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29.セールスマンの死―風化

「これと同じものなんです。これも不良品です。交換は無しです。学校からご要望があれば、補償金は出す、と上の者が申しております。」と、その人は、藤堂に名刺を渡した。

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 物部満百合まゆり・・・物部一朗太としおりの娘。

 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。

 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。

 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。

 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。

 服部千香乃ちかの・・・服部源一郎とコウの娘。

 南原未玖みく・・・南原龍之介と文子ふみこの娘。

 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。

 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。


 大文字学・・・おさむの父。小説家。

 愛宕寛治・・・悦司の父。警視庁警部。


 藤堂所縁ゆかり・・・早乙女愛の長女。次女が12年前、轢き逃げされる。健太郎達の小学校の先生。ミラクル9顧問(監督)。

 鈴木栄太・・・小学校校長。

 天宮秀樹・・・童話好きな少年。不良として誤解されていたが、図書委員になったので友人は増えた。


 ==============================

 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 午後3時半。図書室。

 すっかり、司書気分の天宮は、扱いに困ってしまって、健太郎をスマホで呼び出した。

 この小学校では、校長の方針で、放課後はスマホ使い放題である。

「どうしたの?」駆けつけたのは、健太郎だけでなく、ミラクル9全員と藤堂先生だった。

「金魚の糞みたいだな」と思ったが、天宮は口にしなかった。

「この人がね、DVDを探している。不良品を誤って販売したから回収に回っている、って言うんだ。」

「どんなDVDでしょうか?」と、藤堂が皆を代表?して尋ねた。

『LG〇T』なんとか、って書いてあるな、と、おさむは思った。

「これと同じものなんです。これも不良品です。交換は無しです。学校からご要望があれば、補償金は出す、と上の者が申しております。」と、その人は、藤堂に名刺を渡した。

「東海道A出版?」首を傾げながら、「天宮君。探した?」と尋ねた。

「はい。DVDは、運動会や記念行事のものばかりで。本に挿入されているものでは無いそうなので。」と、タブレットの『図書システム』にも載っていないことを天宮は報告した。

「何年くらい前ですか?」「12年前です。」

「僕らは生まれていないな。」と、おさむは言った。

「校長先生に聞いてみるわ。」藤堂は校長に電話した。

 10分ほどして、鈴木校長はやって来た。

「お待たせしました。確かに、その系統の法案が出来る頃、お先走りで作った会社が全国に売りに回ったことがありました。私は、購入依頼の電話があった後、職員会議にかけて、様子を見ましょう、という結論に至って、購入しなかったんです。随分と世間が騒いだ問題です。時間が経って、市橋総理の代になってから、法案は修正され、可決しました。その修正案には、『図書を勝手に編集・販売しない』ことが盛り込まれていました。もう、すっかり忘れていました。校長仲間にDVDを観させて貰いましたが、単純に『差別はいけないよ』という内容で、教育者が口頭で済ませることが出来る程度でした。何しろ、詳細が決まらないままの見切り発車の販売でした。それでも、校長達はPTAが煩いから、と即購入した者が多かった。責任逃れですね。ウチは職員会議をして良かった。」

「内容も粗末なものでした。申し訳ありませんでした。実は、経営者が変わりまして、このDVDのことが問題になり、当社が『誠意ある会社』だと証明する為に、無料回収に回ることになりました。私の担当地域では、この小学校が最後です。重ねて、ご迷惑をおかけしました。お詫び致します。」

「いやいや、当校は損害無かったのですから。暑い中、ご苦労さまでした。お疲れ様でした。」

 そのセールスマンは、深々と何度もお辞儀して帰って行った。

 ミラクル9と天宮君には、話しておきたいんだが。」

 みどり、未玖、満百合、千香乃、悦子は、四散して走って出た。

 5分後、皆は帰ってきた。

「あの人、校門、出たよ。」悦子が報告した。

「実は、サンプルを観て、金儲け主義と思ったから、購入は辞退して職員会議には連絡しただけだった。僅か10分で5万円もして『差別はいけないよ』じゃあねえ。藤堂先生もその頃の事は知らないよね。あの『新しい性別』みたいな運動は、欧米で何度か起って、開放運動みたいな事が起って、『LG〇T差別撤廃法案』みたいなのが通って施行された国はあった。でも、『逆差別』が頻発したり悪用したりする人間が増えて、アメリカは、真っ先に反対派の法案が通って、先の法案は廃棄された。詰まり、無効になった。暗殺された阿倍野元総理に何度も、その関係の法案を提案していた議員がいた。その議員は、志田総理の代になって、ゴリ押しで『閣議決定』させた。世間の危惧は、杞憂では無くなった。お先走りで女子トイレが壊されたり、無理矢理トイレ、銭湯や温泉に乱入する男が出てきたり。銭湯は、おさむ君のお母さんのアイデイアで、DNAや戸籍が女子だけの為の『ウーマン銭湯』とかが出来たけどね。市橋総理は、事態を重く見て、修正した法律に変えた。DVDは、どさくさ紛れの商売だった。私は、それは、『ずるい商売』だと思った。私は、校長になるまで会社の経営者だった。そんなずるい商売は認めたくなかったんだ。もう、あの手の話は風化している。そもそも、LG〇T虐待被害者は存在しなかったし、法案成立はあまりも遅すぎた。」

「回収も、何か魂胆があるのかも知れないね、そんなずるい商売していたのなら。」と、おさむが言った。

 翌朝。隅田川に溺死体が浮かんだ。川に飛び込んだ後、川底の石に頭をぶつけたのだろう、と鑑識は判断した。

 まるで、宝〇歌劇団の娘役のような衣装とメイクだった。

 お名前カードから自宅を割り出し、捜査に入った捜査員が遺書を見付けた。

「私が間違っていた」」という文面だった。

 新聞を見た鈴木校長は、出版社に電話してみた。繋がらない。架空の電話番号だった。

 昨日見た、セールスマンは、女性だった。メイクが違うが、亡くなった人に似ている。

 鈴木校長は、愛宕警部に、昨日のことを報告、大文字学に電話をかけた。

 いつもよりも長電話になった。

 ―完―



このエピソードは、既に他のサイトで公開した作品ですが、よろしければ、お読み下さい。

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