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25.心の日記

「あんなに怒らなくてもいいと思うのよ。ねえ、マスター。」

みどりは、頬膨らませて言った。

「夏休みの宿題、提出かあ。俺達も夏休み終盤は、地獄だったな。副校長は担任じゃないんだろ、みどり。」


 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 物部満百合まゆり・・・物部一朗太としおりの娘。

 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。

 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。

 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。

 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。

 服部千香乃ちかの・・・服部源一郎とコウの娘。

 南原未玖みく・・・南原龍之介と文子ふみこの娘。

 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。

 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。


 藤堂所縁ゆかり・・・早乙女愛の長女。次女が12年前、敵に轢き逃げされる。健太郎達の小学校の先生。ミラクル9顧問(監督)。

 高峰舞子・・・健太郎達の小学校の教育実習生。みちるの姉くるみの娘。

 物部一朗太・・・満百合の父。モールの喫茶店アテロゴのマスター。


 鈴木栄太・・・校長。

 根岸淳・・・副校長。

 片山継男・・・一輪車大会で、悦子と争った。今は「お友達」?

 大文字学・・・おさむの父。小説家。


 ==============================

 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==


 午後2時。始業式当日。喫茶店アテロゴ。

「あんなに怒らなくてもいいと思うのよ。ねえ、マスター。」

 みどりは、頬膨らませて言った。

「夏休みの宿題、提出かあ。俺達も夏休み終盤は、地獄だったな。副校長は担任じゃないんだろ、みどり。」

「うん。育児休暇。副担任は、インフルエンザ。代理の代理。その子、谷一郎以外が皆提出したから。ずっと、黙ってるし。」

「原因、分かったよ。継男君、話して。」悦子が入って来た。連れがいた。

「こんにちは。片山継男です。」継男は自己紹介した。

「お友達から、って言って無かった?」と、悦司が尋ねたら、「大丈夫よ、変な事したら、悦司のお父さんかお母さんに逮捕して貰うから。」と、悦子は平然と言い放った。

「話って?」「みどりちゃんのクラスの谷君のお父さんね、ウチのお母さんが勤める病院で入院しているんだ。あ、ウチのお母さんは看護師さんじゃなくて、事務員なんだけど。」

「ああ。そのお父さんの入院と、谷君の宿題が関係あるんだね。病気?」と、おさむが聞いた。

「ううん。交通事故。谷君のお母さん、病弱でね。お父さんが買物に行ってたんだけど、交通事故に遭ったんだ、買物帰りに自転車乗ってて。目撃者、未だに見つからない。今頃の時間帯だから、人通り少なかったから。お母さんの話だと、谷君は、お父さんの替わりに買物したり、お父さんのお見舞いに来たり、で毎日大変らしい。2歳年下の弟の面倒も見なくちゃいけないし。」

「忙しかったんだね、谷君。で、宿題は?課題は何?」「絵日記よ。」と、みどりは健太郎に答えた。

「絵日記、書くどころじゃなかった訳だ。何で副校長に説明しなかったんだ?谷君は。」

「事故のこと説明したくなかったんだな。どうする?健太郎。」おさむは、健太郎に尋ねた。

 健太郎は、スマホを取り出し、電話をした。スピーカーをオンにした。

「先生。久保田です。監督を見込んでお願いがあるんですけど。」

「健太郎君は、世慣れているのね、で、お願いって?」

 暫く、健太郎の説明を聞いていた、担任の所縁先生は、「10分、いや、15分待って。」と、言って電話を切った。

「成程。相手は副校長、大人だからな。」と、物部は感心した。

 15分経って、所縁先生は、折り返しの電話をしてきた。

「ミラクル9。午後5時に、春田病院に集合!!」

「久保田君、僕も行っていい?」と言う継男に「勿論。皆を案内してよ。」と、健太郎は応えた。

 午後五時。春田病院。

 ミラクル9は、受付の、継男の母に黙礼をした。

 病院には、鈴木校長、根岸副校長、藤堂所縁先生、高峰舞子先生が来ていた。

 病室から、谷がロビーに出てきた。

 大勢、ロビーに集まっているので、驚いた様子だった。

「谷君、事情を知らなくて、怒鳴ったりして悪かった。いつも校長に義務感に捕らわれてはいけない、って言われているのに。夏休みの期間の事全部思い出せるのか、って言い過ぎだった。この通りだ。」副校長は、頭を下げた。

「そこで、提案だ。谷君。タブレットの使い方、一番先に覚えたって、山城君に聞いたよ。ワープロ、使いこなせるんだよね。そこで、校長から提案だ。今の気持ち、作文にしてみないか?」

「作文?読書感想文じゃないんですか?」と怪訝な顔で谷が校長に尋ねた。

「いや、作文だ。小説とかじゃない。気持ちを書くんだ。タブレットのワープロで。電子ファイルでいい。出来上がったら、学校のホームページの私のアドレスに送るといい。学校にも、プリンターはあるからね。紙の作文だと、書き直しで時間がかかる。作文の書き方は、大文字君に教わればいい。大文字君は代筆するんじゃない。誤字とか、文章の間違いをチェックする、編集者だな。特に期限は設けない。何度でも書き直せばいい。」

「舞子ねえちゃん、いい学校でしょ?」と、悦司が言うと、「知ってる、母校だもの。『やり直しミニ運動会』やった学校は、ウチが初めてだったのよ。」と舞子は応えた。

 2日後。小学校。谷のクラス。

 谷は、皆の前に、タブレットを持って教壇に立っていた。

 後方には、校長、副校長、藤堂所縁先生が立っている。

 谷は、タブレットの文面を読み始めた。

「僕の夏休み。初日、お父さんが交通事故に遭いました。轢き逃げです。犯人も目撃者も見つかっていません。僕は、それは気にしないことにしました。病院から電話がかかってきて、タクシーにのって、病院に行きました。院長先生が、『お父さんは、腰が砕けている。骨を繋ぐ手術をしたいが、家族の許可がいる。お母さんが間に合わない場合は、君が決心してくれ。』と言いました。そう言われても、と僕は困りました。幸い、母と弟が乗ったタクシーは間に合いました。手術は成功しました。でも、先生が言われた通り、一生歩けなくなりました。車椅子生活が始まりました。僕は、お父さんの替わりに、買物をし、弟の面倒も見ました。お父さんへのお見舞いも毎日行きました。ある日、お父さんは僕に尋ねました。『お父さんの腰は治らないのか?もう立てないのか?家には帰れないのか?長男のお前が頼りだ。本当の事を教えてくれ。』オジサンやオバサンは、父に本当の事を言えず、誤魔化していました。『そうだよ、お父さん。』お父さんは、病院から見える裏山をじっと見ていました。数日後、お父さんは、車椅子の乗り方が上手くなった事を自慢するようになりました。お父さんは、踏ん切りがついたんだと思いました。あっと言う間に夏休みが終りました。お父さんは、その質問をする少し前に、自力でトイレに行こうとして、車椅子から出て這ってトイレに辿り着いて力尽きたそうです。男の看護師さんに聞きました。運命は残酷です。運命は、変えられません。受け入れるしかないのです。義務教育だから、中学には行けると思います。そこから先は、中学の間に考えます。僕の夏休みは終りました。父の交通事故で沢山のことを学びました。長男としての覚悟も出来ました。そして、僕には、新しく10人の友達が出来ました。この夏休みの一日一日は忘れません。文章に書くのは先でもいい、今は『心の日記』をつけておけ、と、ある人に言われました。心の日記は、これからも続きます。僕の『今年の夏休み』は終りました。」

 拍手が起った。後方の先生方だけじゃない。廊下には、隣の生徒達がいた。

 クラスの生徒達は、泣きながら、立って拍手をした。

 午後7時。大文字家のマンション。

 学にメールが届いた。「ありがとう、大門先生。先生にも負けないくらい、ファンを作るよ。」谷一郎からだった。

 ―完―



このエピソードは、既に他のサイトで公開した作品ですが、よろしければ、お読み下さい。

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