星空の裏
〜•*¨*•.¸¸♬︎
昼間に佐和子がピアノを弾いている。
その目は何処か虚ろで悲しげで繊細だった。
流れるジャズは感情の爆発のようで、佐和子はふたり居た。
精神疾患を患ったのは中学2年生頃だった。
廊下を歩いて教室にはいる間際に聞こえてきた当時の親友の言葉が胸に突き刺さる。
「ねぇ、聞いてよ。佐和子ってさ、エンコーしてんの。オヤジとホテルに入ってくの、あたし見たもん。」
もちろん事実などではない。バージンだった佐和子は援助交際などする勇気もない。根拠の無い噂はどんどん広まり男性の先輩数名に学校の裏でレイプされてからはぼーっとした感情が常に残るようになって早10数年が経つ。
〜•*¨*•.¸¸♬︎
ふと昔読んだ小説のフレーズが思い浮かぶ。『普段は普通の人間なのにいざというときに悪人になるから人間とは怖い』太宰治の作品にはそれほど明るくない佐和子だったが、この言葉だけが突き刺さって離れない。
そんな佐和子にも友人が出来た。もちろん心から信頼仕切ってる訳ではないが、たまに家に来ては佐和子のジャズを聞いて世間話をする程度の仲だが、友人を最小限に留めている佐和子にとっては発表会のような気持ちで指先を絡ませる。
〜•*¨*•.¸¸♬︎
「佐和子、人前で演奏とかしないの?」
「人前で…?考えた事もなかったなぁ。」
「才能あるんだから生かしなよ。」
友人が珈琲を啜る。生まれて初めて認められた気がしてマッチの光が目に点るような感覚を覚えた。
「10円でもいいから、投げ銭してくれる人…いるかな?夢見すぎかな…?」
友人がふっと笑って1000円を置きながら帰り支度をする。
「わたしが初めてのお客さんよ」
またもや太宰が出てきた。『わたしは誰か1人で良いから信頼したい。あなたはその1人になってくれますか。』




