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詩&短編集

過去の記憶

作者: 木下 碧

久しぶりの投稿です。

 『一緒に行こう?』


 そう言って私を何時も引っ張っていってくれた貴方はどんな顔だっただろうか?



 思い出す事さえ叶わないあの頃の淡い記憶。


 それらは絶対に忘れてはいけなかったはずなのに、気付くとスルリと手の平から零れ落ちてしまっていた。

 忘れたら後悔すると分かっていたのに、私は『過去』を手放した。

 最早貴方と何をして遊んだかさえも、あやふやでよく覚えていない。




 ああ、貴方にもう一度会えるなら。

 幾度そう願っても、一度手放した過去はこの手に戻ってくる事はない。




 そんな私と貴方を繋ぐものはたった一つの約束。


 でもその約束さえも、危うく不確かなものでしかない。

 もともと子供の頃にありがちな、その場だけの口約束なのだから貴方はもう忘れているかもしれないけど。



 …いやもしかしたらその約束でさえも、私が勝手に作り上げたものなのかもしれない。

 また会いにいける行ける口実が欲しくて、何とか私と貴方を繋ぎとめておけるものが欲しくて私が生み出した『偽りごと』に過ぎないのかも。


 それでもそんな『偽りごと』に縋ってまで、貴方を思う私は傍から見れば滑稽なのだろうか?







 俯けていた顔を上げると、さっきまで降っていた雨は止み、青く澄んだ空が広がっていた。


 ふと貴方と出会ったのも、離れ離れになった時も、こんな雨上がりの空だったと思い出す。

 歩き始めると、コンクリートの上に広がった雨水に太陽の光がキラキラと反射しているのが『あの頃』と重なって思わず空に向かって呟いた。


 「会いたいよ…」


 そう小さく囁いた貴方への言葉は、届くことなく青い空の彼方へと吸い込まれていった。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 青い空が希望ではなく喪失感やかつての憧憬そのものを連想させるものとして出てくるラストが余韻深いです。 [気になる点] >最早、貴方の顔どころか、声も、仕草も、匂いも、名前でさえもボンヤリと…
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