死神
よろしくおねがいします!!
毎日の平凡な日々が私にとって一番の幸せだ。家族と暮らして、友達と話して、恋をして。
そんな生活が当たり前に続いていくものだと私は思っていた。でも、人生とは時に残酷なものだ。
なぜなら私はもう、死んでしまうのだから。
「娘さんの病気ですが、残念ながら、今の医学では直すことができません。余命はあと、1年といったところでしょう。」
担当医が悔しそうに私にそう告げた。
もともと体が弱かった私はそうなることは分かっていた。分かっていたけれど、あふれ出すこの涙がまだ生きていたいと叫んでいた。
高校2年生の夏、いつもより体が重いと感じていたが、テスト真っ最中で少し寝不足だったのもあり、疲れが出たのかな?と特に気にすることなく学校へ行った。しかしだんだん動くこともしんどくなり、やっとのことで学校に着いたのだが、下駄箱で倒れてしまった。意識がだんだんなくなっていって、まるで死の狭間におとされたような思いだった。思えばこのときから、私の運命は決まっていたんじゃないかと思う。
目が覚めて最初に見たのは、泣いてぐちゃぐちゃになったお母さんの顔だった。口をパクパクさせて何か言いたいことがあるようだったが言葉にならないと言った様子で私を抱きしめた。強すぎず弱すぎない、やさしい抱きしめ方だった。いつもつけている香水のにおいがせず、お母さん本来のにおいがしてそれがとてもいいにおいだったのが忘れられない。
私を一番に大切にしてくれるのはお母さんだ。お父さんはいない。他に好きな人ができて、その人の間に子供ができたため、私とお母さんを残して出て行ってしまった。だから、私のことなんか見てはいない。だから、お母さんは私にとって、とても大切な存在なのだ。私のせいで迷惑を掛けたくない。私のために泣いて欲しくない。このとき胸が張り裂けそうだったのは、きっとこんなことを考えていたからだろう。
しばらくして私は原因不明の病だと分かり、余命が宣告されたときには死への恐怖よりもまたお母さんを苦しませてしまうという悲しみのほうが強かった。だから生きていたいと思ったんだ。
でもやっぱり、神様は優しくなかった。死ぬことが決まっている人間にしか見えないものが見えるようになったのはこのときからだ。
彼らは獲物でも見るかのような目つきで私を見下ろしていた。
その中の一人があざ笑いながら私に言った。
「こんにちは。死神です。君のことを殺しに来ました。」
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