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ニキビ  作者: 春野天使
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第4話 妹の誘い

「はい、ホンキ!」

 涼は携帯カメラのボタンを押す。授業が終わった後も、机をくっつけ肩を並べて教科書

に目を落としていた拓人と舞は、同時に顔をあげた。

「なんだそれ?」

「あれ?知らねぇの?今は『はい、チーズ!』でも『1たす1は!』でもなくて、『はい、

ホンキ!』っていうんだぜ。その方が良い笑顔になるんだってさ。じゃもう一枚」

 拓人と舞が携帯に注目しているすきに、涼はもう一度カメラのボタンを押す。

「OK!」

 涼は素早く携帯を操作する。

「何やってんだよ」

「送信完了!今、沙織ちゃんに写メール送ったとこ」

「何の?」

「お前と舞ちゃんに決まってんだろ。すげー良い雰囲気。お似合いだからつき合っちゃえ

よ」

 涼は屈託なく笑う。

「いきなり馴れ馴れしいんだよ、お前は。佐藤さんとは今日知り合ったばかりなのに」

「……あっ良いです」

 舞は少し照れて微笑む。

「名字より名前で呼ばれた方が親しみがあって。私まだこの学校のこと何も知らないし、

知り合いもいないから……」

「じゃ、まずは友達からってことで!舞ちゃん彼氏いるの?」

「いません……」

「ラッキー、俺に彼女がいなかったら立候補したいとこだけど、今回は拓人に譲ってやる

よ」

「……」

 涼の奴余計なことを……拓人は明るく笑う涼を睨む。彼女は作らないと決めたばかりな

んだからな。しかし、拓人は舞のことが気になっていた。舞のことというより、舞の四つ

のニキビのことが……もし、舞とつき合ってみたらどうなるのだろうか?


「ね、いい雰囲気だろ?」

 学校から帰って来た沙織の携帯電話に、さっそく涼から電話が入ってきた。沙織はもう

拓人と舞のツーショットを確認済みだ。

「うん、良い感じ!舞さんって言うの?美人で落ち着いた感じの人ね」

「そう、そう。言葉使いも丁寧だし、お金持ちのお嬢様って感じ。何て言うか、ぽわんと

した感じが拓人に合ってると思う」

 時々ぼーっとして何考えているか分からない拓人のことを思いだし、沙織はクスクスと

笑う。

「兄貴にはおっとりタイプが良かもね。ほのぼのしてていいわ」

「だろ?会った瞬間から良い感じだったんだよ。運命の出逢いってやつ?」

「失恋の後の運命的な出逢いね!なんかスゴイ、ドラマチック」

 沙織が涼と笑い合ってると、部屋のドアが開いて拓人が入って来た。

「ただいま」

「あ、噂をすれば……兄貴が帰って来た」

 沙織は拓人と目を合わせニヤリと笑う。

「あ、うんうん、分かった」

 沙織は携帯電話を持ったまま、部屋を出ていった。

「……」

 なんだあいつ……涼が送った写メールのことで話てんだな。拓人が考えていると、沙織

がまたすぐに戻って来た。

「拓人お兄ちゃん」

「……何だよ」

 甘えた声で『拓人お兄ちゃん』何て呼ぶ時は、何か魂胆があるんだよな……拓人は警戒

した目で沙織を見る。

「今度の土曜日あいてる?」

「……予定なんか入ってるわけないだろ。俺はいつも暇なんだから」

「良かった!一緒にケーキ食べに行こうよ。新しく出来たカフェすごくケーキが美味しい

んだって」

「涼と行けばいいじゃないか。俺、ケーキ苦手だし」

「だから、涼ちゃん予定入ってて行けないんだよ。たまには兄妹で行ってもいいじゃない。

ね、お願い!」

 沙織は両手を合わせ、円らな瞳をうるうるさせて拓人を見つめる。頼み事をする時は、

可愛い妹の姿を最大限アピールする沙織。妹に甘い兄を充分心得ているのだ。拓人はいつ

も沙織の頼み事を断れない。

「……しょうがないなぁ」

「やったぁ!そのお店コーヒーも美味しいらしいから」

 俺はコーヒーだけ飲んどけってことか……拓人は軽く息を吐くが、たまには沙織と出か

けるのもいいなと思う。沙織と涼がつき合うようになってからは、2人で遊びに行くとい

うことはなくなっていた。

「帰りに映画── 」

「ありがと、兄貴!」

 『帰りに映画でも観て帰ろう』という拓人の言葉を待たずに、沙織は慌ただしく部屋を出ていった。もう『お兄ちゃん』から『兄貴』に呼び方が変わっている。沙織のテンポの速さに時々ついていけない拓人だった。


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