1 覚醒、山道
暗闇の中で意識が少し覚醒した。
土の匂い、足元には光苔がある。
見回すと前後は土壁で、左右は通路のように土壁が延びていた。
洞窟内にいるようだ。?
何故?
後ろを振り返ると洞窟の先は暗闇が続いていた。
前方へ向き直り洞窟の先へ目を凝らすと、灯りが漏れているのか、洞窟が左へ曲がっているのがわかった。
灯りが漏れる方へ一歩づつ歩み始めた。
暗い洞窟のためなのか一歩づつが慎重に探るようであった。
曲がりにさしかかると一旦歩みを止めた。
やはり左側から光が漏れていた。
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初夏の山道を二人が登っていた。
二人は共に大きな背負袋を担いでいる。
また釣竿を入れるような太めな革袋を二つ両肩に担いでいる。
二人は一足を踏みしめるように歩んでいた。
担いだ荷物が重いためかもしれない、それがそのような歩みになっていたのかもしれない。
山道は木々により朝日から二人を遮り、少し肌寒い。
そのおかげなのか? 二人は汗もかかず、表情もおだやかである。
二人の服装は山登りとしてはどうなのか、着物、袴、足袋、ワラジである。
しかしその姿で二人は黙々と山道を登っているのだ。