!」


 さも当然のように頷く。本当に料理し甲斐がある人だなぁ、と思いつつ、パンを食べる。勿論、パンも手作りだ。


 ___本当に幸せだなぁ


 現実ではありえなかった幸せを掴むことができて、私は本当に幸せ者だと思う。

 私の狭い世界の中では、きっと湊さんは関わることがなかっただろう。これも、ゲームがあったからこその出会いだと思う。純粋にゲームも楽しい為、決して出会い系として使ったわけではないが…


 ハンバーグを半分ほど食べ終わると、湊さんの食事が終わった。そんなに早食いでよく太らないなぁと感心しつつ、満腹で少し眠くなっている彼を見る。


「ごちそうさまでした。今日もとっても美味しかった!」

「ありがとう、嬉しい」


 うとうとしつつも、食べるのが遅い私が食べ終わるまではいつも食卓にいてくれる。そういう細かな気遣いもまた湊さんの良いところだと思う。


「そういえば今日のグレイトウルフ、仕留める前に吠えさせちゃって、どんどん集まってきてさ…」


 いつも通り、今日あった面白い事などを話してくれる。私は一応後衛魔法職ではあるが、最近はもっぱら生産職をしているので、なんだか戦っていた時の気分を思い出すこういう話を聞くのも好きだ。

 

「…それで一斉に締め技を使って何とか皆で切り抜けたんだよ!」

「よく頑張ったね、なんで一斉に締め技を使ったのかよくわからないけど」

「面白いから?かな?」


 彼が笑うたびに机が揺れる。楽しそうなのでつられて私も笑う。

 


__本当に幸せだ…


 幸せさとハンバーグを噛みしめながら、彼との会話を楽しんだ。


 


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